庶民の弁護士 伊東良徳のサイト

  ◆過払い金返還請求の話

 取引の分断・一連性:1回払いキャッシングサービス

 取引の一連性/分断問題の中で、信販会社(クレジットカード会社)に対する過払い金請求に際して、近年ホットな論点として、1回払いキャッシングサービスが一連計算できるかという問題があります。

  1回払いキャッシングサービスって何?

 1回払いキャッシングサービスは、限度枠(20万円とか30万円が多い)の範囲で借り入れた金額を翌月か翌々月の引き落とし日に全額一括払いで返済するもので、マンスリークリア方式とも呼ばれています。
 過払い金請求の実務上は、特に銀行系のクレジットカードでは、数十万円の枠で借り入れて少しずつ返済する「ローン」は昔から低金利で利息制限法の範囲内のことも多かったのに対して、キャッシングサービスは利息制限法を超えた高金利の場合が多かったので、キャッシングサービス部分を捉えて過払い金請求をしていて、その頃は何の問題もなく過払い金を回収していました。

近年の信販会社の主張

 しかし、近年、ニコスやクレディセゾンなどが、裁判で1回払いキャッシングサービスは一連計算できず、個別に計算すべきであり、その結果、返済後10年を経過したものは時効消滅しているという主張を、頑強にしてくるようになりました。
 基本契約に基づく貸し借りについて過払い金をその後の借入金に充当できるとして一連計算を認めた最高裁2007年6月7日第一小法廷判決は、返済が個別の貸付ではなく全体に対して行われる場合に一連計算を認めているのだから、個別貸付に対して返済している1回払いキャッシングサービスは一連計算できないというのです。

 最高裁2007年6月7日第一小法廷判決は、対象となるカード(オリコカード、アメニティカード)取引が借主が1回払いを選択できるカードであることを判示した上で一連計算を認めているのですから、信販会社側の主張は間違っていると私は考えていますし、裁判でも主張しています。しかし、信販会社側の主張が認められて1回払いキャッシングサービス(マンスリークリア方式)は一連計算できないという下級審判決も多く出されています。

「マンスリークリア」の実態

 マンスリークリア方式と言われると、全額返してから次の借入をするように思わされますが、実態は違います。
 例えば限度額20万円、毎月10日締め、翌月5日引き落としの場合、2020年3月末に20万円借りれば、2020年5月7日(引き落とし日が休日の場合次の平日になるので)に預金口座から20万円引き落とされますが、その引き落とし前の(つまり借入残高が20万円残ったままの)2020年4月11日から5月10日までの間にさらに限度額内の20万円を借り入れることができるのです。
 そうすると何が起きるかというと、3月末に借りた20万円を返せない人が、翌月に20万円を借り入れてそれで3月末借入分を「一括全額返済」したことにできるのです。これは一括払いと言いながら、実態は20万円の借入をしたままでただ利息を払っているだけです。消費者金融から限度額いっぱい借り入れて利息だけ返している場合と実態はほとんど同じです。
 もちろん、1回払いキャッシングサービスを利用している人がみんなそういう状態というわけではなく、時々利用して本当にその都度全額返している人もいるでしょうし、返済のための借入を繰り返している人でも最初から最後までその状態ということもないでしょう。しかし、1回払いキャッシングサービスも性質上通常の借入とまったく違うというわけではありません。

取引の実態に着目して一連計算を認める判決も

 借入の実態を考慮して、1回払いキャッシングサービスについても一連計算を認める判決もあります。
 私がクレディセゾンとこの論点で激しく争った事件で、東京地裁2020年3月27日判決は、20年余の長期にわたり借入毎に与信審査を受けることなく、借入毎に貸付方法や貸付条件が定められることなく、利用限度額の範囲内で利用規約に従って1回払いキャッシングサービスを利用し続け、約定残高のある状態が長期にわたって継続し(たとえば1999年9月18日の借入後初めて借入残高が0になるのは2008年10月6日)、返済資金のための追加借入とみられる取引が多々あることから、「本件キャッシング取引は、1個の連続した貸付取引であると評価されるべきである」として一連計算を認め、その間に1年程度(366日が1回と396日が1回)の空白期間があっても空白期間前に長期間取引が継続しており契約書の返還もカードの失効もない(クレジットカードの場合それが通常)ことから分断されないとしています。
 1回払いキャッシングサービスに関しては、現在、熾烈な闘いがなされており、情勢は混沌としていますが、きちんと対応すれば、十分に闘えると私は思っています。    

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