たぶん週1エッセイ◆
岡ちゃん・ジャパンのワールドカップ2010
 エッセイでサッカーの話題を書くの、ずいぶん久しぶり。実際、オシム監督が病気交代してから、ワールドカップ予選も含めてサッカーの試合全然見てなかったんです。改めて昔書いた記事読み直してみたら、あの頃は入れ込んでたなぁと・・・
 というあたりでもう、私の「岡ちゃん・ジャパン」への期待度はわかると思いますが。う〜〜〜ん、ベスト4が目標とか言ってこれだけいじり回して最後は「守備的に行く」だったら、ずっとトルシエにやってもらってたらよかったんじゃんって思ってしまいます。
vsカメルーン ◎ 1−0 :6月14日
 日本、ワールドカップ海外初勝利!
 いろいろ憎まれ口きいても、やっぱり勝つと素直にうれしい。ナショナリズムとか嫌いなんですけど、それでも、こういうときあぁ自分は日本人なんだなと実感してしまいます。

 初戦の主役は、日本−カメルーン戦に限らず、高さだったかなと思います。フィールドプレイヤーの平均身長の話じゃなくて、試合会場の標高。センターライン近くからのフリーキックが直接キーパーまで届いてしまったり、ニアサイドに上げたはずのクロスがファーサイドに行ったり、ボールがやたらと伸びる。それで合わなくて、という場面が度々見られました。初戦は慎重にという姿勢が各チームにある上に、クロスが合わなくて、多くのチームは攻撃に迫力が見られない。観客としては、つまらないゲームが増える感じ。
 日本の決勝点にして唯一の得点。あれも、実はそういう影響かなと、私は思ってしまいます。右サイドからの松井のクロスがファーサイドの本田の足元にきれいに入り、本田が落ち着いて決めたって、アナウンサーとか新聞の書きぶりではそういう評価です。その前の試合でオランダのワンタッチの華麗な足捌きを見ていた目には、「落ち着いて」じゃなくて「もたついて」見えましたが、本田がゴール前でゆったりトラップしてそれもトラップしてすぐじゃなくて一呼吸して蹴ってもなおディフェンダーが間に合わなかったのは、中央でゴール前に走り込んだ大久保がディフェンダーをみんな連れて行ったからです。もちろん、大久保は意識的にそうしたのでしょうけど、それでディフェンダーがみんな付いて行って本田がノーマークになったのは、カメルーンのディフェンダーの判断として松井のクロスは普通に行ったら大久保に合うはずだったからだと思うんです。それがふだんよりボールが伸びるから、本田の足元ドンぴしゃになり、しかもディフェンダーはそこに来ると思わなかった、そういうことだったんじゃないかなと。
 基本的には、引いて守ってカウンターという観客にはおもしろくないゲームプランでしたが、しかし、本当にワンチャンスをものにすると、それはそれでスカッとしました。これまでの日本代表には見られなかった快挙ですから。これからもそのワンチャンスをものにできるかはかなり疑問です。特に2戦め以降は各チームともボールの伸びにはなれてくるでしょうしね。
 守備の面では、クロスバーに助けられたひやっとした場面もありましたが、エトーの貢献が大きかったかも。カメルーンのチームの内紛とかで攻撃が機能せず、エトーの見せ場はサイドからのペナルティエリアへの突破のシーンくらいでしたが、そのとき、はっきり後ろからユニフォームをつかんで引っ張っているのにエトーの体勢がまったく崩れない。こういうの、さすがトップの選手と言えますが、あのときエトーが倒れてたら確実にPK。いやぁ、助かりました。あと、ポルトガルの審判陣。どう見ても日本の選手が勝手に倒れてる(シミュレーションとは思いませんけど)のや日本の選手の方がぶつかって行ったのをカメルーンのファールを度々とってくれて。不愉快ではありませんが、カメルーンにはちょっとかわいそう。普通なら地元側のカメルーンに有利にジャッジされそうなものですが、ヨーロッパ人審判にはブブゼラの音が不愉快だったとか、でしょうか。
vsオランダ ● 0−1 :6月19日

 試合会場のダーバンは海沿いの低地で、16日にスイスがこれまで18回戦って1度も勝てなかった世界ランキング2位のスペインに勝つ大金星を挙げた縁起のいい場所です(13日:南ア時間にドイツが、日本が4年前に1−3で負けたオーストラリアを4−0でこてんぱんに叩きのめした場所でもありますが)。日本のサッカーファンには「ダーバンの奇跡」を期待した人も多かったとは思いますが・・・
 最後まで見て一番素直な感想は、ピッチに立っていたのは本当にオランダだったのだろうかということです。慎重に行ったはずの初戦のデンマーク戦ですら片鱗を見せていた華麗なワンタッチのパス回しはまるで影を潜め、中盤でのボールの奪い合い、プレッシングも日本とほぼ互角で、バックパスに逃げる場面も度々。オランダらしさがほとんど見られないゲームでした。もちろん、それは日本の守備、前線を含めた守備がよく機能していたということですが、こういう相手の良さを消すことを信条とする岡ちゃん・ジャパンのゲームは、観客としてはやはりおもしろくはないですね。
 前半は0−0という日本のゲームプランと、おそらくは前半は日本選手を走らせて疲れさせ無理はしないというオランダのゲームプランが一致して0−0で前半が終わった後、最初から狙っていたのかハーフタイムに変更したのかはわかりませんが、後半の最初にギアチェンジしてリードを取りに来たオランダの猛攻の中で強烈なミドルシュートで1点が入ると後はオランダは無理せずにという姿勢に徹し、ゲームが終了したというところです。後半を15分くらいまでしのぎきればまた違ったかもしれませんが、オランダ相手に1失点に抑えたのは大善戦と言えるでしょう。
 取られた1点も、あのミドルシュートはしかたないでしょう。川島が触ってはじいただけでも立派だと思います。むしろ川島の1対1を防いだ2本の飛び出しや、神出鬼没の感のある闘莉王(おっ、さすがATOK、「とぅーりお」で一発変換できました)のクリアなど、守備での見せ場は豊富だったと言えるでしょう。最後は闘莉王のワントップまで見れましたし。
 サッカーファンとしておもしろい試合かと聞かれたら否定せざるをませんが、日本ファンとしてはいいゲームだったと見るべきじゃないでしょうか。

デンマーク ○ 2−1 ● カメルーン
 午前3時30分からなもんで見ずに寝てしまい、結果を見ただけですけど。
 この結果、2試合終わって早くもオランダは決勝トーナメント進出、カメルーンは予選敗退が決定!
 日本は勝ち点3、得失点差0、デンマークは勝ち点3、得失点差−1。
 日本は、25日未明の日本−デンマーク戦で勝てばもちろん、引き分けでも決勝トーナメント進出!
 う〜〜ん、この引き分けでもっていうのが微妙なところですね。引き分け狙いで行ったら終盤で息切れして失点というパターンがありがちですからねぇ。
 25日(日本時間)は後々「ルステンブルクの○○」と呼ばれることになりますが、○○は果たして「歓喜」か「悲劇」か・・・
 会場のロイヤル・バフォケン・スタジアム(今度はまた標高1500m)はこれまで(21日まで)の3試合(イングランド−アメリカ、ニュージーランド−スロバキア、ガーナ−オーストラリア)のすべてが1−1の引き分けという縁起のいい会場ではありますが・・・ 
vsデンマーク ◎ 3−1 :6月25日

 日本決勝トーナメント進出! \(^O^)/
 日本のサッカーファンにとっては満足度の高いゲームでした。
 なんといっても決定力不足に泣き続ける日本代表チームが守備力の高い(ヨーロッパ予選10試合で失点5)デンマークから3点も取ったというのは、快挙というしかありません。
 ゲームとしては、実力に勝るデンマークに、中盤だけでなくサイドやゴール前で簡単にパスをつながれ、特に前半の最初15分間くらいはとても勝てそうにはありませんでしたし、後半になりデンマークの疲れや焦りからロングボール主体の攻撃になりましたが、それでもゴール前で日本のディフェンダーの間をすり抜けたところにパスが通ってフリーで持たれ・打たれるシーンが度々あり、ひやひやしました。
 でも前半にフリーキックから2本決めてリードを奪い、常に日本がリードししかも点差が開いた展開でしたので、安心してみていられました。このフリーキックが、本田の1点目はゴール左隅、遠藤の2点目はゴール右隅にきれいに入りました。1点目は高地でのボールの伸びと変化を狙ったとは思いますが、むしろキーパーが直接蹴り込んでくると予想していなかった感じでしたし、2点目は壁の端を巻いて少しカーブがかかった感じでしたがそれほど曲がった感じではないので壁が1枚足りなかったのかなと思いました。そこからみるとデンマークの守備力もさほどではないと見るべきか、いや本田と遠藤のフリーキックの技術がそれを超えていたと見るべきでしょうか。
 そして後半終了間際の3点目、ゴール間際での本田のディフェンダーをかわす動きと岡崎のキーパーをかわした足捌きが落ち着いていてすばらしい。攻撃で魅せてくれるゲームが少ないだけに、堪能しました。
 守備面では、反省の多いゲームだったと思いますが、結果的には長谷部のプッシング→トマソンのPKの1点に抑えましたし、トマソンのPKの際も含めて川島のスーパーセーブが度々見られて、観客としては満足でしょう。
 前半、遠藤と長友に遅延行為でイエローカードが出て、なんだと思いましたが(だいたい前半12分0−0で遅延行為のイエローカードなんて出す?)、勝てば気にするまでもないでしょう。

 さて、岡ちゃん・ジャパン決勝トーナメント進出で、「目標はベスト4」が少し現実味を・・・
 次は6月29日にパラグアイ戦、それに勝った場合は7月3日にスペイン−ポルトガルの勝者と戦ってこれも勝ったらベスト4・・・(^^;)
vsパラグアイ ● 0−0 PK 3−5 :6月29日
 どちらが勝っても初のベスト8がかかったゲームは、中盤をパラグアイに支配され、ルーズボールも多くはパラグアイに拾われ、守る時間帯が続く中を、何とかしのぎきって、日本初体験のワールドカップ延長戦に入りました。後半途中から運動量の落ちたパラグアイと延長ではほぼ互角の戦いをして延長もスコアレスドローになります。そして・・・当然初体験のワールドカップでのPK戦は、図太さが試される戦いで、日本が涙をのみ、岡ちゃん・ジャパンの2010年ワールドカップはベスト16で終わりました。
 相手の高さとパワーに競り負けなかった闘莉王、中沢のセンターバックの仕事ぶり、何度かペナルティエリアで切り返して前を向かれて1対1になりながら魅せた川島のスーパーセーブと、ゴール前での守備には満足すべきでしょう。それ以前のところで何とかすべき場面があまりにも多かったとは思いますが。
 攻撃陣では、前半、マークされた本田がマークを引きつけファールをもらい、フリーになった大久保、松井がいい動きをしていました。さらに後半からは本田のマークが甘くなりいいシーンも多数ありました。マークを背負い倒されつつ淡々としぶとく走り込む本田の姿に、スルーパスはないものの、どこか中田英寿のイメージを重ねてしまいました。結果的に点は取れなかったものの攻撃陣も少ないチャンスでいい仕事をしていたと思います。
 もう1試合くらい見たいと思える健闘ぶりではあったのですが。
 PK戦で負けた今回は、やはり後世「プレトリアの悲劇」とか呼ばれるのでしょうか。

番外編:日本代表はもう南アにいないけど・・・
 準々決勝 オランダ ○ 2−1 ● ブラジル 、 ドイツ ○ 4−0 ● アルゼンチン
 他の2試合は見ませんでしたけど(午前3時半からということもありましたし、カードとしても・・・)
 本家イタリアが1次リーグ敗退ということもあって、それほど言われてない感じですけど、結局、2010年ワールドカップはイタリア型の堅守速攻の有効性を確認しさらなる隆盛を促進する場になりそうです。サッカーファン(というほど試合見てませんけど)としては大変残念なことに。
 試合を見る前からわかっていたことですが、歴史的にはイタリアとは対照的なサッカーを志向してきたオランダとブラジルも、今年のチームはどちらもイタリアもどきの守備型チーム。オランダは、トータル・フットボール、美しいサッカーと言われた動きは、まれに片鱗を見せる程度ですし、ブラジルに至っては、準々決勝の青いユニフォームはイタリアのアズーリ(青:イタリア代表の象徴)を思い起こさせ、イタリアが戦っているのかと勘違いするほど。コンパクトでないオランダや引いて守るブラジルを誰が見たいと思うでしょうか。
 イタリアもどきでないチームの代表的存在のアルゼンチンとスペインですが、アルゼンチンは、以前からのイタリアと並ぶ堅守速攻の雄ドイツに惨敗。スペインも調子が上がってない様子ですから、私の希望としてはスペインがドイツを撃破してほしいのですが、同じ希望を持って見ていたイングランド−ドイツ戦、アルゼンチン−ドイツ戦と同様望み薄。
 こうなると、2010年ワールドカップの興味はもうクローゼの通算得点王の成否(現在通算14得点、あと1点で1位タイ、2点で単独歴代1位)くらいでしょうか。
 堅守速攻のサッカーも、確かにトップクラスではロビーニョやエジルの速さとか感動的とも言えます。でも、やはり観客としては、カウンターやセットプレイ以外でも、プロの華麗な技での切り崩しの駆け引きや個人技のさえる美しくスリリングな攻撃を見たい。ロッベンがドリブルで切り込んでいっても、2人か3人抜いても結局囲まれてフィニッシュまでいけない姿とか、やはり哀しい。美しさだけでは勝てないとか、日本代表クラスが言うのは仕方ないと思いますが(もっとも日本代表がその言葉を言えるほど美しいサッカーをしていたことがあるのかという問題はありますが)、オランダやブラジルの監督からそういう言葉を聞くのはとても哀しい。見ていてわくわくする、90分があっという間に感じられるようなサッカーは、もう見れなくなるのでしょうか。

 準決勝 オランダ ○ 3−2 ● ウルグアイ 、スペイン ○ 1−0 ● ドイツ
 準決勝は、不調だったスペインが復調してドイツを撃破、私の予想を覆してくれました。オランダ−ウルグアイは結果は予想通りとは言え、振り返れば準決勝2試合はどちらもより堅守速攻タイプが敗れ、相対的にはパスをつなぐ攻撃型と言えるチームが勝ち上がりました。私の個人的な好みとしては、準々決勝段階での憂鬱な予想が一転して楽しくなる展開です。準々決勝で8強のうち4チームが南米ということで南米のワールドカップと言われたのが一転したように、予想を裏切る展開は、ワールドカップの醍醐味と言えるでしょう。
 スペインの決勝点はセットプレイからの身長で見劣りしながら後ろから飛び込んでのヘッドという、ある種小気味のいい得点ではありますが、スペインらしくないとも言えます。スペインはパスをつないで多くのチャンスを作りながらシュートのほとんどが枠を、少しではありますが、外し続けていました。ドイツも守りの戻りの速さ、ディフェンダーの寄せは相変わらず見事でしたが、攻撃陣はミュラーの出場停止で攻撃の幅が狭くなったのと疲れのためか速さがあまり見られません。その意味でドイツ攻撃陣の不調に助けられた面もあります。
 オランダの3点は、すべてゴールのポストに当てるギリギリのコースでした。そうでなければウルグアイのキーパーを抜けなかったという面もありますが、コントロールされているとしたらすごい技術。守備の比重が高くなっているとはいえ、オランダの攻撃力は健在と見ておきましょう。
 オランダ−スペインという決勝のカードは、ブランドとしては、サッカーファンにとっては夢の対戦。オランダが、ワールドカップ決勝で、しかも相手がドイツでもイタリアでもないチームだということで伝統の美しい攻撃型のサッカーに回帰してくれて、スペインの調子が維持されれば、見応えのある決勝戦になるのですが。両チームが疲れて走らなくなった上に決勝戦の重圧で様子見と相手の良さを消しに行くことに徹してしまうと、世紀の凡戦になる可能性もありますが、せっかく実現したオランダ−スペインですから、前向きに見守りたいと思います。

 決勝 スペイン ○ 1−0 ● オランダ
 タコのパウル君予言全勝。って単に国旗がより黄色と赤が多い方にタコが寄っていっただけと思いますが。
 疲れ気味のスペインのボールポゼッションに中盤でのオランダの寄せの速さと、オランダのパスミスなのかスペインのインターセプトなのか微妙なプレイが多く、中盤でのつぶし合いが続き、攻守の切り替えは速くスリリングとも言えるものの決定的なシーンは少ないゲームでした。とにかく飛び込み続けるビリャの姿勢は見事ではありますが、スペインのチャンスはむしろプジョルのヘッドの方がゴールのにおいがする始末。オランダはひたすらロッベンで、1対1をカシーリャスに2度もスーパーセーブされたのが致命的でした。スコアレスドローの90分のあと、さすがにロッベンも疲れ、オランダの中盤の寄せが弱まったところで延長はスペインらしさが戻り、10人になったオランダはしのぎきれず攻め落とされました。
 決勝トーナメントをすべて1−0で勝ち抜いたスペインを攻撃サッカーと呼ぶのははばかられますし、黄金カードらしいゲーム内容とは言いにくいものでしたが、連戦7試合目のサッカーはこういうもので、その中でこのレベルの速さが出せるのはやはり世界のトップクラス、という見方をすべきなのだろうと思います。
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