たぶん週1エッセイ◆
映画「インビクタス/負けざる者たち」
ここがポイント
 基本的にマンデラを賛美する映画で、ラグビーはその題材に過ぎないとみるべき
 当時の南アだから、マンデラだからこそ、無条件に感動する話

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 1995年ラグビーワールドカップ南ア大会で初出場初優勝した南アチームとその躍進を支えたマンデラ大統領の確信を描いた映画「インビクタス/負けざる者たち」を見てきました。
 封切り3週目土曜日午前中は2割くらいの入り。

 アパルトヘイト(人種隔離政策)の白人政権下で27年間投獄されていたネルソン・マンデラ(モーガン・フリーマン)が1990年に釈放され、1994年南ア史上初めての全人種による(つまり黒人が選挙権を持つ)選挙で大統領に選ばれたマンデラは、少数派の白人の恐れを解くために黒人に寛容と赦しを求めた。政府職員にも白人の残留を求め、自らの警備スタッフにも公安警察にいた白人を採用し、笑顔で警備に当たれと指示した。しかし、白人と黒人の対立は続き、自国で初開催となるラグビーのワールドカップが迫っても、白人は南ア代表チーム「スプリングボクス」を応援し、黒人はメンバーに1人しか黒人がいないスプリングボクスを嫌って相手国チームを応援する始末。士気の上がらない南ア代表チームに黒人中心のスポーツ評議会はチーム名やチームカラーの変更を決定するが、マンデラは自ら乗り込んでその維持を説得する。白人と黒人の心を一つにするために南ア代表の活躍が必要と考えたマンデラは、スプリングボクスのキャプテンフランソワ・ビナール(マット・デイモン)を執務室に招き、自らが獄中でいかにして希望を失わずに来たかを語りキャプテンとしてチームに力を出させる方策を尋ねて激励する。マンデラの思いと獄中での日々に感銘を受けたビナールは、チームメイトの反発を抑えながら、今や自分たちはただのラグビーチームにとどまらないと語り、チームをまとめていく・・・というお話。

 基本的には、マンデラ賛歌の映画で、その題材にラグビーを使っていると見るべきです。マンデラの生き様に共感する観客には、シンプルで力強い感動を与えますが、マンデラに反発を感じる人には見ていられない映画でしょう。私は、前者に属するので、いい映画だなぁと思って見ていましたが。
 対立する国民の心を一つにするために、自国のスポーツチームの活躍を求め、自らも率先して応援する姿を見せる。長年国際社会から激しく非難されてきたアパルトヘイト政策が強行され続け、少数派の白人が多数派の黒人を抑圧し続けた歴史と、それによる激しい白人と黒人の対立があり、それを自らが27年間も投獄されてきた大統領が憎しみを捨て赦しを求めるという、当時の南アだから、マンデラだからこそ、無条件に感動する話です。しかし、冷静になって、かつその部分だけ取りだしてみたら、スポーツの政治利用そのもので、スポーツ選手にばかり「国民栄誉賞」を出したがる歴代自民党政権や「感動した」とか言いながら自ら賜杯を授与しに土俵に上がる小泉某と大差ないとも言えます。そのあたりをどう見るかでかなり評価が変わると思います。でも、私は、やっぱり、マンデラなら許せると思ってしまうのですが。

 ところで、マンデラがラグビーチームのことを優先して最初に袖にされるのが日本の通商代表だったり、南ア代表の決勝戦の相手ニュージーランドのオールブラックスの対戦成績で日本代表が145対17という大会新記録の大負けをしてるとか(これは実話だから仕方ないけど)、なんか日本って軽く見られる役回りですね。

(2010.2.20記)

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