たぶん週1エッセイ◆
「対決 巨匠たちの日本美術」展

 東京国立博物館で開催中の「対決 巨匠たちの日本美術」展に行ってきました。
 はっきり言って私はこういう企画、好きになれません。室町時代から江戸時代(一部明治・大正)の国宝・重文級の作品を並べてまとめて鑑賞できるという意味はあるでしょうけど、時代も作風も違ういろいろな人の作品をちょっとずつ持ち寄っても、ただごちゃごちゃするだけに思えます。どこかで見覚えがある作品が多いですが、それだけに観光地に行ってガイドブック通りだと確認して回るパックツァー以上の感慨を得られた入場者がどれだけいたでしょうか。それに主催のマスコミが一生懸命煽るものだから、30日間で入場者20万人とかの大混雑。行列して待ってようやく見て、気に入った作品があっても立ち止まってゆっくり見れない状態の美術展って、見に行くに値しないと思います。
 で、ふだんなら休館日だけど特に開いている今日(2008年8月11日月曜日)は少し入場者が少ないかと思って行ってみましたが、やっぱり混んでました。まぁ午後遅めに行って行列しながらおおかた当たりをつけて、閉館30分前の入場者が途絶えたところで入口に戻って狙った作品だけゆったり見直しましたけどね。

 まず入口付近で大混雑の雪舟。国宝の「秋冬山水図」。雪舟と言えばこの絵がまず出てくる教科書によく見る絵です。これもともと東京国立博物館所蔵なんですがふだん展示されていなくて、初めて見ました。小さい。普通の掛け軸サイズの絵で、それをガラス越しに1mほど離れたところから見ても、実物を見たという感慨が湧きません。同じく国宝の「慧可断臂図」。こちらは大きい。これと松に鶴の「四季花鳥図屏風」が雪舟らしいデフォルメされた角々の岩や松と丸みのあるタッチの人・動物の組み合わせ。対比された雪村の一番有名な「蝦蟇鉄拐図」。いい絵なんですが、ものすごいシワシワ。これも東京国立博物館所蔵。ふだん展示しないで巻いてるからでしょうか。見ていて哀しくなりました。
 次のコーナーの狩野永徳。教科書とかではキンキラの絵の印象ですが、水墨画が意外にいい。国宝の「花鳥図襖」の松鶴芦雁図、初めて見ました。右半分の松に鶴の部分は雪舟風の角々の松で、左半分の雁は柔らかいタッチで、統一感がないとも言えますが、なかなかいい絵だと思います。やはり国宝の「檜図屏風」(これも東京国立博物館所蔵)は、教科書で見るいかにも狩野派って感じのキンキラの屏風ですが、こすられて剥がれた傷みが目立ち、これも哀しい。
 そして前半(第1会場)ラストは宗達vs光琳。この日から展示の目玉になる2人の「風神雷神図屏風」が並べられます。このコーナーは今日はそれ目当ての人が多いのか、閉館間際になっても人垣がなくなりませんでした。並べてみれば一目瞭然の同じ図柄ですが、やっぱり宗達の方が渋みがあっていい。光琳の方が後の作品だから褪色してなくてけばけばしく見えるということかも知れませんけどね。光琳では、あまり見覚えのない「白楽天図屏風」が、海の波のデフォルメが美しくて味がありました。
 私に掘り出し物に思えたのは、第2会場冒頭の応挙vs芦雪。応挙の「猛虎図屏風」のカラフルでどこかかわいい虎たち(豹もいるけど)と、芦雪の「虎図襖」のダイナミックな水墨画の虎。絵はどちらも少しアニメっぽい(だから今風とも言えます)んですが、これを並べて見るとなんか楽しい感じでした。応挙の絵で、この「猛虎図屏風」の虎の毛のフワフワ感とか、「保津川図屏風」の川の流れの描き方とか、日本画なのに洋画っぽいというか、今風の感じが、ちょっと新発見の気分でお得感がありました。

 著名な作品を集めたことが売りの展覧会で、初めて見た絵もけっこうありそこそこ楽しめましたが、考えてみると、出品作の相当部分がもともと東京国立博物館所蔵。特別展で高い料金とって見せるんじゃなくて、常設展で展示しておいて欲しいなぁと思います。 

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