庶民の弁護士 伊東良徳のサイト

    ◆行政裁判の話
  原子力施設が運転するまでの行政処分
    (裁判の形と裁判で審理の対象となる範囲)

  原子力発電所の場合

 放射線による災害を防止する観点での手続の主要なものだけでも次の通りです。これまで制度が何度か変わっています。以下の説明は原子力規制庁・原子力規制委員会発足前のものです。
 最初に経済産業大臣の「原子炉設置許可」(原子炉等規制法第23条)を受けます。
 原子炉設置許可申請が出るとまず担当行政庁(原子力安全・保安院)が安全審査を行います。これを行政庁審査または1次審査といいます。1次審査が終わると保安院の安全審査書が出され、これについて原子力安全委員会の審査(2次審査)が行われます。原子力安全委員会の安全審査が行われるのはこの原子炉設置許可の段階だけです。原子力安全委員会は、委員が5人だけの委員会ですので、実際の安全審査は原子炉安全専門委員会(炉安審)の部会で行われ、それを炉安審の全体会、原子力安全委員会と順次承認していきます。原子力安全委員会の安全審査が終わると、それを「尊重して」原子炉設置許可がなされます。
 この原子炉設置許可処分の対象は、裁判所の判例上、立地と「基本設計」ないし「基本的設計方針」であるとされています。
 原子炉設置許可が出たら、次は経済産業大臣の「工事計画認可」を受けます(電気事業法第47条)。
 工事計画認可では「詳細設計」が審査されるとされています。
 その後、建設の過程で、燃料体検査(電気事業法第51条)、溶接安全管理検査(電気事業法第52条)、使用前検査(電気事業法第49条)を受け、保安規定認可(原子炉等規制法第37条)を受けます。
 原子力発電所についての行政訴訟は、これまですべて原子炉設置許可処分(またはその変更処分)について行われてきました。原子炉設置許可処分が一連の手続で最初のものである上に、唯一専門家である原子力安全委員会の安全審査がなされる、安全確保のための重要な処分だからです。これに対して国側は、裁判上、原子炉設置許可の審査対象は「基本設計」ないし「基本的設計方針」に限られ、他の処分の対象となる事項は原子炉設置許可処分の取消訴訟では審理の対象とならないと主張しています。残念なことに、裁判所もそれを受け入れてしまっています。

  核燃料サイクル施設の場合(例えば再処理工場の場合)

 最初に経済産業大臣の「事業指定」を受けます(再処理工場ではなくウラン濃縮工場や核燃料加工工場、高レベル放射性廃棄物貯蔵施設、低レベル放射性廃棄物処分場の場合「事業許可」です)。
 事業指定申請が出るとまず担当行政庁(原子力安全・保安院)の1次審査があり、保安院の安全審査書について原子力安全委員会の2次審査が行われます。やはり原子力安全委員会の安全審査は事業指定の段階だけです。実際の安全審査は核燃料安全専門審査会(燃安審)の部会で行われ、燃安審の全体会、原子力安全委員会で承認して行きます。
 事業指定が出たら、「詳細設計」については経済産業大臣の「設計及び工事方法の認可」を受けます。
 その後、建設の過程で溶接方法認可、溶接検査、使用前検査、保安規定認可を受けます。
 核燃料サイクル施設についても、行政訴訟は、冒頭の事業許可・事業指定処分について行われ、原子力発電所の場合と同じ議論がなされています。

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