庶民の弁護士 伊東良徳のサイト

たぶん週1エッセイ◆
映画「ミステリと言う勿れ」
ここがポイント
 女の幸せとか家事は楽だと決めつけるのはおかしいという整の長台詞、観客にどこまで受け容れられたか、効いたか、気になる
 弁護士は、やはりあまり信じていただけていないのだなと思う
    
 漫画原作で2022年1月期フジテレビ月9ドラマの映画化(フジテレビ開局65周年記念作品だとか)「ミステリと言う勿れ」を見てきました。
 公開3日目日曜日、新宿ピカデリーシアター1(580席)午前11時25分の上映は、ほぼ満席。私は、テレビほとんど見ないので予備知識なしで行ったため驚きましたが、現在の日本映画の興行上は鉄板のパターンですからそういうものでしょうね。そういう映画ばかり大入りになるのはいかがなものかと思いますが。

 広島市内観光をしていた久能整(菅田将暉)は、知人の我路(永山瑛太)に紹介されたという高校生狩集汐路(原菜乃華)から自分の命とお金がかかっているので付いてきてくれと言われ、一帯の大地主狩集家の当主の遺言披露の場に立ち会った。その遺言では相続人4名にそれぞれ1つの蔵の鍵が渡され、あるべきものをあるべきところへ過不足なくするというお題が課され、その結果を遺言執行人の顧問弁護士車坂義家(段田安則)と顧問税理士真壁軍司(角野卓造)が見て判断し全財産を1人に相続させるとされていた。狩集家では相続の度に争いが起こり人が死ぬという汐路の要請で整はそのまま汐路ら相続人とともに狩集家の邸宅に滞在することとなったが…というお話。

 天然パーマ(天パ)の整のキャラでシリアス色を消し、コメディにまではならずにほのぼの系でまとめるという印象で、それを中途半端と見るか万人受けしやすい作りと見るか…
 整の長台詞が多い作品ですが、その中で1シーン、「バービー」もビックリの直球のフェミニズム的な発言がありました。専業主婦の赤峰ゆら(柴咲コウ)が幼い娘を親に預けて蔵の謎解きに奔走しているのをその父が叱責し、働いている夫に悪いと思わないのか、働かず家事をしていればいい楽な身分なのだから子どもの面倒くらいちゃんと見ていろというようなこと(正確な言葉は覚えていませんが)を言ったのに対して、人それぞれで家事が好きな人もいれば苦手な人もいる、家事が好きでも掃除は好きだが料理は嫌いという人もいる、家事なら楽だとどうして言えるのか、楽をさせてあげたいと思うのは自由だが、相手がそれが楽だと思うかは別だ、男は体が大きくて強いのだから肉体労働をしてくださいと言われたらどうですか、目の前の人がどういう顔をしているかがわからないようですね、女の幸せということは男が言っているし、男の幸せという言葉は聞かない、それは男の都合じゃないですかというようなことを、まさしく教条的に説教しています。ある面、娯楽作品でよく言ったなという気もしますが、他方でその言葉で影響があったのはゆらの整への心情が和らいだくらいというのも寂しいところです。

 冒頭、整が雪の中を広島県立美術館から出てきて、ロートレックの土産物が買えてよかった、モネはもっと年をとってからの方がわかるのかもというようなことを言っています。ロートレックの有名なポスターの「アンバサダー」(こんな絵)の男がかぶっている黒い帽子が整の髪と似たイメージだからでしょうか。ちょっと気になったので調べてみましたが、広島県立美術館の所蔵品検索(こちら)で探した限りでは、広島県立美術館はロートレックもモネも所蔵していません。ちなみに近隣のひろしま美術館はロートレックを2点、モネを2点所蔵していて、それもロートレックは「アンバサダー」と似た(モデルが同じ人物かも)「アリスティド・ブリュアン」(こちら)を所蔵しているのですが。

 具体的に言うとネタバレになるので説明しませんが、やはり(フジテレビさんには?)弁護士は信じていただけていないのだなと感じます。

 エンドロール後にテレビドラマファンへのサービス映像がありますが、テレビドラマを見ていない私には無意味に思える映像でした。
(2023.9.17記)

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