私の読書日記  2013年2月

03.04.自白(上下) ジョン・グリシャム 新潮文庫
 無実を主張し続けたがすべて退けられ死刑執行4日前となった黒人青年の事件の真犯人を名乗る常習犯罪者が牧師に罪を告白し、牧師は悩みながらその男を死刑回避のために奔走する弁護士の下へと連れて行こうとするが・・・という設定のリーガルサスペンス小説。
 グリシャムらしいウィットで読ませてくれますが、テーマとストーリー展開はかなりストレートな冤罪と死刑制度の糾弾で、エンターテインメントとしては、少しひねりが少なく、特に終盤は冗長な印象を残します。グリシャムファンにとっては、「処刑室」+「評決のとき」というイメージになりそうです。
 死刑囚の弁護人のロビーの悔恨。「どんな公判でも弁護士は十あまりもの迅速な判断をくだす。いまロビーは、そのすべてを頭のなかで思いかえしていた。別の専門家証人に依頼することもできた・・・・・・別の証人を呼ぶこともできた・・・・・・判事への態度をもっとやわらげることもできたし、陪審にもっと愛想よく接することもできたはずだ。たとえだれからも責められずとも、ロビーはこの先ずっと自分を責めつづけるはずだった。(下巻134〜135ページ)」。弁護士をやってる限り避けられない思いですが、胸に響きます。
 タイトルの "The Confession" は、「自白」なんでしょうか。死刑囚のドンテは強要された自白が決め手となって死刑判決を受けますが、作品の中での比重からいうと、真犯人のボイエットの「告白」なんじゃないかなと思うのですが。

01.02.アソシエイト(上下) ジョン・グリシャム 新潮文庫
 イェール大学ロースクールの優等生が、5年前のアパートでの乱痴気騒ぎをめぐるビデオで正体不明の男から脅され、世界最大を誇る法律事務所に就職してその事務所が担当している8000億ドル規模の訴訟の機密情報を漏洩することを求められるという設定のリーガルサスペンス小説。
 巨大な力による謀略の圧力と、巨大事務所の大量の証拠書類の山とそのセキュリティの壁に挟まれながら、新人弁護士が知恵をめぐらせ、FBIと協力しながら立ち向かうという設定とストーリー展開は、グリシャムの出世作「法律事務所」を彷彿とさせます。主人公のルームメイトの名前がミッチというあたりにも、「法律事務所」を意識しているよというグリシャムのサインが見て取れます(原作で読んだわけじゃないから綴りが違うかもしれませんが)。ストーリーの流れのよさも、あの頃のグリシャムが戻ってきた感じがします。作品自体の出来映えはいいと思います。そして「法律事務所」とは似ているけれども、謀略の主体と法律事務所の関係が違い、「法律事務所」のある種見せ場だった追いかけっこがないなどの違いがあります。そういったさまざまな要素を考え合わせて、グリシャムファンには、やはり「法律事務所」を想起させ、そのことがグリシャムの復活ないし健在を祝福すべき気持ちとノスタルジーと、出世作への回帰に行き詰まりと限界を感じさせる、複雑な思いを持たせるものとなっているように思えます。
 弁護士の目からは、この作品では多数登場する弁護士にワーカ・ホリックは多くても悪辣な人物が登場せず、グリシャムの弁護士総体への愛情がほの見えて少しホッとする思いがありました。

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