庶民の弁護士 伊東良徳のサイト

たぶん週1エッセイ◆
映画「タイピスト!」
 田舎町からパリに出て来て秘書になった少女が雇い主との恋と職のためにタイプ早打ちコンテストに挑むビジネス恋愛映画「タイピスト!」を見てきました。
 封切り5週目土曜日、ヒューマントラストシネマ渋谷シアター1(200席)午前10時の上映は1割足らずの入り。

 田舎町の商店の娘ローズ・パンフィル(デボラ・フランソワ)は、父親が進める縁談を断ってパリに出て、父親から保険会社を引き継いだルイ・エシャール(ロマン・デュリス)の秘書に応募し、1週間の試用期間で採用される。1週間後、不器用なローズは解雇を言い渡されるが、ローズのタイプ早打ちの才能を見抜いたルイは、ローズにタイプ早打ちコンテストに出るなら仕事を続けていいと伝える。ルイはローズを自宅に住み込ませてタイプの特訓をするが…というお話。

 ストーリーはローズがタイプの特訓をしてどんどん上達していき、コンテストで勝ち上がっていくという流れが中心ですが、作品としては、ルイに思いを寄せるローズと、ローズに魅力を感じながら素直になれないルイのラブストーリーの方が重きをなしているように見えます。
 タイプについては、我流の1本指打法で早打ちをするローズが、最初は10本指でのオーソドックスなタイピングを指導するルイに反発する展開で、おぉ1本指でコンテストに臨むかと思いましたが、そこはやはり通常のタイピングに矯正され、そりゃそうだと思うと同時に、少し残念。
 タイプ早打ちコンテストで、終了のブザーが鳴ると、選手は全員両手を挙げるのですが、そのしぐさと表情が意外に表現力豊かな感じ。直前まで真剣な顔してたのが一気に緩む落差に女優たちの魅力がにじみ出るように感じられました。

 恋愛ドラマとしては、ルイの設定がやや複雑。幼なじみのマリー(ベレニス・ベジョ)とつきあっていてお互いに結婚を考えていたところにフランスがドイツに占領され、ルイはマリーを未亡人にしたくないとマリーに黙って戦場に行き、その後レジスタンスを続けていたが、終戦直前にドイツ軍に踏み込まれ目の前で仲間を次々と殺される中を逃走して生き延び、仲間を助けられなかった悔恨に暮れる。他方、マリーはノルマンジー上陸作戦で間違って小屋に落ちたパラシュート部隊のボブ(ショーン・ベンソン)と結婚。ルイは近隣に住むボブと親友になるが、マリーへの思いも断ち切れないでいる。
 こういうルイのマリーへの未練と、自分が人を救えるのかという自信のなさ、愛する人を幸せにするために身を引くという行動スタイルが、ルイを前に進ませず、ローズとの関係に紆余曲折を生じさせます。それが、ストーリーの綾をなすのですが、ローズの一途さ、明るさ、映画全体の明るさの中では、違和感もあります。フランス映画で、ミッキーとミニーみたいな明るく軽いラブシーンは似合わないでしょうけど、もう少しルイを明るくしてもよかったかなと思います。

 原題は Populaire 。フランス語で、「庶民の」、「大衆的な」と、「人気のある」の2つの意味がある形容詞ですが、田舎娘が人気者になったということで、その両義でしょうか。
 そうすると、フランス語で「庶民の弁護士」は avocat populaire で、人気のある弁護士の意味もあるということでしょうか (*^_^*)

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