庶民の弁護士 伊東良徳のサイト

たぶん週1エッセイ◆
映画「塀の中のジュリアス・シーザー」
 イタリアの刑務所の囚人たちが演劇実習でシェークスピアの「ジュリアス・シーザー」の公演を成功させるまでを描いた映画「塀の中のジュリアス・シーザー」を見てきました。
 封切り2週目土曜日、全国3館、東京で唯一の上映館銀座テアトルシネマ(150席)(5月31日閉館)閉館カウントダウン3、12時40分の上映は8割くらいの入り。

 イタリア郊外のレビッビア刑務所では、囚人たちによる演劇実習が定期的に行われ、プロの演出家が指導し、刑務所内の劇場で一般人観客を前に公演をしている。演出家が今年の演目をシェークスピアの「ジュリアス・シーザー」と決めたところから、囚人たちのオーディション、配役決定、練習風景を映してゆく。練習の過程で、過去を思い出して台詞に詰まり、感情的になり練習が止まり・・・というお話。

 出演者が、いずれも実在の長期受刑者(ブルータス役の俳優は、この映画撮影以前に釈放されてプロの俳優となり、この映画のために呼び戻されたそうですが、それでもこの刑務所出身)で、実質的にはドキュメンタリーとも言えますし、見た感じは、メイキング「ジュリアス・シーザー」という赴き。
 受刑者たちが、練習に引き込まれていく様子は、それなりに魅力的なんですが、囚人たちがみんな最初からやる気満々で、ほとんど一糸乱れずという感じで演劇に入っていくのがちょっと拍子抜けします。長年続いた矯正プログラムで既に浸透しているから波風も立たないというか、波風立たせたら刑期にも影響しかねないから実際には波風立たないんでしょうけど、ドキュメンタリーじゃなくエンターテインメントとして見せるのなら、バラバラの囚人たちを少しずつ演劇でまとめていくという過程や途中かならず訪れる崩壊の危機を描いて、本当に公演なんてできるんだろうかというハラハラ感を持たせて欲しいなと思ってしまいました。
 2012年ベルリン映画祭金熊賞のタイトルに惹かれて見に来ている観客が多いんでしょうね。エンドロールが始まるや席を立つ客が多かった印象です。ドキュメンタリーとしてみれば、いい線行ってると思うのですが。ドキュメンタリーなのかエンターテインメントなのかが、つくりとしても宣伝としてもどっちつかずというかむしろエンターテインメント方向に見せているために、観客の期待とミスマッチを生じているのだと思います。

 さて、わりとユニークな上映プログラムというか、ハリウッド系や邦画の売れ筋をあえて拒否してきた感じで閉館が惜しまれる銀座テアトルシネマ。閉館カウントダウン2は3月9日から2012年カンヌ映画祭パルムドールの「愛、アムール」。カンヌのパルムドールを毎回見に行きたがるものの見に行くとたいてい横で寝てる人は今度はどう出るか・・・

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