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  ◆過払い金返還請求の話

 不動産担保取引

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 意外に過払いのことがある不動産担保取引 GO
 不動産担保取引と無担保取引の一連性:最高裁2012年9月11日判決 GO
 最高裁2012年9月11日判決後の対応 GO
 調査料と事務取扱手数料 GO
 
対応は慎重に GO

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  意外に過払いのことがある不動産担保取引

 消費者金融は、担保を取らずにお金を貸すのが原則ですが、不動産を担保に入れて通常の消費者金融の金利よりも安い金利でお金を貸すことがあります。自宅などの不動産に抵当権(借金を返済しない場合には裁判なしで不動産を差し押さえて競売できる権利)をつけて数百万円単位のお金を貸すわけです。その場合、利息制限法の制限利率以下の場合が多い(不動産担保を取りながら利息制限法の制限利率を超えた金利で貸しているケースもあり、呆れることもあります)のですが、実は、それでも過払いになるケースもあります。登記簿謄本とか契約書に書かれた不動産担保ローンの約定利率が年15%以下だと、利息制限法に引き直しても減額できないとすぐ判断してしまいがちです。私も債務整理の事件をやり始めた頃はそう思っていました。
 しかし、約定利率が年15%(元本が100万円以上の時の利息制限法制限利率)以下の場合でも、利息は残元本×利率×期間で計算するのですから、残元本が貸金業者が示す約定の計算の場合よりも減れば、再計算(約定利率が利息制限法の制限利率より低いときは、もちろん、約定利率で計算します)で利息が減って各回の返済の時に元本の返済に充てられる額が増えて元本がさらに減っていくことになります。そうなると、長期間返済していると元本が意外に減って、場合によったら完済になって過払いということもありえます。
 どういうときに、そういうことが起きるでしょうか。
 消費者金融から不動産を担保に借金をする場合、いきなり不動産担保で数百万円を借りるのではなく、最初は無担保の普通の消費者金融の借り方で借り始めて、その後不動産担保ローンを勧められて切り替えるケースがけっこうあります。むしろ、それが普通です。その場合、金利の高い無担保ローンを不動産担保ローンで借りたお金で完済して切り替えるわけです。
 この完済した無担保ローンは(高い金利で完済したわけですから)当然過払いです。この無担保ローンと不動産担保ローンを一連で計算できれば、裁判所の言い回しでいえば、無担保ローンの過払い金を不動産担保ローンの借入金に充当できれば、不動産担保ローンの借入金(不動産担保ローンの当初元本)は、その分だけ減ることになります。

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  不動産担保取引と無担保取引の一連性:最高裁2012年9月11日判決

 無担保ローンから不動産担保ローンに切り替えるときは、たいていは無担保ローンの残額を不動産担保ローンで借りたお金で同じ日に全額返しています(と言うより貸金業者は差額しか渡してくれない)。この切替は、実質的には、過去の無担保ローンの借金の清算と追加借入が目的です。そういう事情から、この切替自体が無担保ローンの取引を不動産担保ローンの借入金で清算することを予定している以上、もし無担保ローンの取引が過払いであった場合にはやはり不動産担保ローンの借入金で清算するのが当事者の意思に合致すると考えるべきです。裁判所の言い回しでいえば、無担保ローンから不動産担保ローンへの切替には無担保ローンの過払い金を不動産担保ローンの借入金に充当するという「過払い金充当合意」が含まれていると解するのが相当と考えられます。
 私自身は、これまで無担保ローンから不動産担保ローンへの切替の事案ではすべて、この理屈で一連計算を前提とする金額で和解するか一連計算の判決をもらってきました。

 しかし、最高裁(第三小法廷)は、2012年9月11日、CFJが無担保ローンと不動産担保ローンの一連計算を認めた判決に対して上告受理申立した案件で、無担保ローンから不動産担保ローンへの切替について、特段の事情がない限り、無担保ローンの過払い金は不動産担保ローンの借入金に充当されない(一連計算しない)という判断をしました。
 この最高裁判決は、無担保ローンは一定の限度額の範囲内で繰り返し借り入れることを予定しているのに対し、不動産担保ローンは通常の場合最初に一定額を借り入れてあとは専ら返済するものであり、返済のあり方を含む契約の態様が大幅に違うということを理由にしています。
 私は、契約の形態が違うにしても、不動産担保ローンへの切替は、切替の合意自体に無担保ローンの取引を不動産担保ローンの借入金で清算するという内容を明確に含んでいることから、最高裁が近年の一連の判決で重視している過払い金充当合意を認定しやすいと思っています。その意味で、最高裁2012年9月11日第三小法廷判決は、結果として不当というだけでなく、過払い金充当合意の理論としての一貫性からも疑問があるものと、私は思います(もう少しいうと、最高裁は、過払い金充当合意を、現実の当事者の意思から完全に切り離して2つの取引・2つの基本契約の外形的事実から一定の場合に合意があったとみなすことにこだわり、その外形的事実のみを見ることで一貫させようとしているように見受けられます。しかし、本来、充当合意は、当事者の意思の解釈ですから、当事者の意思の中に充当合意に当たるものが含まれていれば外形的事実と関係なく認められるはずです。本来の意味での合意が現実にあったと考えにくいケースを救うために外形的事実を重視するあまり、本来の意味での合意が含まれると考えられる事案で合意を認めないというのでは、本末転倒だと思います)。
 最高裁2012年9月11日第三小法廷判決では、田原裁判官の補足意見で、不動産担保ローンも追加借入を予定している場合や同じ貸金業者に複数の無担保ローンがあってそれを一本化するために不動産担保ローンに切り替えた場合について、無担保ローンと不動産担保ローンの一連計算の認める余地を示しています。(多数の貸金業者への無担保ローンの借金を一本化するための不動産担保ローンへの切替(いわゆるおまとめローン)については、一連計算を認めないと、明示されています)

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  最高裁2012年9月11日判決後の対応

 さて、最高裁2012年9月11日第三小法廷判決以後は、無担保ローンから不動産担保ローンへの切替の事案で過払いとなることはないでしょうか?
 もちろん、不動産担保ローンでも約定利率が利息制限法の制限利率より高かった場合は利息制限法に引き直せば過払いとなる可能性がありますし、最高裁2012年9月11日第三小法廷判決の補足意見で一連計算の余地があると示唆されている不動産担保ローンが多数回の借入を予定している場合や同じ貸金業者の複数の無担保ローンを一本化するために不動産担保ローンへの切替がなされた場合も、一連計算が認められて過払いとなる可能性があります。
 しかし、それだけではなく、無担保ローンの過払い金の充当が認められなくても、不動産担保ローンの借入金のうち一部は、不動産担保ローンの借入金から差し引くことができると考えられます。ちょっと技術的な話になりますが、借金が残っているときに追加借入をするために契約の切替をする場合、法律論としては、名目上の借入金のうち現実に借主に渡された金額(追加借入額)については「消費貸借」、それまでの借金に充てられた金額(借主に渡されなかった金額)については「準消費貸借」(昔の貸付金の残額を今の借金として確認する契約)で、消費貸借と準消費貸借の混合契約が成立すると考えられています。そしてこの「準消費貸借」部分は、裁判所で問題になるときは法的に正しい額でなければなりませんから、それ以前の借金を利息制限法に引き直した額になります。そうすると、無担保ローンから不動産担保ローンへの切替の場合、無担保ローンが切替直前時点で利息制限法に引き直して過払いならば、この「準消費貸借」部分の残元本は存在しないことになります。その結果、不動産担保ローンの元本はそれだけ減ることになります。無担保ローンが利息制限法に引き直しても過払いでない場合、その利息制限法引き直しで減った額だけ、「準消費貸借」部分が減りますから、やはりその分だけ不動産担保ローンの元本が減ることになります。
 無担保ローンの過払い金が不動産担保ローンの借入金に充当できると考える場合よりは、不動産担保ローンの元本の減り方が小さいのですが、それでも無担保ローンから不動産担保ローンへの切替の場合、やはりいくらかは不動産担保ローンの元本が減ることになるのです。従って、最高裁2012年9月11日第三小法廷判決後も、それ以前より過払いとなる可能性は小さくはなりましたが、依然として、無担保ローンから不動産担保ローンへの切替の場合、長期間返済を続けているケースでは、過払いとなる可能性はあります(最高裁がこの考え方をも否定する可能性も、ないとは言えませんが)。

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  調査料と事務取扱手数料

 ここまで説明してきた不動産担保取引以前に無担保取引があった場合の他に、約定利率が利息制限法の制限利率以下でも過払いとなり得る原因として、「調査料」と「事務取扱手数料」の問題があります。
 不動産担保取引の場合、契約の際に、様々な名目で約束した貸金から手数料の類が差し引かれます。契約書に貼る印紙代、抵当権設定のための登録免許税や司法書士の費用、担保不動産に建物が入る場合の火災保険料などに加えて、「調査料」や「事務取扱手数料」の名目で数万円とか十数万円の金額が差し引かれることが多いです。これらの費用のうち、契約締結費用と弁済費用以外は、「みなし利息」と呼ばれ、利息制限法引き直しをするときには利息として支払ったものと見なして計算することになります。貸金業者が契約締結費用や弁済費用だと主張した場合でも、それが契約締結や弁済のための費用であること及び貸金業者が受領した額を実際にそのために支出したことは、貸金業者の側で立証しなければなりません。「調査料」や「事務取扱手数料」名目で差し引いたものは、みなし利息扱いできると思ってまず間違いありません。
 不動産担保取引の契約書をよく見ると、約定利率が利息制限法の制限利率より低いのに、その後ろに「実質利率」という記載があってこれが利息制限法の制限利率を少し超えていることがよくあります。これは、貸金業者の側でみなし利息を考慮して計算した利率を記載しているためと考えられます。
 そういうことから、不動産担保取引の前に無担保取引がない場合や、あっても一連計算できない場合でも、過払いとなる場合もあります(ここの判断はちょっと技術的な問題もあって簡単ではありませんけど)。

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  対応は慎重に

 不動産担保取引の場合、もし負けると自宅等の不動産を競売されてしまうリスクがあり、深刻な結果になります。その意味で私も、事前に本人請求で取引履歴を請求してもらい(今では個人情報保護法の規定もあり、貸金業者は本人からの取引履歴請求を拒否できませんし、取引履歴請求時にその理由をいう必要もありません)、契約書等も見せてもらって勝てるという確信を持ってから受任通知を出すようにしています。
 慣れない人が不動産担保切替のケースで長年放置したあげくに利息制限法引き直し計算を間違って支払の和解をしようとして、おかしいと思った親族が2010年の秋になって私のところに相談に来て2011年夏に最終的に過払いで取り戻したこともありました。過払い金請求がこれだけポピュラーになっても、というかポピュラーになって慣れない人が手を出すようになったからというべきかもしれませんが、驚きました。
 最高裁2012年9月11日第三小法廷判決が出て、無担保ローンから不動産担保ローンへの切替の事案の見極めはさらに難しくなりました。そういうことを考えると、本当に慎重に対処すべきだと思います。   

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