たぶん週1エッセイ◆
映画「酔いがさめたら、うちに帰ろう。」
ここがポイント
 アルコール依存症の怖さと大変さ、周囲の苦しみを考えさせられる
 点滴を受け排尿バッグを付けてる患者の排尿バッグを持ち上げて「逆流」ってギャグにできるか…
 ふつうのカレーを食べることにこれだけの夢と執念を持つことに関心

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 アルコール中毒の元戦場カメラマンの闘病と家族関係を描いた映画「酔いがさめたら、うちに帰ろう。」を見てきました。
 封切り3週目土曜日、東京で2館だけの上映館の1つテアトル新宿の午前11時からの上映は、5割くらいの入り。観客層は中高年が多数派でした。

 アルコール中毒(アルコール依存症)の元戦場カメラマン塚原安行(浅野忠信)は、酔いつぶれて母(加山美子)の待つ自宅に帰り着くと激しく吐血して倒れた。母は手慣れた様子で救急車を呼び、離婚した元妻の漫画家園田由紀(永作博美)も駆けつけて「大丈夫、まだ死なないよ」と言って救急車を見送る。安行の吐血はもう10回目で、見舞いに訪れた由紀は安行にアル中の治療を勧め、安行も応じるが、抗酒剤による治療中にも結局酒を飲み続けてまた倒れてしまう。母に連れられて強引に精神病院に入院させられた安行は、美人看護師(柊瑠美)の存在や精神科医(高田聖子)のカウンセリングに導かれ、アルコール病棟の個性的な患者たちの人間関係にもまれながらも病棟での生活になじんでゆく。時折訪れる由紀と子どもたちへの思いもあり、闘病の意欲を高めていく安行だったが・・・というお話。

 漫画家西原理恵子の元夫の実話をベースにした作品で、西原役の由紀が描いている絵に西原理恵子のイラストが何度か出てくる上に、安行が入院して点滴を受け排尿バッグをつけているところに子連れで見舞いに来た由紀が子どもたちの前で排尿バッグを手にして「これ何かわかる?お父さんのおしっこ」とか言いながら「逆流」って持ち上げて子どもたちにも面白いって言ってやらせてるところとか、いかにも西原漫画らしいエピソードが登場します。
 基本線は、誰にも同情されない、家族をはじめ周囲の人に深刻な打撃を与え、自身も心身ともに打撃を受けるアルコール中毒の怖さと、そこから立ち直ることの大変さというところにあり、その暗くなりがちな内容を患者と医療スタッフの取り組む様子をユーモラスに描き、支える家族の思いを明るい方向性で描くところで見せている作品です。安行の母と由紀の比較的余裕のある笑顔に救われる作品ですが、同時に現実のアルコール中毒患者の家族がそういう余裕を持てるかというとどうかなぁという思いを持ちます。
 それにしても、ふつうのカレーを食べることにこれだけの夢と執念を感じられるのは、それ自体に感心してしまいます。

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