庶民の弁護士 伊東良徳のサイト

女の子が楽しく読める読書ガイド
エミリーの記憶喪失ワンダーランド (原題:Emily the Strange : the Lost Days)
ここがポイント
 イラストのキャラの意志の強い目が印象的
 たくましくメカに強い少女のキャラが魅力的
 お薦め度:星イメージ星イメージ星イメージお薦め/

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ロブ・リーガー、ジェシカ・グルーナー作
2009年
 最初にキャラクターが作られ、そのキャラクターを使った絵本ができ、日本ではその絵本を宇多田ヒカルが翻訳したことで売れたものが、その後小説化されたという経緯でできた作品です(公式サイトはこちら)。
 そういう点からは、小説はついでみたいな感じもしますが、最初にキャラありきということもあって、エミリーというキャラがなかなか魅力的です。
 原書ではすでに続編 Emily the Strange : Stranger And Stranger 、Dark Times、Piece of Mindなどが出ています(日本語版未刊)。

 ストーリーとしては、田舎町ブラックロックの公園に現れた記憶をなくした13歳の少女エミリーが、度々いたずらなどで警官に罰金の違反切符を切られたりしながら、記憶喪失の謎を追い、自分の祖母の宿敵と戦うというお話です。
 ミステリーですから、ストーリーは詳しく紹介しにくいですし、このコーナーで取り上げる関係ではストーリーはあまり気にする必要もありませんから、ストーリーはこの程度にしておきます。

 イラストのエミリー自身、意志の強そうな目と口が印象的なキャラで、それを反映して小説でもエミリーはとてもたくましい。記憶喪失状態で無一文で公園にいながら怖じ気づくこともなく、すぐにカフェでバイトをしながら、そのカフェの横に段ボールハウスを作って生活し始めます。
 最初にパチンコ(ギャンブルの方じゃなくて)をうっていて警官の違反切符を切られた(17ページ)のをはじめとして、歴史的建造物の写真を無断で撮った罪で37ドルの違反切符(36ページ)、深夜徘徊で68ドルの違反切符(46ページ)、郵便事業執行妨害で52ドルの違反切符(53ページ)、段ボールハウスの「違法駐車」で86ドルの違反切符(75ページ)とか、警察とのトラブルを繰り返すあたり、権力に対してもびびらない強さが見えます。ま、内容的には警察の方が職権濫用で、むしろ作者と作品自身の反権力的な姿勢が見えるというべきでしょうけど。
 パチンコの腕がよく(17ページ、31ページ)、クモを平気で捕まえ(27ページ)、地理の把握にも優れている(38〜41ページ)というのも、細かいところですが、ありがちな女の子キャラを超えています。
 そしてなんといっても、壊れたポラロイドカメラやエスプレッソマシーンを簡単に直してしまうことをはじめとして、話が進むにつれて明らかになるエミリーのメカへの強さは半端じゃありません。
 エミリーは冷静で観察力、洞察力に優れ、大人たちとも渡り合っていきます。
 こういうエミリーのたくましさと能力はとても魅力的です。特にここまでメカに強い少女キャラというのは、かなり珍しいと思います。

 エミリーに加えてエミリーのお友達のモリーは、普通っぽいキャラ設定ですが、独立心が強く好奇心満々の行動的なキャラですし、ブラックロックの創始者エマ・ル・ストランドも故人ですが科学的な知識に強いキャラ設定になっています。

 そういった元気でたくましい女性キャラ、特にエミリーのメカに強いという珍しいキャラ設定をかって、久しぶりに星3つ(お薦め)つけておきます。

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