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 裁判所の呼出を無視すると

ここがポイント
 裁判所から「訴状」が送られてきた場合、答弁書を出さずに期日に欠席すると原告の言い分通りの内容で「欠席判決」をされる可能性が高い
 裁判所から「支払督促」が送られてきた場合、異議を出さないと「仮執行宣言付き支払督促」が出されそれで強制執行される可能性がある
 裁判所から書類が来たときは、放置しないで、まずは弁護士に相談した方がいい

Tweet  はてなブックマークに追加 裁判所の呼出を無視すると(民事裁判) 庶民の弁護士 伊東良徳

  裁判所からの呼出が来ましたが、行かなかったらどうなりますか

 民事裁判では、訴えを起こされた被告が争わなければ、それ以上言い分を聞いたり証拠調べをせずに、訴えを起こした原告の請求を認めます。
 被告が積極的に原告の請求を認めて承諾したときは、認諾(にんだく)といって、裁判所はそれ以上審理をしないで「認諾調書(にんだくちょうしょ)」を作成して裁判を終わります。認諾調書には判決と同じ効力があり、被告がその内容に従わないと強制執行をすることができます。
 被告が訴状を受け取っていながら、第1回口頭弁論期日に欠席し、答弁書も出さない場合は、訴状に対して反論がないからそうしていると考えられてしまいます。その場合、裁判所は、被告が原告の請求を争わないものと認めて原告の請求を認める判決を出すことができます。これを欠席判決(けっせきはんけつ)と呼んでいます。欠席判決の場合、裁判所は普通は原告の請求を全部認めます(原告の請求が法律上の理屈に合わないような場合は原告の請求と違う判決をすることもありますが)。
 欠席判決を避けるためには、自分か代理人(弁護士)が口頭弁論期日に出席するか、出席できない場合でも答弁書を出しておく必要があります。出席するつもりでいても当日突発的な事情(急病とか)で行けなくなることもありえますので、どちらにしても答弁書は事前に出しておいた方が安全です。急病のときは、裁判所に電話をして事情を説明すれば、欠席判決にはしないで次の期日を指定してはくれますが(すぐに診断書を送るべきでしょう)。

  第2回以降の期日の欠席

 地方裁判所の場合、被告側は第1回口頭弁論期日は、裁判所に行かなくても(欠席しても)答弁書を出しておけば、それを裁判所で陳述したという扱いになります(「擬制陳述(ぎせいちんじゅつ)」といいます。このあたりは「民事裁判の審理」でも説明しています)。第1回口頭弁論期日は、被告側の日程の都合を聞かないで指定しますから、(答弁書を出している限りは)出席しないこと自体には特に問題はありません。被告側に弁護士が付く場合は、第1回はその弁護士(被告代理人)も出席しないのがむしろふつうです。
 しかし、第2回以降の口頭弁論期日では擬制陳述の扱いができませんので、準備書面や証拠書類を裁判所に出しておいても、裁判上正式に提出されたことにはできません(判決の資料とすることができません)。原告の請求について「争う」趣旨の答弁書を出していれば(それが陳述か「擬制陳述」されれば)、第2回口頭弁論期日以降は欠席しても、それで原告の主張を認めたという扱いにはなりません(「欠席判決」にはなりません)が、被告側の積極的な主張が裁判に出ないということになりますので、原告側の立証をさせてその主張に近い判決になる可能性が高くなります。被告がその後の口頭弁論期日に出席すれば、それまでの欠席していた期日に提出された被告側の準備書面をまとめて陳述した扱いとし、出されていた証拠もまとめて提出された扱いになります。ただし、第2回口頭弁論期日以降被告が欠席していた場合に、次の口頭弁論期日が指定される保証はなく、弁論終結となるリスクも、もちろんあります。

 簡易裁判所の場合は、第2回口頭弁論期日以降も、擬制陳述の扱いをすることができます。ですから、簡易裁判所の場合は、被告は欠席し続けても、準備書面等を出しておけば、ふつうに裁判を継続することができます。このあたりは「簡易裁判所での民事裁判の審理」で説明しています。
 ただし、口頭弁論期日に行かないと、法廷でどういうやりとりがなされたか、裁判官がどういう姿勢かがわかりませんので、原告側の主張が明らかにおかしくて負けようがないとよほど自信が持てるのでなければ(素人の場合、その判断自体正しいかどうかわからないですが)、私は原則として口頭弁論期日には出席した方がいいと思います。

  訴状が知らない間に届くことはないのですか

 訴状や判決は、被告の家の郵便受けに入れるのではなく、郵便配達人が直接手渡すことになっています。これを「特別送達(とくべつそうたつ)」と呼んでいます。ただし、家族や従業員がいればその人に渡してもよいことになっています。ですから受け取った家族が忘れていたり隠していたりすると、知らないうちに欠席判決ということもあり得ます。
 郵便配達人が来ても無視して受け取らなかったらどうなるでしょう。近年は郵便配達人が来た時に不在だと、不在連絡票が郵便受け等に入れられ、そこに書かれている指示に従って電話して再配達してもらうなり郵便局に取りに行くなりすることになりますが、その不在連絡票も無視して放置して、裁判所に訴状等が戻った場合です。訴状の場合、ふつうは、裁判所から原告(代理人が付いていれば原告代理人の弁護士)に連絡が来て、どうするか聞かれます。通常はまず夜間・休日配達か勤務先への配達になります。いても受け取らないと判断されたら、「郵便に付する送達」といって郵便受けに入れて届いたと扱う(裁判所が発送した時に送達されたもの=届いたものとして扱う)という手段を使うことになります。
 訴状に書かれた被告住所地に被告が住んでいないときは、原告側で、被告の住民票上の住所の現地の様子や近所の人の話などから被告がそこには住んでいないと判断できることを調査して、裁判所に「公示送達(こうじそうたつ)」の申立をします。公示送達が認められると、そのことを裁判所の掲示板に掲示して2週間たつと訴状が届いたと扱います。この場合、当然、被告の知らないうちに裁判が行われることになります。
 訴状に書かれた被告住所地に、実際には被告が住んでいない(転居しているなど)にもかかわらず、原告側が被告は訴状記載の被告住所地に住んでいるという報告書・上申書を提出して、裁判所が(書記官が)それに基づいて(それを信じて)、訴状等を「郵便に付する送達」をした場合、どうなるでしょうか。被告は訴状等を受け取っていませんので、当然、第1回口頭弁論期日に答弁書を出さずに欠席し、欠席判決がなされ、その判決も通常は「郵便に付する送達」となります。判決が郵便に付する送達をされてから2週間以上たって、被告がそのことに気づいた(転居前の住所を訪れて裁判所からの「郵便に付する送達」の通知を見つけたとか、原告側がその後に被告の現実の住所を探索して連絡してきたとか)という場合、どうすればいいでしょうか。このようなケースについて、私の知人の弁護士が画期的な判決を取りました(仙台高裁秋田支部2017年2月1日判決:判例集未掲載)。報告書を信じた書記官に落ち度がなくても、送達はあくまでも送達発送時点での送達を受ける者の住居所に対して行わなければならず、住居所は送達を受ける者が現にそこに居住または現在しているなどの実体を伴うものであることを要するから、現実の住居所以外に宛ててなされた訴状等の郵便に付する送達は効力がなく、原審の口頭弁論手続、原判決のすべてに訴訟手続の法令違反(控訴理由)があるから、原判決は破棄されるべき(判決が有効に送達されていないから、控訴期間も進行しておらず、あとからなされた控訴も有効)というのです。この判決によれば、このようなケースでは、あとから気が付いた時点で「控訴」をすれば、原判決(1審判決)は確定もしていないし訴状が有効にされていないことからその内容にかかわらず訴訟手続の法令違反があるので破棄されることになり、訴状等が送られたことを知らないうちに「郵便に付する送達」をされて敗訴した被告は救済されることになります。(原告側が公示送達を求め、それが行われた場合は、この論理では救済されません。その場合に再審請求が認められるかについては、かなり高いハードルがあります:その点については「再審請求の話」で説明しています)

  裁判所から支払督促という書類が来たときはどうですか

 支払督促(しはらいとくそく)というのは、正式の裁判ではなく、裁判所が申し立てた人の言い分だけでまずお金を払うように命じるものです。この支払督促が届いたら、2週間以内に異議(いぎ)を出さないと、仮執行宣言付支払督促(かりしっこうせんげんつきしはらいとくそく)が出されます。仮執行宣言がつくと、それにより直ちに強制執行をすることができます。これも、こういうものが届いているのに異議が出ないということは、内容に反論がないからだと考えられるからです。
 異議には理由はいりません。つまり相手の主張が完全に正しくても異議は出せます。
 異議が出ると、自動的に通常の裁判になります。

  「裁判所」と書いた文書が来たらすぐ弁護士に見せましょう

 最近、ありもしない借金を返せとか料金を支払えという手紙を無差別に出してくる詐欺がはやっていて、その種の手紙は無視しなさいというアドバイスがよくなされています。それはその通りなのですが、裁判所からの郵便は、本物だった場合、無視すると相手の言い分通りの命令や判決が出るおそれがあります。そして、詐欺師の中には、裁判所を名乗るケースもあります。素人には本物かどうかわからないこともあります。ですから、少なくとも裁判所と書かれた手紙を受け取ったときは、すぐ弁護士に見せることをお薦めします。

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