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  最近の解雇・雇い止め事件解決結果

 私の労働事件についての活動報告と、一般の方に労働事件の解決のイメージを持ってもらうために、労働事件で代表的なというか、労働者にとって最も切実な事件で、同時に私が最も得意とする解雇・雇い止め事件で、私が担当して2015年以降に終了した事件の結果を紹介します。

 判決に至った事件は、解雇・雇い止めの有効・無効が判断されたものを全件紹介します。勝訴・敗訴は、解雇・雇い止めが無効と判断されたものは勝訴、有効と判断されたものは敗訴と評価します。
 和解した事件は、口外禁止条項がついているものが相当数あるため、事案の内容には触れず、地位確認請求(復職請求)した事件の解決金の水準(月例給与の総支給額の何か月分かで評価。賞与は含みません)のみ一覧表で示します。残業代請求も合わせて行ったものは除外しています(解決金が残業代も合わせた金額になるので、解雇・雇い止めに関する部分がいくらか区別できず、合わせた金額で評価すると水増しになってしまうからです)。なお復職を請求せず損害賠償(慰謝料等)を請求した場合は、解決金水準は地位確認請求をした事件と比べて相当低くなります。

 2015年以降の4年あまりで勝訴(解雇無効)判決を確定させたのが7人で、4人が現実に復職しました。
 地位確認請求訴訟の勝訴判決は「労働者として権利を有する地位」を確認するだけで、就労する権利を認める(復職そのものを命じる)ものではないというのが裁判所のスタンスです。したがって、勝訴判決を得ても使用者が復職を拒否すれば現実の復職はできず、ただ賃金をもらい続けることができるということにとどまる、というのが、私たち弁護士がする説明になります。私の経験では、現実にそうなったケースもありますが、勝訴判決が確定すると、裁判中は絶対に復職など認めないと言っていた使用者でも復職させることはけっこうあります(4年あまりで4人復職させたというのは、それでも少ないと思う方もいるかも知れませんが、業界的にはふつうに想定できるより復職は可能なものなんだという数字だと思います)。
 もっとも、勝訴判決を得ても、使用者が倒産・廃業してしまえば、復職もできませんし、賃金の支払を受けることもできません。それは民事訴訟制度の限界でもあります。また、勝訴判決後に、別の理由を付けて改めて解雇されると(そこまでやる悪辣な使用者が稀ですが)改めてその解雇について訴訟提起することになります。労働者の側で、勝訴判決を得ても、考えが変わり、その後に合意退職・金銭解決の和解をすることもあります。
 他方、私が担当してもすべての事件で勝訴できるわけではなく、敗訴した事件もあります。
 和解した事件のうち相当数の事件で賃金2年分前後の解決金を得ています。私は、勝ち筋(判決なら労働者が勝訴=解雇無効・雇い止め無効)の事案では、少なくとも賃金1年分、基本的には2年分程度の解決金は取ってしかるべきだと考えています。もちろん和解するかどうかを最終的に決めるのは当事者(労働者本人と使用者)ですから、より少ない解決金で十分だと考えている依頼者に無理強いはしませんが。労働事件に強いなどの宣伝をしている弁護士のサイトで解決例として賃金数か月分程度の解決金を得た事例を、有利な条件で解決したなどと紹介している例をいくつも見ますが、私には驚きです。私の経験上は、賃金1年分未満の解決金での和解は(労働審判では、解雇無効の心証でも解決金は賃金6か月分程度が原則と考えている裁判官が相当数いますので、労働審判の場合は別として)、裁判官から負け筋の心証を示されるなどしてしかたなくするもので(じっくり時間をかければ勝てそうな事件で、依頼者が早期解決を強く希望するためやむを得ずということもありますが)、決して誇らしげに語る話ではないと思っています。
 負け筋の事件でどの水準で和解できるかは、負ける可能性の程度、使用者側の経営者と弁護士の考え方によりさまざまです。判決なら勝てるのだから解決金など払う必要はないと、和解を拒否される場合やほんの形だけの解決金しか払わないと言われることもあります(私だって、勝てると踏んだらほとんど妥協しませんから、そういう態度をとること自体はしかたないと思いますが)。他方で、早期解決のため、訴訟を抱えていること(それを知られること)自体の負担などの事情で労働者が負け筋の場合でもそれなりの解決金が支払われることもあります。そうは言っても、やはり負け筋の場合はそう大きな金額の解決金は期待できないのがふつうです。

 判決での勝訴はもちろん、和解でもよい条件で和解するためには、まず早期の主張立証(基本的に書証)で裁判官に解雇・雇い止めが無効である(判決なら労働者側勝訴)という心証を持ってもらう必要があります。これには、事案の性質・内容が大きく影響しますが、それとともに弁護士の腕の見せどころでもあります。よい条件で和解するためには、その上で相手方(の弁護士)にも判決なら労働者側が勝訴することを認識してもらうこと(裁判官が労働者側勝訴の心証を持つに至った場合、ふつうは使用者側の弁護士もそれを悟りますが、そうでない弁護士も時々いるので・・・)、労働者本人の復職への意志の強さ、使用者側でその労働者を現実に復職させたくない事情と程度、経営者の性格と資金力などが関係し、労働者側の弁護士がその状況の下ではっきりとした見通しを持って、諸要素(手持ちカード)を考慮しながら交渉に臨むことが重要です。和解の条件は、それらの事情によって様々に決まり、必ずしも「相場」があるわけではありません。
判決事案
【勝訴判決確定】
○マーケティング会社従業員:能力不足・不正行為等を理由に普通解雇
 1審勝訴(東京地裁2018年9月27日判決)
 2審勝訴(東京高裁2019年3月28日判決)
 会社側が上告・上告受理申立てをしたが取り下げて確定
 勝訴判決確定に伴い復職
○社会福祉法人職員:社内での器物損壊と虚偽報告を理由に諭旨解雇処分(朝日新聞厚生文化事業団事件)
 1審勝訴(東京地裁2017年3月31日判決)
 2審勝訴(東京高裁2017年9月13日判決)
 上告審勝訴(最高裁2018年3月15日第一小法廷決定)上告不受理
 勝訴判決確定に伴い復職
○社会福祉法人職員:虚偽報告を理由に普通解雇(朝日新聞厚生文化事業団事件)
 1審勝訴(東京地裁2017年3月31日判決)
 2審勝訴(東京高裁2017年9月13日判決)
 上告審勝訴(最高裁2018年3月15日第一小法廷決定)上告不受理
 勝訴判決確定に伴い復職
○通信会社従業員:児童ポルノ提供(刑事処分は罰金)を理由に懲戒解雇
 1審勝訴(東京地裁2015年3月6日判決)
 2審勝訴(東京高裁2015年7月23日判決)→上告なく確定
 勝訴判決確定に伴い復職
○NPO法人職員:上司への暴言、勤務態度不良を理由に普通解雇
 1審勝訴(横浜地裁2016年3月24日判決)
 2審勝訴(東京高裁2016年8月8日判決)→上告なく確定
 確定後も使用者が復職を拒否し続けたため現実の復職はできなかったが、使用者から継続して毎月賃金を受領
○建設会社従業員兼取締役:取締役解任を理由に従業員資格否認
 1審勝訴(東京地裁2015年12月17日判決)→上訴権放棄で確定
 勝訴後すぐに2年前の暴力事件を理由に懲戒解雇されたため、さらに地位確認請求訴訟を提起し、その訴訟で和解
○運送会社従業員:暴言等を理由に普通解雇
 1審勝訴(千葉地裁2015年8月27日判決)→控訴なく確定
 経営者が廃業したため復職できず
【1審勝訴後控訴審で和解】
○公益団体職員:欠勤連続30日超を理由に普通解雇
 1審勝訴(東京地裁2018年9月26日判決) 
 控訴審で和解
【1審敗訴後控訴審で和解】
●社会福祉法人職員:業務態度不良・協調性不足を理由に普通解雇
 1審敗訴(東京地裁2019年3月7日判決)
 控訴審で和解
●各種学校非常勤講師:雇い止め
 1審敗訴(千葉地裁松戸支部2015年3月13日判決)
 控訴審で和解
【敗訴判決確定】
●飲食店従業員:大麻所持(刑事処分は執行猶予付き懲役刑)を理由に懲戒解雇
 1審敗訴(横浜地裁2019年1月31日判決)
 2審敗訴(東京高裁2019年7月24日判決)→上告せず確定
●公益団体職員:定年後再雇用の雇い止め(1審別の事務所の弁護士が担当して敗訴、控訴審から受任)
 2審敗訴(東京高裁2019年1月16日判決)
 上告審敗訴(最高裁2019年6月11日第三小法廷決定)上告棄却・不受理
●機械メーカー従業員:勤務態度不良等を理由に普通解雇
 1審敗訴(東京地裁立川支部2018年3月28日判決)→控訴せず確定
●通信会社従業員:手当不正受給を理由に懲戒解雇(1審・2審別の事務所の弁護士が担当して敗訴、最高裁段階で受任)
 上告審敗訴(最高裁2017年7月25日第三小法廷決定)上告棄却・不受理

和解事案
解決金額一覧表
 解決金額(月分)   交 渉  労働審判   本 訴  
 0か月分超〜3か月分まで   2  
 3か月分超〜6か月分まで   2  
 6か月分超〜9か月分まで 1   2
 9か月分超〜12か月分まで   1 2
 12か月分超〜18か月分まで   1 1
 18か月分超〜24か月分まで 1   4
 24か月分超〜30か月分まで 1   1
 30か月分超〜36か月分まで     2
 36か月分超〜42か月分まで      
 42か月分超〜48か月分まで      
 48か月分超〜54か月分まで      
 54か月分超〜60か月分まで      1
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