たぶん週1エッセイ◆
映画「サマーウォーズ」
ここがポイント
 田舎の旧家の濃密な人間関係、泥臭く暑苦しいおじさん・おばさんたちの世界と、バーチャルワールドのクールな映像とかわいいアバターたちの世界が同時並行で展開していくのが、ミスマッチで、でもそこがうまい
 ネット社会の住人の悪意や無責任さ、ジコチュウぶりが強調されがちな中で、現実世界での親族の絆とともに、ネット社会の住人の絆を描き出したところに、この作品の真骨頂があったのだと思う

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 仮想都市OZの乗っ取りにより生じた現実世界の危機に数学オタク少年とその先輩美少女の田舎の親族たちが立ち向かうアニメ映画「サマーウォーズ」を見てきました。
 封切り4週目平日、新宿バルト9は最大スクリーン(429席)を割り当てていましたが8割〜9割の入り。夏休み中とはいえ、すごい。

 娯楽・コミュニケーションのみならずビジネスも暮らしも取り込んだ仮想都市OZのシステムのメンテナンスのバイトをしている数学オタクの高校2年生健二が、先輩の美少女夏希から一緒に旅行するバイトと言われて連れて行かれた夏希の曾祖母陣内栄の実家に逗留中、携帯に送られてきた謎の数字の羅列の問題を解くと実はそれがOZのセキュリティをかいくぐるパスワードで返信した者のアカウントが乗っ取られ、翌日から健二のアバターを乗っ取った何者かがOZで他人のアバターとその管理権限を次々と取得し、OZの機能は麻痺・暴走を続け、現実世界でもコンピュータで制御されている機器の誤作動・虚偽信号が相次ぎ大混乱に陥る。健二は仲間の佐久間と連絡を取りつつ、陣内家のコンピュータオタク少年カズマらとともに謎の侵入者との戦いを始めるが・・・というお話。

 田舎の旧家の大家族という伝統というか濃密な人間関係、泥臭く暑苦しいおじさん・おばさんたちの世界と、バーチャルワールドのクールな映像とかわいいアバターたちの世界が同時並行で展開していくのが、ミスマッチで、でもそこがうまいなぁと感じさせます。
 全世界につながる仮想都市の危機が、なぜか関係者というか天才ハッカーが長野県の田舎の陣内家に密集して解決されるという設定は、あまりにご都合主義的ですが、そこは映画ですからねで済ますしかないのでしょうね。

 最先端のコンピュータ技術と仮想都市の危機に対して大きな力となるのが親族の絆というのが映画のテーマです。当主の陣内栄の現実世界での人脈(警視総監に電話したりとか)や、親族が大学に納入する予定のスーパーコンピュータを流用して持ってきたり、電源確保のために漁船を運び込んだりとか、戦いに結束する親族の熱意と行動力が胸を打ちます。
 しかし、私には、この映画一番の感動の場面は、数億のアバターを盗みそれらのアバターの管理権限を握った敵からアバターを効率的に取り返すためとしてこいこい(花札)勝負を挑み当初は連勝したもののレートが上がったところでミスをして手持ちのアバターをほとんど奪われてゲームに参加できなくなって茫然とする夏希にネット世界の住人が自分のアバターを夏希に預けると次々名乗り出て夏希の持ちアバターがあっという間に億単位にまで達したシーンだったと思います。ネット社会の住人の悪意や無責任さ、ジコチュウぶりが強調されがちな中で、現実世界での親族の絆とともに、ネット社会の住人の絆を描き出したところに、この作品の真骨頂があったのだと思います。
 それにしても、こいこいをする夏希のアバターがかわいいこと!現実世界の栄おばあちゃんの笑顔もまたかわいいのだけど。

(2009.8.26記)

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