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【弁護士費用の相手方負担】
 現在の日本の法律と実務では、自分が依頼した弁護士の弁護士費用を裁判の相手方に負担させることができるのは、「不法行為」による損害賠償の裁判で勝訴した場合だけといってよいでしょう。その場合も、弁護士費用の実額(全額)が相手方負担となるのではなく認められた(弁護士費用以外の)損害額の10%が相手方に負担させるべき弁護士費用とされるのが通常です。
 立法論としては、弁護士費用を敗訴した側に負担させようという提案が度々出て来ますが、このような提案は実は庶民に泣き寝入りを強いる大企業・事業者・金持ちに有利なものです。

《相手方負担にできるとき》
 不法行為というのは、故意または過失によって他人の権利または法律上保護される利益を侵害してそれによって損害が生じた場合をいいます。

そんな抽象的なこといわれても、何が「不法行為」になるのか、わからないな。
そうでしょうね。もう少し具体的な例を挙げてみましょう。

 現実に一般人が裁判を起こす場合で考えると、代表的なものは、交通事故や労働災害でけがをしたときに、治療費などのかかった費用、休業損害などのけがをしたおかげで本来は得られた収入が減ったという損害、慰謝料などを請求する場合でしょう。あるいは夫や妻が不倫をした場合に、その相手に対して慰謝料の請求をするのも不法行為による損害賠償請求です。
 労働事件の分野では、セクハラやパワハラを受けた場合の慰謝料などの請求も不法行為による損害賠償請求として行うことができます。この場合、使用者に労働契約上の安全配慮義務に違反するなどの「契約違反」の法律構成もできますが。解雇についても、解雇が無効で復職や解雇後の賃金の支払を求める裁判と一緒に解雇があまりにも酷いということで不法行為に当たるとして慰謝料を請求することもあります。
 消費者金融への過払い金返還請求で、取引履歴を隠して答えない業者に対しては取引履歴の隠蔽が不法行為だとして慰謝料請求が認められることもあります。
 こういった場合には、裁判で賠償を請求する損害の中に「弁護士費用」を入れておけば、相手方の行為が不法行為に当たると認められた場合は、弁護士費用以外で認められた損害額の10%が、弁護士費用のうち相手方に負担させることが相当な額として、認められるのが通常です。裁判官によっては、こんな裁判は弁護士なしでもできるとかいって認めなかったり、10%以外の比率にすることもたまにありますが。
 最近、最高裁が労働災害の事案で使用者の安全配慮義務違反による損害賠償請求について弁護士費用を損害と認めたことが、裁判業界では話題になっています。これは実質は不法行為といえるケースなので、この判決からただちに不法行為ではない契約違反での損害賠償でも弁護士費用が損害と認められる(相手方に負担させられる)ようになるとはいいにくいところですが、今後の動向には注目したいとは思います。

弁護士費用を相手方に請求できたら、裁判を起こしやすいと思うけど
そういう主張は聞こえがいいけど、現実は反対なんですね。特に庶民にとっては。

《弁護士費用の敗訴者負担》
 弁護士費用を裁判で敗訴した側に負担させるという制度は、立法提案としては何度かなされてきました。「司法制度改革」というマスコミがこぞって賞賛し後押ししたキャンペーンの中でも主張されました。そういうときには、市民に利用しやすいようにという説明がついてきます。
 裁判を起こせば自分が勝つという前提なら、理にかなった制度のように見えますね。でも、考えてみてください。裁判を起こせば必ず勝つといえる場合はどれだけあるでしょう。そして、大企業と一市民、悪徳業者と消費者、会社と労働者という関係で、大企業、悪徳業者、会社は、常に自分が有利になるような契約書を準備し、それ以外でも紛争になる前に十分な書類を整えます。紛争になって、実質的な内容を見れば大企業、悪徳業者、会社が悪いと評価できる場合でも、書類上は大企業、悪徳業者、会社の主張が認められるような記載がなされ、たくさんの証拠書類が用意されています。そういった準備がない一市民、消費者、労働者は、裁判の中で真実を主張していかなければなりませんが、たいてい最初の段階では有利な証拠はあまりありません。敗訴したら相手が依頼した弁護士の費用まで負担させられるとしたら、手元に十分な証拠書類がない一市民、消費者、労働者が、たくさんの証拠書類をもつ大企業、悪徳業者、会社に対して裁判を起こせるでしょうか。そして、大企業、悪徳業者、会社にとってはもし裁判で負けて相手方の弁護士費用を負担させられたとしてもたいした負担ではありませんが、一市民、消費者、労働者にとっては致命的な負担となりかねません。裁判の前に大企業、悪徳業者、会社からそのことを告げられた一市民、消費者、労働者は、民事裁判を起こせば最終的には勝てるケースでも、不安が大きくて泣き寝入りをすることになるのではないでしょうか。さらには、それは一市民、消費者、労働者が裁判を起こそうと思った場合だけでなく、大企業、悪徳業者、会社が不当な請求をしている場合でも同じです。この請求に応じなければ裁判を起こす、そうしたら請求額全額に加えて弁護士費用も払わせるぞといわれたら、不当な請求だと思っても泣く泣く払わざるを得なくなるのではないでしょうか。
 弁護士費用を敗訴した側が負担するのが合理的だといいたがる人たちは、実際には庶民や消費者、労働者の味方では決してありません。

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