庶民の弁護士 伊東良徳のサイト

たぶん週1エッセイ◆
映画「ガール」
ここがポイント
 人生楽しいことばかりじゃない、がんばらなきゃ、でも楽しむことを諦めないというメッセージにあふれた映画
 仕事上の悩みと、本音を言わない夫への苛立ちで歯を食いしばり続ける麻生久美子が、かっこよくもあり切ない

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 仕事に恋にがんばるアラサー女性の姿を描いた映画「ガール」を見てきました。
 封切り初日土曜日、TOHOシネマズ渋谷スクリーン1(154席)の午前9時25分の上映は4割くらいの入り。観客層は圧倒的に若めの女性2人連れ、次いでカップルが若干。

 女の子はいくつになってもお姫様という母の言葉を信じてキラキラに装い続ける由紀子(香里奈)は、29歳の誕生日、パン作り教室に通う女友達の容子(吉瀬美智子)や聖子(麻生久美子)から、いつまで年不相応の格好をしているのか、イタイと思われてるのがわからないのかと指摘される。広告代理店の仕事でもクライアントの担当者安西(加藤ローサ)からは30になっても40になっても女の子でいたいなんて気持ち悪いと嫌われて企画にダメ出しされ、10年来のつきあいのボーイフレンド(向井理)に告られてHしてもデートはいつもの定食屋という状態。聖子は、会社で抜擢されて課長になるが、年上の男性部下(要潤)が聖子の指示を無視して商談を進め、コンビを指示した女性部下(波瑠)の提案を握りつぶすことにキレ、自分よりも稼ぎもキャリアも低い夫(上地雄輔)が遠慮がちにしている様子にも苛立ちを感じていた。容子は、一回り年下のイケメンの新人(林遣都)の指導係を命じられ、新人を連れ回すうちに妄想を膨らませる。由紀子らと仲良しのもう一人シングルマザーの孝子(板谷由夏)は息子のよき母であり続けようと逆上がりの練習をしたりしながら毎日8時に駆け足で帰宅を続けていた・・・というお話。

 「きっとみんなそう。人生の半分はブルーだよ。ブルーと向き合わなきゃきっと人生は輝かない」という台詞に象徴されるような、人生楽しいことばかりじゃない、がんばらなきゃ、でも楽しむことを諦めないというメッセージにあふれた映画です。
 いつまで「ガール」でいられるのか、年相応に生きていかなきゃならないのでは?私らしくじゃなく社会に受け入れられるように・・・という悩みにどう向き合っていくのか。「男の人生は足し算だけど、女の人生は引き算」は本当か?・・・そのあたりを考えさせられます。
 私には、仕事上の悩みと、本音を言わない夫への苛立ちで歯を食いしばり続ける麻生久美子が、かっこよくもあり切なく感じられました。課長の指示を無視して女は家庭に引っ込んでいろという態度を続ける部下への怒りをぶちまける麻生久美子とその姿に戸惑いつつ慰めようとする上地雄輔の微妙なすれ違いも考えさせられます。この夫婦のラストシーン、決まりすぎで、キャリアウーマンの観客は確実に泣けると思います。私も涙ぐみましたし(私はいったい誰に感情移入してみてる?)。
 実質は4人の主人公のオムニバスで、前半は特に短いカット割りで切り替えていきますので、ストーリーよりも印象的な言葉とイメージで回している感じがします。4人の中で主人公格の香里奈の前半のキラキラ衣装と後半のちょっと抑えめのシックな出で立ちの対象が印象的です。前半に違和感を感じ、後半の姿にギャップ萌えしてしまうのは、やはり私の年のせいでしょうね。香里奈まわりの光山さん(檀れい)のけばけばしさ、こわばった顔をし続ける加藤ローサの終盤での変貌が、「女の人生は半分ピンク」の部分を描いていて、少し明るい気持ちになれます。
 4人の割り振りを、観客の誰もが、誰かの中に自分を見つけるか4人のそれぞれの中に少しずつ自分を見つけるかすることができるように巧みになされていると評価するか(意識して評価しなくても、その思惑に乗れるか)、それぞれの描き方(特に吉瀬美智子と板谷由夏)が中途半端で食い足りずもう少し突っ込んで欲しかったと思うか、そのあたりが評価の分かれ目になる映画だと思います。

 向井理、おしゃれして誕生祝いに来た香里奈に、定食屋で圧力鍋のプレゼント渡すかなぁ。う〜ん、私もやりかねないけど、それなら相手はゆるい感じの吉瀬美智子なんじゃないか・・・まぁ、学生時代からの長いつきあいだし、理屈で冷静に判断して好きになるわけでもない(好きになっちゃったらしょうがないじゃない)しね。
 吉瀬美智子の妄想すごいし、エレベーターで叫ぶかなぁ。「死刑台のエレベーター」(2010年)で自分はエレベーターに乗らなかったからその代わり?

(2012.5.27記)

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