たぶん週1エッセイ◆
映画「ロシュフォールの恋人たち」
ここがポイント
 あっけらかんとした健康的なダンスの明るさがストレートな恋愛賛歌になっている
 私自身は、ドヌーヴよりも、イヴォンヌとシモンの恋に興味を引かれる

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 1967年のミュージカル恋愛映画「ロシュフォールの恋人たち」デジタルリマスター版を見てきました。
 1月31日からの公開で、5週目の日曜日ですが、午後から行ったこともあり、ほぼ満席でした。

 ロシュフォールのカフェの双子の姉妹デルフィーヌ(カトリーヌ・ドヌーヴ)とソランジュ(フランソワーズ・ドルレアック)はバレエ教室で子どもたちを教えていますが、小さな街で退屈し、パリに行こうと考えています。デルフィーヌは画廊経営者の求愛を断り、空想で理想の女性としてデルフィーヌそっくりの画を描いたまだ見ぬ兵役中の画家に恋します。ソランジュは、自分の作曲した曲の楽譜を依頼している楽器店主シモン・ダム(ミシェル・ピコリ)に旧友の音楽家アンディ・ミラー(ジーン・ケリー)への紹介状を頼み、パリでの成功を夢見ていましたが、弟のブブを迎えに行った際にブブが投げ出したカバンの中身を拾ってくれた見知らぬ男性に一目惚れします。姉妹の母イヴォンヌ(ダニエル・ダリュー)は、初婚で双子を産んだ後、新たな男性と恋をしてブブを宿しますが、相手の男性の名前がおかしいことに耐えられず、黙って去り、メキシコで再婚したと嘘の連絡をしましたが、その男性が忘れられず、彼と出会った街ロシュフォールに舞い戻ってカフェを開いたのでした。兵役中の画家マクサンス(ジャック・ペラン)は、連日イヴォンヌのカフェにやってきて理想の女性のことを語りますが、デルフィーヌとはすれ違ってばかり。そんな中、祭りの興行にやってきたイベント屋のエチエンヌ(ジョージ・チャキリス)とビル(グローヴァー・デイル)が、姉妹にパリまで連れて行くことと引き替えに祭りでのショーへの出演を依頼します。ショーが終わり姉妹がパリに行く朝、ソランジュが一目惚れした男もソランジュに一目惚れしてソランジュを探していたところ、それがアンディだとわかり、イヴォンヌはかつて捨てた男シモン・ダムがやはりイヴォンヌと出会った街ロシュフォールに楽器店を開いていることを知り・・・というようなお話です。
 フランス軍の増強と連日の兵士の行進とか、バラバラ殺人などの社会の暗さを示すエピソードは登場しますが、主人公たちの恋愛は、当然にようにお約束のハッピーエンドを迎えます。デルフィーヌは、かなりすれ違いで肩すかしを食いますが・・・

 シェルブールの雨傘と違って、すべての台詞が歌というわけではありませんが、見せ所では歌になり、みんながダンスを始めます。天気も晴れで全体に光に満ちて明るい風景、恋の喜びがすぐにダンスになる軽快さが、見ていて楽しい映画です。プロだからもちろんではありますが、ダンスにも照れや迷いがなく、60年代らしいミニスカートでのダンスも下着が見えることなど全く気にしていない感じで(主役のドヌーヴでも)、あっけらかんとした健康的な明るさに驚きます。このダンスの明るさがストレートな恋愛賛歌になっていて、中高生の頃にこういう映画に親しんでいたら人生観変わったかななどと思ったりしました。
 私自身は、そういう歳になって見ているからでしょうけど、ドヌーヴよりも、イヴォンヌとシモンの恋に興味を引かれます。一方的な別れの後、お互いに思いを振り切れずに過ごした10年の後に、それぞれに想い出の街に戻っての再会。万感の思いを込めた再会での、しかし落ちついた会話がしみじみします。それにしても、双子の姉妹の連れ子のいるイヴォンヌを愛し10年も思い続けるという設定、やはりフランスならではと感じてしまうのですが。

(2009.3.1記)

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