たぶん週1エッセイ◆
映画「BRAVE HEARTS 海猿」

 「THE LAST MESSAGE」にさらに続編があったという掟破りの映画「BRAVE HEARTS 海猿」を見てきました。
 封切り2日目土曜日、TOHOシネマズ渋谷スクリーン3(297席)午前11時25分の上映は8割くらいの入り。

 海上保安庁の特殊救難隊に志願して配属された仙崎大輔(伊藤英明)は、後輩の吉岡(佐藤隆太)とともに海難救助と訓練に明け暮れていた。危険を顧みず「全員助ける」と主張する仙崎に対し、副隊長の嶋(伊原剛志)は、レスキューはスキルと冷静な判断力だとたしなめ、沈没寸前の船に飛び込んで自力で帰還できなかった仙崎に対して、おまえを助けるためにもし他の隊員が死んでいたらどうするんだと叱りつけた。そんなある日、吉岡の恋人のCA美香(仲里依紗)を乗せたジャンボ機G−WING206便がエンジン脱落のためにコントロール困難となった。嶋は吉岡の恋人が乗務していることを知って吉岡を外すよう指示したが、仙崎は反対し吉岡は救助のために東京湾上に向かった。G−WING206便はなんとか羽田上空までたどり着いたものの車輪が出ずに着陸できず、事故対策本部では、滑走路への胴体着陸か東京湾海上着水かで紛糾するが、日没が迫っていたため海上着水案は放棄された。それを聞いた仙崎は、海上に照明ブイで滑走路と誘導灯を作ることを提案し・・・というお話。

 決断の重みと人々の善意がメインテーマかなと思えました。
 ジャンボ機の前に入れた沈没する貨物船からの乗員救助のエピソードで、貨物が崩落し沈没直前の状態の貨物船に最後の一人を救おうとして飛び込んだ仙崎の決断とその失敗を見せ、嶋にがむしゃらに飛び込んでおまえを助けるために他の隊員が死んでたらどうするつもりだといわせることで、冷静な判断の必要性、プロの判断とは何かを考えさせます。その上で、ジャンボ機の救助では、小さなところでは恋人が要救助者となることで冷静な判断が期待できない吉岡を外すかどうか(ラスト近くでこれがけっこう考えさせられます)、大きなところでは着陸の失敗から大惨事を引き起こしかねない胴体着陸と爆発等の可能性は低くても20分で沈んでしまう海上着水のどちらを選ぶかという判断を迫られてどう決断するか。決断した上で失敗だったときどうするか、それが頭をよぎる中で速やかに決断できるか、そういうことをしみじみと考えさせられました。仙崎の立場でも、海上着水して乗員乗客の救助を終える前に機体が沈んでしまったらどうするか、さらにはそれ以前にタイムリミットまでに照明ブイで誘導灯の設置を終えられなかったらどうするのかという人命のかかった重い問いが心に重くのしかかっていたはずです。
 最初の方とラストで仙崎の子煩悩ぶりを描くことで、そういう仕事と決断の重さを冷徹な人物ではなくふつうの人間味のある者にかからせヒューマンな指揮官像に結びつけています。このあたりは巧さとある意味ではずるさを感じます。
 ヒューマンな指揮官という点では、実は前半憎まれ役として登場する嶋の方がかっこよかったりします。全体が性善説というかやり過ぎ感のあるハッピーエンドに向けて作られているためという感じがしますけどね。
 仙崎妻(加藤あい)の今の世の中がいいと思っている人なんていない、こんな世の中に産まれてくる子どもはかわいそうって、前半の態度は、ラスト付近での変化と対照されています。それはそれで構成としてはわかりますが、ちょっとわざとらしい。

 美香の吉岡と結婚したくない理由とか、それを打ち明けるやりとりとか、ちょっと浮いてる感じ。そこはもう少し作り込んで欲しかったなと思いました。

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