庶民の弁護士 伊東良徳のサイト

たぶん週1エッセイ◆
映画「アルバート氏の人生」
 男性と偽って働き続ける孤独な女性の生き様を描いた映画「アルバート氏の人生」を見てきました。
 封切り2週目日曜日、全国で5館東京で唯一の上映館TOHOシネマズシャンテスクリーン1(224席)12時50分の上映は8割くらいの入り。

 19世紀のダブリン、孤児として育ち、育ての親を14歳で失い、5人の男に階段の下でレイプされて捨てられ、1人で生きるために男性と偽りアルバート・ノッブスと名乗ってウェイターとして40年にわたり働いてきた女性(グレン・クローズ)は、貴族たちも愛好するモリソンズホテルでウェイターとして働き、高い評価を受けてきたが、人付き合いを避け、チップを貯め込むことを生きがいにしていた。貯め続けてきた金があと半年もすれば600ポンドに達するというとき、アルバートは自分で煙草店を持ちたいという思いを強め、店舗の空き物件を見つけ、そこで店を営業する自分の姿を夢想する。ある日、自分と同じように男性と偽って働く女性に出会ったアルバートは、その女性が働く女性と「結婚」し共同生活をしていることを聞いて衝撃を受け、それに習って自分も女性と結婚して一緒に店を持とうと思い、モリソンズホテルの若いメイドヘレン・ドウズ(ミア・ワシコウスカ)をデートに誘うが、ヘレンには若くわがままで野心的な恋人ジョー・マキンス(アーロン・ジョンソン)がいて、ヘレンにアルバートから金を巻き上げるよう指示し・・・というお話。

 長年にわたり地道に誠実に勤め続けこつこつと事業資金を貯めてきた50代半ばの人物が、いざその実現に向けて動き出したら、計画には現実性があまりなく、若く美しい女性にあれこれねだられて散財し振り回され、その恋人の若い男と争いになり敗北するという、悲しい物語。地道に生きてきた人は、最後まで地道に生き続けるのをよしとせよ、最後にひと花咲かせようとか色気を出すなといわれているようで、中高年世代には、よりもの悲しく思えます。いい歳したおじさんが、若く美しい女性に思いを寄せ、しかも相手が乗り気でないのに独り相撲で勝手に妄想を膨らませ・・・という展開は、ますます哀しい。ヘレンに言い寄り始めてからのアルバートの空気の読めなさ加減は、見ていて恥ずかしいほどですが、でも、恋は盲目、恋するおじさんってそんなものだという気がしますしね。
 それにしても、女が、パートナーとしての女を選ぶときでも、若くて美しい女を選ぶというのは、それはそれであわれを誘うような気がするのですが。

 アルバートの生き方は、早くに親を失い1人で生きざるを得なかった女性の悲しい姿ではありますが、同じように男性と偽って暮らすヒューバート(ジャネット・マクティア)はより素直でより明るい人生を送っていることと比べても、不器用に思えます。
 そういう不器用な生き方をする人たちへの理解と共感を示すという映画と見ておきたいと思います。

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