庶民の弁護士 伊東良徳のサイト

  ◆弁護士の仕事

 東京にはなぜ3つ弁護士会があるのですか

ここがポイント
 東弁、一弁、二弁は、法的資格も業務領域も活動地域もまったく違いがない
 人数が多くなった東京弁護士会が戦前に派閥対立で分裂した
 現在では所属している弁護士の傾向もたいして差はない

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 弁護士の仕事の説明としては、ちょっと脇道にそれますが、よく聞かれる質問ですので、説明しておきます。

  弁護士会は強制加入で地方裁判所ごとに1つが原則

 弁護士は、全員、弁護士会に登録しなければならないことになっています。弁護士の事務所は1つと決まっていて(1人の弁護士が複数の事務所を持つことは禁止されています)、それは登録した弁護士会の管轄区域内に設けなければなりません。結局、弁護士は事務所を開く場所の弁護士会に登録しなければならないというわけです。
 その弁護士会は、地方裁判所の管轄区域ごとに設立しなければならないとされています。弁護士会は都道府県別にいうと北海道に4つ、東京に3つ、それ以外の府県には1つずつあります。北海道に4つあるのは、北海道は広いので、地方裁判所が、札幌地裁、旭川地裁、釧路地裁、函館地裁と4つあり、それに応じて札幌弁護士会、旭川弁護士会、釧路弁護士会、函館弁護士会があるからです。これは地方裁判所があるからですし、地域ごとに分かれていますので、まだわかりやすいですね。
 東京には地方裁判所は東京地裁1つしかありません。しかし、東京には東京弁護士会(略称東弁)、第一東京弁護士会(略称一弁)、第二東京弁護士会(略称二弁)の3つの弁護士会があります。区域ごとに分かれているわけではありませんし、資格や業務の領域が分かれているわけでもありません。法的な意味での違いは全くない弁護士会が3つ併存しているわけです。

  東京に3つの弁護士会ができたいきさつ

 東京に3つ弁護士会ができたいきさつは、戦前から今も続く弁護士の東京一局集中が影響しています。東京には全国の弁護士の半数近くが集中しています。戦前、東京弁護士会の会員が非常に多くなり、会長選挙をめぐって対立が深くなりました。対立の理由なり真相なりは、弁護士会でいろいろに語られていますが、戦前の話でもあり、私が直接知っていることでもありませんから、おいておきましょう。少数派が、多数派とは一緒にやっていられないということで、国会議員に働きかけて当時の弁護士法の地方裁判所ごとに1つという規定を改正して、300人の弁護士がいる場合には複数の弁護士会を作れるようにして、新たな弁護士会を作りました。これが第一東京弁護士会です。この名前は、第一東京弁護士会の人々が自ら決めました。東京弁護士会から第一東京弁護士会が独立した後、さらにその2つの弁護士会の対立を仲裁するという主張をする人々がさらに東京弁護士会から独立して新たな弁護士会を作りました。これが第二東京弁護士会です。このとき第二東京弁護士会の人々は別の名前にしたかったのですが、すでに第一東京弁護士会が「第一」と名乗っていたので、その先例から以後できる弁護士会はできた順に番号を付けるということにされて、第二東京弁護士会という名前になりました。
 その後、戦後に現在の弁護士法が定められ、弁護士会は地方裁判所ごとに1つずつと決められました。その時に、すでに存在する弁護士会については、「なお存続させることができる」と定められ、現状が固定されました。現在では新たな弁護士会を作ることはできません。
 こういういきさつですので、弁護士会にはいろいろ主張はありますが、第三者の目から見れば、戦前の派閥抗争で東京弁護士会が3つに分裂し、それが戦後もそのまま残っていると理解することになります。

  二弁(第二東京弁護士会)の悩み

 東京の3つの弁護士会は、地域的にも同じ東京全域をカバーしていますし、もちろん、法的には全く同じ資格ですが、名称の関係で第二東京弁護士会には不満が残っています。作った当時に自分で名前を選べなかったこと、「第二」という言葉が二流のニュアンスを持つことから、不満なのです。特に英語で Secondary とするとそのニュアンスが強くなりますので、第二東京弁護士会は英語表示を Daini Tokyo Bar Association としています(そうしたって What's Daini ? : Dainiって何ですか と聞かれて答に窮するだけなのですが)。外国との関係だけでなく、一般の人から、「先生はいつになったら東京弁護士会に昇格できるのですか?」と聞かれて愕然とした第二東京弁護士会の会員がいるという話がおもしろおかしく伝えられたりします。第二東京弁護士会は、以前、名称の変更を試み(名称変更には法律上の障害はありません)、会員の弁護士の投票まで行いましたが、結局投票でもいい名称が決まらず沙汰やみになっています。

  3つの弁護士会の違い

 3つの弁護士会の違い(事実上の違い)についてはいろいろいわれてはいますが、実際のところ、当然今では分裂当時にはいなかった弁護士がほとんどですし、新たに東京で弁護士になる人が3つの弁護士会をどう選ぶかというと、入った事務所の先輩弁護士が入っている弁護士会を選ぶのがほとんどですから、現実的な違いはなくなってきています。
 私は第二東京弁護士会に所属していますので、第二東京弁護士会の特徴だけいっておくと、伝統的に「新しもの好き」の傾向があります(日本で一番新しくできた弁護士会ですし!)。1つのジョークとしてですが、弁護士会の委員会で新たな企画をするときに理事者を説得するのに、東京弁護士会では「〇〇弁護士会でももうやっています」と言うとうまくいきやすい(他会がやっているのに東弁がやらないわけには…)のに対して、第二東京弁護士会では「全国どこの弁護士会もまだやっていません。二弁が初めてです」と言った方がうまくいく(他会に先駆けて二弁がやったと言いたい/言われたい)という感覚です(近年は予算が厳しくなり、これでうまく行くことはあまりなくなったように思えますが)。

 また私は第二東京弁護士会の労働問題検討委員会の委員長をしていました(2013年4月から2015年3月まで)ので、その観点からいいますと、各会の労働法・労働事件関係の委員会(東弁は労働法制特別委員会、一弁は労働法制委員会)の構成を見ると、東弁は労働者側が圧倒的多数を占め、一弁は使用者側が圧倒的多数を占めているのに対し、二弁では労働者側と使用者側がほぼ均衡しています(これはあくまでも労働問題の委員会に所属している弁護士の数というか勢力の話で、委員会に所属していない弁護士の傾向はわかりません)。二弁では(私が委員長になってからは意識的に)その利を活かして労働問題検討委員会主催の研修会(講演会)では労使双方の講師を同席させて双方からの見解を話してもらっています。私自身は労働者側の弁護士ですので、そういった研修会を含め様々な場面で使用者側の意見(やり方、内幕)を知ることができ大変勉強になるなぁと思いながらやっています。なお、労働者側と使用者側が均衡していると労働法制について意見がまとまらないと危惧されるかと思います(私も少し危惧していました)が、2013年安倍政権がもくろむ全ての業種について使用者側は3年毎に派遣労働者を交代させさえすれば永遠に派遣労働を利用でき、派遣労働者は同じ職場での労働は3年を上限とする労働者派遣法の抜本的改正の動き(その後2015年9月に改正されてしまいましたが)に対しては、「改正反対」の会長声明を、東京弁護士会より早く(こういうことを言いたがるのが、二弁的 (^^ゞ)出しました。

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