庶民の弁護士 伊東良徳のサイト

たぶん週1エッセイ◆
映画「プロミシング・ヤング・ウーマン」
ここがポイント
 泥酔した女性に対してわいせつ行為に及ぶ男たちとそれを許し被害女性を嗤う者たちに対する復讐がテーマ
 ハーレイ・クイン張りのりりしい描写もあるが、それでもキャシーの痛々しさ、哀しさが感じられる
 良心の呵責に耐えられず休業する弁護士の描写は少しホッとする
    
 将来を約束された若い女性だった元医大生の復讐劇映画「プロミシング・ヤング・ウーマン」を見てきました。
 公開3日目日曜日4度目の緊急事態宣言中の渋谷シネクイントシアター1(162席:販売82席)午前10時の上映は3割くらいの入り。

 大学医学部を中退し、30歳目前のキャシー(カサンドラ)・トーマス(キャリー・マリガン)は、恋人も友人もなく親元に住み、カフェの店員をしながら、単身バーに乗り込み、泥酔したふりをして、声をかけてお持ち帰りを試みる男たちについて行き、ベッドでことに及ぼうとする男に、冷ややかな言葉を投げかけて拒絶して帰るということを繰り返していた。ある日、カフェに今は小児科医となった医大の同級生ライアン(ボー・バーナム)が訪れ、学生時代から好きだったと、キャシーにデートを申し込んだ。喫茶店でライアンが話す同級生の消息で、マディソン(アリソン・ブリー)が2児の母になっていることそしてアル・モンロー(クリス・ローウェル)が結婚することを知ったキャシーは…というお話。

 酔い潰れた/酔い潰した女性に対してわいせつ行為に及ぶ男たちとその男たちを許し/野放しにして被害女性を嗤う周囲の者たちに対する復讐がテーマの作品です。タイトルは、将来を約束されていたはずの若き女性が、こんなことで人生を棒に振るような社会でいいのかというアピールを示しています。
 公式サイトに「この映画を観たあとキャシーの計画をバラさないで下さいね。なぜなら、これは彼女が語るべきストーリーだから。」とネタバレ禁止が念押しされているので具体的には触れませんが、そういうことならば、どうしてキャシーが、具体的な事件の当事者ではなく、酒場で悪事を働く男たち一般を相手に「復讐」を演じていたのか、序盤に違和感を持ちます。(ついでに言うと、このコロナ禍のご時世、いかにチャーミングな女性であれ、「落とせそう」な風情であれ、見知らぬ人と接触したくないと、私は思うんですが、性欲はコロナの恐れに勝るのでしょうか)
 また、キャシーが酒場で声をかけてきた男と密室で2人になった後で、冷淡に拒絶するのも、映画ではキャシーが優位に圧倒していますが、現実にはかなりリスキーで、かえってキャシーが傷を深め立ち直れないトラウマを受けることも予想されます。道の真ん中で停車していたときに罵倒してきた運転手(交差点の真ん中でって字幕でしたが、映像は交差点じゃなかった…)への攻撃や終盤のナース服等のビジュアルがハーレイ・クインみたいでりりしかった(この作品のプロデューサーにマーゴット・ロビーが入ってる影響でしょうね)けれど、それでもキャシーの痛々しさ、哀しさの方を感じてしまいました。

 終盤、泥酔した女性に対するわいせつ行為等で起訴された男の弁護のために、SNSなどから被害女性のふしだらな様子の写真等を探し出してそれで陪審員を説得してきたが、それを後悔して良心の呵責に耐えきれず業務を続けられなくなり休業している弁護士(アルフレッド・モリーナ)が登場します。後で後悔して苦しむくらいなら最初からやらなきゃいいとは思いますが、弁護士が当然に鉄の心臓を持っているわけではなく、人間味があるものとして描かれていることには、少しホッとしました。
(2021.7.18記)

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