庶民の弁護士 伊東良徳のサイト

女の子が楽しく読める読書ガイド
精霊の守り人&守り人シリーズ 
ここがポイント
 30歳過ぎの自立した武闘派の主人公バルサに痺れる(怪我しすぎが痛々しいけど)
 王国の物語でありながら、庶民、被差別民、先住民への視線が温かい

 お薦め度:星イメージ星イメージ星イメージお薦め/

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上橋菜穂子作
精霊の守り人  1996年
闇の守り人    1999年
夢の守り人    2000年
 虚空の旅人  2001年
神の守り人    2003年
 蒼路の旅人  2005年
天と地の守り人 第1部 2006年  第2部、第3部 2007年
 守り人シリーズは天と地の守り人3部作で完結だそうです。
 外伝的な短編集として「流れ行く者 守り人短編集」が2008年に出版されました。
 「守り人」のすべて 守り人シリーズ完全ガイドが2011年に出版されています。
 やはり外伝として「炎路を行く者」が2012年に出版されています。 
 30歳過ぎの短槍使いの武人で「女用心棒」のバルサが主人公のファンタジー。新ヨゴ皇国、カンバル王国、ロタ王国などで、支配民族、その王族と底辺の庶民、被差別民、先住民の共存と対立を背景に、先住民・被差別民の神話に残る異世界(ナユグ等)の神秘とパワーが絡んで事件が起こる、異世界ファンタジーというか東洋的神話ファンタジーです。王国のファンタジーの形なので王族の事件を扱っているのですが、庶民、被差別民、先住民の視点が入り、どの話でも被差別民、先住民が大きな役割を果たしています。そのあたりも庶民の弁護士としては共感度大ですね。
 「精霊の守り人」は、「水の守り手」の卵を産み付けられ、卵喰いのラルンガに狙われる12歳の王子チャグムをバルサらが救う話。新ヨゴ皇国の支配民の伝説の英雄が倒した魔物が、先住民の神話に残る異世界と天の恵みにつながっています。チャグムを救うのも外国人のバルサと先住民の呪術師タンダとトロガイ。
 「闇の守り人」は、バルサが、故郷のカンバル王国に戻り、前の王の陰謀に巻き込まれて裏切り者とされている養父の名誉回復を図るうち、カンバル王国を支える秘密と新たな陰謀に巻き込まれていく話。カンバルの支配民の伝説と、「山の王」、被差別民の伝説、大いなる自然の力ともいうべきものがテーマとなってきます。
 「夢の守り人」は、新ヨゴ皇国で夢の世界にとらわれた一の妃、皇太子チャグム、タンダの姪らを救おうとしたタンダが、支配民の影響を受けた異世界の花番の手で「花の守り人」にされて操られ、トロガイ、バルサらが夢にとらわれた者たちとタンダを救う話。
 「神の守り人」は、ロタ王国での支配民と被差別民の葛藤を背景に、異世界からもたらされる豊穣とともに現れる「おそろしき神」をめぐり、様々な人の思惑から「おそろしき神」を招く者にされた12歳の少女アスラを、争奪を繰り広げる者たちと「おそろしき神」からバルサとタンダが救う話。
 なお、作者は、チャグムが気に入ったようで、第3作にも登場させた上で、外伝としてチャグムが主人公の「虚空の旅人」「蒼路の旅人」の旅人シリーズが書かれ(旅人シリーズでは、バルサはチャグムの想い出の中でしか登場しませんが、「虚空の旅人」では王室を陰で操る/支える知恵のあるしたたかな王女たちや海を漂う民の少女など、しっかり者の女性たちがかなり登場しています。こちらも女の子が楽しく読めるという点でもお薦めかも。「蒼路の旅人」の方は海賊船の頭セナくらいで、ずいぶん男性中心の展開ですが)、そのチャグムの物語にバルサの物語を合流させて「天と地の守り人」に至ります(ストーリーとしては旅人シリーズの延長として「天と地の守り人」が書かれています)。
 「天と地の守り人」は、南の大陸にあるタルシュ帝国が新ヨゴ皇国、ロタ王国への侵略戦争を計画し、(旅人シリーズで)それを察知したチャグムがタルシュ帝国の枝国となったサンガル王国の船から単身海に飛び込んでロタ王国に同盟を求め、それをめぐって新ヨゴ皇国、タルシュ帝国、ロタ王国での様々な勢力が様々な動きをし、チャグムの身を案じるバルサがロタ王国に潜入してチャグムの後を追い、チャグムに再会(第1部はここまで)、ロタ王国とカンバル王国の同盟を追求するチャグムがバルサと共にカンバル王国に向かい、タルシュの刺客やカンバル王国幹部の裏切りにあって危機に陥りつつ、カンバル王を説得してロタ王国との同盟を結ばせ(第2部はここまで)、バルサは瀕死の重傷を負ったタンダを探し、チャグムはロタ−カンバル混成軍3万を率いてタルシュ軍と戦い、洪水で沈んだ都に残って死んだ父王に変わって新ヨゴ皇国を束ねタルシュ側との停戦・撤退を実現し平和を導く話。
 なお、精霊の守り人で登場する以前のバルサの少女時代や少年期のタンダとの関係は、「流れ行く者 守り人短編集」と「十五の我には」(「炎路を行く者」所収)に書かれています。天と地の旅人の後のバルサとタンダの様子については、わずか8ページの短編ではありますが「春の光」(「守り人」のすべて:守り人シリーズ完全ガイド所収)に書かれています。また、「蒼路の旅人」でチャグムを捕らえるタルシュの密偵ヒュウゴの少年時代は「炎路の旅人」(「炎路を行く者」所収)で書かれています。
 バルサは30歳過ぎ(「精霊の守り人」では30歳、その後、少しずつ年をとっています)の女用心棒。カンバル王国の王家のお抱え医師の娘でしたが、王家の陰謀に巻き込まれて命を狙われ、父の親友だった王家の武術指南役ジグロに連れられて逃亡しながら武術をたたき込まれました。そのため、ものすごく強いし、けがを恐れません。毎回、生傷が絶えず、幼なじみの先住民の呪術師タンダらに治療してもらいながら驚異の快復力を見せて、また新たな闘いに挑んでいきます(この毎回ぼろぼろになる様子は、私の年頃だと「あしたのジョー」の矢吹丈と重ねて見てしまうんですが)。でも、「天と地の守り人」ではバルサも30代半ばとなり、このごろ思うように体が動かないことがある、確実に身体は年をとっている(第1部86頁)とか傷の治りも遅くなってきています(第2部では次から次に大けがをして治る暇もなく次の冒険に臨んでいて、逆に傷の治りが遅いとかいう表現は出てきませんが、かなり痛々しい。第3部ではけがをしなくて、ちょっとホッとします)。
 それはともかく、このバルサがものすごくかっこいい。何といってもこのシリーズの魅力はここです。バルサが30歳過ぎという設定も、私としては○(マル)です。女の子が読んで感情移入するという観点でいうと同世代の方がいいんですが、大人の、それも若くない女性のかっこいい主人公のお話があった方が、女の子が将来の夢を見ることができると思います。そういうファンタジーってなかなかないですもんね。
 タンダはお人好しで料理もできる「癒し系」の年下男で、バルサを慕っています。バルサもタンダのことを思っているのですが、バルサは、初期は自ら殺したり傷つけた者への負い目(やっぱり「あしたのジョー」か・・・)、後には自分の中の闘いと血を求める業のようなものが気になり、また流れ者の気質で定住できず、2人の愛はなかなか実りません。こういう愛のあり方もあるという示唆でもあろうかと思いますが。でもめちゃくちゃ強い流れ者の女と癒し系の待つ男ってカップル、斬新でいいですね。(天と地の守り人では、第3部の後半でようやく愛が実るようですが、タンダがかなり瀕死の重傷で身も心も傷ついて、読んでいてちょっと切ない。あっ、それは私が男だからか・・・)
 バルサ以外にも、トロガイ師(老呪術師)、ユーカ(バルサの叔母さん。「闇の守り人」)、ジナ(「闇の守り人」)、マーサ・サマド(「神の守り人」。「天と地の守り人」でも再登場)、アスラ、シハナ、イアヌ(「神の守り人」、シハナ、イアヌは悪役ですけどね。アスラ、シハナは「天と地の守り人」で再登場)、アハル(「天と地の守り人」で登場する川の民カシャルの頭領)、アズノ(「流れ行く者」で登場する老賭事師)など、しっかり者の女性が登場します。
 一般の社会での女性差別を前提に、差別的な表現が時々出てくるのがちょっと気になります(たかが女とか、女のくせにとか、女は正しいことがわからないとか、わざわざ書く必要があるのかなあと思います)が、バルサたちの活躍とりりしさで消えていると見ていいでしょう。
 なお、2007年4月からTVアニメにもなり、もうその放映も終わっているようですが、TV見ないたちなもんで、全然見ていませんので、論評しません。
 NHKが2016年春から3年がかりの大河ファンタジーとして実写ドラマ化するそうです(2016年3月19日から「シーズン1」4回分が放映されたようです)。バルサ役は綾瀬はるか。イメージと違う感じはしますが、「ICHI」の演技・役作りからはちょっと期待したい。でも私はテレビドラマ見ないもんで…    

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