庶民の弁護士 伊東良徳のサイト

たぶん週1エッセイ◆
弁護士と休暇
 弁護士は自営業ですので、いつ休むかは、理屈の上では自由です。でも同時に、休暇を確保するには鉄の意志が必要です。
 通常でも、相談の予約や依頼者との打ち合わせを入れるとき、相談者・依頼者の希望を聞いていたら、「夜9時以降でないと」「朝8時前なら」「日曜しか休みがありません」なんて話になります。それにすべて応じていたら弁護士は24時間営業を求められ、過労死確実です。実際には、手帳とにらめっこしながら遅くまで相談・打ち合わせを入れる日を作り、相談・打ち合わせを入れないで(電話もとらないで)集中して書類を作る日、早く帰る日、休みの日を割り振っていきます。それでも私がいくつかやっているような弁護団を組む事件(私の場合でいうと原発訴訟とかオウム真理教の被害者側とか大規模労働事件とか)の会議は弁護士間の日程調整をするとたいてい夜間か土日しか入りませんから、否応なくそういうところに日程が入ってしまいます。通常の土日を相談・予約を入れずに電話もとらずに書類作成集中日にするのも、休むのも、相談者・依頼者、事件を一緒にやっている弁護士の恨めしげな目・疑惑の目にさらされながら、鉄の意志で「その日は別の予定が入っています」と言いつづける必要があります。 
 長期休暇となると、抵抗は強まります。
 裁判所は、7月20日から8月31日までの間に、7月下旬から8月上旬の第1グループ、8月上旬から中旬の第2グループ、8月中旬から下旬の第3グループの3つに分かれて交代で3週間ずつ休みを取ります。つまり、それぞれの裁判官、職員は確実に3週間休みを取れますが、裁判所全体としてはずっとあいているわけです。そうすると、弁護士は自分が担当している裁判の担当部の休みが特定のグループに集中しているということはまずあり得ませんから、裁判所の夏休み中でも休めないということになってしまいます。
 もちろん、実際には、ほとんどの弁護士はある程度の夏休みを取ろうとします。その場合、自分で、この時期と決めて、その日は裁判の日程を入れないようにがんばるしかありません。でも、これもなかなか大変です。裁判官も、多くの人は、弁護士の休みにも配慮してくれますが、そうでない人もたまにいます。
 私のように弁護士会の法律相談センターの運営委員で法律相談の担当が多いと、法律相談の担当日で長期休暇を取れる時期がまず限定されます。休暇の予定時期とどうしてもかち合うときには相談担当日を別の弁護士と交渉して交代してもらうのですが、これがうまくいくとは限りません。ある年など弁護士会の法律相談センターの担当日と法律扶助協会の相談の担当日がともに8月17日の同じ時間帯に当たったことがありました。さすがに同時に2箇所で相談担当はできませんのでこの時は片方は無理無理交代してもらいましたが、こういう日は交代してもらうのはなかなか大変です。弁護士会の職員も法律扶助協会の職員も、担当日の割り当ては機械的にやっていると言っていますが、こういう偶然ってあるでしょうか。普通の人が担当したがらないような日には割り当ててもあまり文句を言わない弁護士に振っているのではという疑問は根強く感じます。
 そして、夏の時期は、大きな事件を担当している弁護士にとっては、ふだんやれないような時間のかかる仕事を宿題にされる時期でもあります。もう10年以上前になりますが、某宗教団体の霊感商法の違法性に関する準備書面を夏休み時期にまとめたことがあります。その年は子ども連れで長期帰省したんですが、事件記録をダンボール箱詰めして宅急便で送り子どもを寝かしつけてから深夜にそっと起き出して記録を読んで書面を書くという作業を続けて不興を買いました。
 まあ、そうは言ってもそういう様々な事情に翻弄されつつ、ちゃんと休んではいます。
 今年は8月11日から15日は私はお休みです。うちの事務所は事務所全体のお休みはありませんから事務員は交代で出てきています。でも、その期間はHPの更新はお休みしますし、電子メールも見ない予定です(ブログの方は更新すると思いますが)。
(2006年7月22日記)

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