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たぶん週1エッセイ◆
映画「チェ 28歳の革命」

 2008年が生誕80周年で再注目されたチェ・ゲバラの半生を描いた2部作の前半「チェ 28歳の革命」を見てきました。
 封切り初日、109シネマズ1000円デー、土曜午後という条件ですが、これだけ政治的な映画で109シネマズ木場の最大スクリーンのシアター2:461席を半分方埋めたのは立派と言えるでしょう。

 共産主義革命の活動家を賞賛する映画が、テレビCMを打って大々的に配給されること自体、ベルリンの壁崩壊後の流れの中では1つの異変と思えます。全共闘世代のノスタルジーか、共産主義が現実世界で影響力を失い恐るるに足りずと考えられたのか、それとも「蟹工船」ブームにあやかってでしょうか。

 映画の本編の前に、チェ・ゲバラって一体誰と思ってる客が多いと配給会社が考えたのでしょう、日本語でチェ・ゲバラの解説映像がありました。レッド・クリフの時のように映画本編とくっついていると思いきや、このあとに「ノー・モア映画泥棒」のフィルムが入り、思い切りしらけました。あれ、どうにかなりませんかね。

 映画そのものは、ゲバラの1964年の国連でのスピーチ、アメリカのジャーナリストとのインタビュー、キューバ革命時の3つの時点の映像が行きつ戻りつしながら展開します。国連でのスピーチとインタビューは、実写フィルムと思わせるためにモノクロ。全部カラーにすればいいのにと思いますが、キューバ革命の山岳地帯や都市での映像だけがカラーのため切り替えがわかりやすくイメージが鮮やかに見えるというメリットもありました。モノクロフィルムから切り替わるために山岳地帯での映像がずいぶんとカラフルで鮮やかな映像に見えましたもの。
 「28歳の革命」はアルゼンチン生まれの青年医師だったチェ・ゲバラが、カストロに共鳴して無謀な革命戦争に身を投じ、次第に住民たちの支持を集め、拠点都市を制圧して首都に進軍する直前までを描いています。
 チェ・ゲバラ(ベニチオ・デル・トロ)は、ゲリラ戦の中で、負傷兵の搬送や新兵の訓練など前線から外れた任務を自ら買って出たりカストロ(デミアン・ビチル)から命じられます。それを、戦闘の前線だけが革命じゃない、負傷兵の搬送でゲリラ戦の本当の意味がわかったとか、インタビューで答えさせ、また兵士の信頼を集めていったというストーリーにしています。カストロに、お前はあまり前線に出るな、革命成功後に必要な人材だとか言わせたり、前線でチェ・ゲバラが危険を顧みず先頭に立って戦うシーンもたくさん出してもいます。
 また、チェ・ゲバラは農民からの略奪を禁じ、軍の規律の維持を強調し、そういう姿が住民の支持を集め、志願兵が増えていったというストーリーになっています。共産主義の戦士のあるべき姿として語られているところではありますが、こうストレートに映画として語られると、どうもプロパガンダ映画というか、プロモーションビデオというかそういう印象を持ってしまいます。ラストでも、撃ち倒した敵兵が使っていた車を戦利品として、それに乗って次の戦地に移動している自軍の兵士に、「敵のものでも泥棒は許さん、返してこい」って。ここまで言われるとねぇ。

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