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  再審請求の話(民事裁判)

ここがポイント
 民事裁判では、確定判決が誤りだという新たな証拠があっても、再審理由にならない
 確定判決を支える証拠が「偽造」されたか証言が「偽証」であったことが、別の裁判等で立証されて初めて再審理由になる
 「判断の遺脱」という再審理由は、確定判決を見てそれを知らなかったという特別な事情が必要
 民事再審が認められるのは極めて稀

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 判決に対して上訴(控訴・上告)をしないか、上訴して判決が出てそれ以上の上訴ができなくなる(例えば最高裁で上告棄却・上告不受理となる)と判決は「確定」します。この確定した判決に対して裁判のやり直しを求めることを再審請求と言います。
 刑事事件では再審請求や稀に再審開始決定がなされて報道されます。刑事事件ではほとんどの再審請求は、判決の結果(主文)を変更するべき「明らかな証拠を新たに発見したとき」という再審理由でなされます(そのために有罪判決の重要な根拠となった証拠に関して新たな鑑定をしたりします)。そういった報道から民事裁判でも同じ理由で再審請求できると思う人がけっこういるようです。しかし、民事裁判では、確定判決が誤りだという決定的証拠を発見したとしても、それだけでは再審理由になりません。
 刑事裁判での再審はよく「開かずの扉」と言われています。再審請求が報じられたり、ましてや再審開始決定が出されるような再審請求事件は、日弁連が組織的に弁護団を作って長期間苦心惨憺しているものが多く、それでも滅多なことでは再審開始とはならないのです。民事裁判での再審請求は、その刑事裁判での再審が「開かずの扉」なら、そもそも「扉」というほどの入口もない「針の穴」だと私は思います。

  確定判決が誤りだという証拠があるという主張

 民事裁判で再審請求をしたいといって相談に来る人のほとんどは、確定判決が誤りだという証拠を発見したと主張します。
 しかし、仮にその通り確定判決の事実認定に誤りがあることがその証拠によって明らかだという場合であっても、それは民事裁判では再審理由にはなりません。民事裁判では、確定判決の事実認定が全くの誤りであることを完全に(100%)立証できたとしても(実際にそんなことができることはまず考えられませんが、仮にそこまで立証できた場合であっても)、それだけでは再審理由にはならないのです。
 民事裁判では、確定判決の証拠となった文書や物が「偽造または変造されたもの」であったか、確定判決の証拠となった証言等が「虚偽の陳述」であったことが必要である上に、その犯罪行為について有罪判決が確定するなどして初めて再審理由となるのです。

 そもそも証拠が偽造であることを裁判官に説得することは並大抵のことではありません。民事訴訟法は「私文書は、本人またはその代理人の署名または押印があるときは、真正に成立したものと推定する」と定めています(228条)。さらには「当事者または代理人が故意または重大な過失により真実に反して文書の真正を争ったとき」には過料の制裁もあります(230条)。裁判で相手方が提出した証拠書類を「偽造だ」と簡単に言う人がいますが、弁護士の立場からは、証拠が偽造だという主張は、よほどの根拠がないと、その主張をすること自体で裁判官からこちらの主張全体の信頼性を疑われかねず、偽造の立証ができなかったらその裁判はもう負けというくらいの覚悟が必要です。そして証拠が偽造だという立証が成功する可能性はかなり低いものです。
 再審理由としては、証拠が偽造であるとか証言が偽証であることを立証する(それ自体先に述べたようにものすごく大変なことです)だけでなく、有罪判決の確定等が必要ということですから、現実的にはこの理由による再審請求がほとんど無理だということをわかってもらえると思います。

 ただこの有罪判決の確定「等」に少し獣道のような細い道が残されています。民事訴訟法の規定は、正確には「罰すべき行為について、有罪の判決もしくは過料の裁判が確定したとき、または証拠がないという理由以外の理由により有罪の確定判決もしくは過料の確定裁判を得ることができないときに限り、再審の訴えを提起することができる。」とされています。わかりにくい条文ですが、ここでいう「証拠がないという理由以外の理由により有罪の確定判決もしくは過料の確定裁判を得ることができないとき」というのは、現実的に言えば、その犯罪について公訴時効が成立したときか、偽造・偽証の行為者が死んだときです。そうすると、再審請求をしたい人が証拠の偽造や偽証を主張する相手が死ぬか公訴時効が成立すれば、捜査機関が捜査していなくても一応はこの要件を満たすことになります(再審請求はそれらの事実があった日から5年以内、知った日から30日以内に行う必要があります)。もちろん、その場合でも証拠の偽造や偽証を立証しなければ再審請求は認められませんし、その立証が極めて難しいことは先に述べた通りですが。

  判断の遺脱

 民事訴訟法は、「判決に影響を及ぼすべき重要な事項について判断の遺脱があったこと。」も再審理由と定めています。
 判断の遺脱というのは、判断が抜け落ちている、つまり判断していないということです。誤った判断をしている場合であっても(当事者の目にどんなに気に入らない判断でも、当事者から見ると100%間違った判断であっても)、そのことがらについて判断がなされている以上は、それは判断の遺脱にはなりません。
 また裁判上の主張・立証はえてして小さな事実を積み上げていって大きな事実を認定させるということになりますが、その場合の積み上げる小さな事実について判断を示していなくても、最終的な大きな事実について判断していれば、それはやはり「判断の遺脱」にはなりません。
 私の経験上は、確定判決に「判断の遺脱がある」と主張して相談に来られる方の主張は、これまで聞いた限りでは、例外なく、判断をしていないのではなく「正しい判断をしていない」(間違った判断をしている:本来は上の確定判決の事実認定が誤っているという主張)というものか、裁判官が取り上げる必要がないと判断した判決結果に影響しないような主張について判断しなかった(無視した)というものかのどちらかです。それはどちらも、「判断の遺脱」には当たりません。

 判断の遺脱をいうときには、その前提として当事者がその主張をしていなければなりませんが、1審判決の当事者の主張のところでその主張を書き落としている場合、控訴審で改めてその主張をしておかないと控訴審判決がその主張に対して判断を示さなくても判断の遺脱にはなりません。控訴審では、通常、第1回口頭弁論期日で裁判長が「原判決の事実摘示の通り原審の結果を陳述」とか、「原審の結果は原判決記載の通りでいいですね」とかいいます。それにより、1審判決の当事者の主張の記載が(その記載だけが)1審での当事者の主張だという扱いになるわけです。もちろん、控訴理由書に記載していれば、控訴審でも改めて主張したことになりますが。そして控訴審が事件の内容について判断している場合(いわゆる門前払いの判決でない限りそうなります)、1審判決に対しては再審請求はできません。ですから、1審判決で判決結果に影響を及ぼすような重要な主張が、当事者の主張からさえ書き落とされていたような場合、そういうときはまさしく1審判決には「判決に影響を及ぼすべき重要な事項について判断の遺脱があった」わけですが、その書き落とされた重要な主張を控訴審で(改めて)主張していなければ、控訴審判決には判断の遺脱はなかったことになり、再審理由がないことになってしまいます。
 そしてこの再審理由の主張で最も厳しいことに、判断の遺脱があるかどうかは、通常は判決文を読めば明らかなはずです。民事訴訟法は、再審理由があっても、控訴や上告でそのことを主張したときも、逆に再審理由があることを知りながら主張しなかったときも再審の訴えをすることができないと定めています。判例上、再審理由があることを知りながら上訴しなかったときもこれと同じと解されています。そして、判断の遺脱については、原則として判決文を受け取ったときに知ったものと解され、代理人(弁護士)が知ったときは本人も知ったものと解されています。そうすると、「判断の遺脱」については、それを知らなかったという特別の事情が主張立証できなければ、再審理由として使えないということになります。

 ただし、この問題については、次のようなややマニアックな議論の余地を残しています。
 控訴審判決に再審理由に当たる「判断の遺脱」があった場合に、それを上告審で主張したら再審以前に上告審でその誤りが是正されるか、法律論で言うと控訴審判決の「判断の遺脱」は上告理由に当たるかについて、最高裁は微妙な判断をしています。控訴審判決の「判断の遺脱」を上告理由である「理由不備」に当たるとした上告に対して、最高裁は1999年6月29日の判決で、判決に影響を与えるような重要な主張について控訴審判決が書き落とした(当事者の主張を整理する部分で取り上げなかった)場合は上告理由である「理由不備」には当たらないが、再審理由である「判断の遺脱」には当たるとした上で、「判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある」として民訴法325条2項で職権破棄しました。
 再審理由がある場合に、控訴や上告の段階で主張した場合や再審理由があることを知りながら主張しなかった場合には再審の訴えをすることができないという規定は、再審理由がある場合にはそれを主張して認められれば控訴や上告の段階でそれが是正されるということを想定しています。この最高裁判決のように、再審理由があってもそれは上告理由には当たらないということになると、上告段階で主張しても無駄だから主張しない/すべきでないという理屈も成り立ちます。そうすると、控訴審判決に「判断の遺脱」があるという場合、知っていながら上告審で主張しなかった場合でも、それで再審請求ができなくなるのは不合理だという余地が出て来ます。上告審で主張して採用されなかった場合についてもそう考えることができるかもしれません。
 最高裁がこのケースで職権破棄したことを、再審理由がある場合には最高裁として上告段階で是正するという姿勢なのだから、やはり民事訴訟法の規定通り、再審理由があっても上告段階で主張した場合も知りながら主張しなかった場合も再審請求はできないと考えるべきか、「上告理由」ではないとされて控訴審判決に「判断の遺脱」があっても必ず職権破棄されるわけではないのだから、知りながら主張しない場合も、さらには上告段階で主張して採用されなかった場合も再審請求が可能と回するべきか、その後最高裁のハッキリした判断は出ていません。

  訴状・判決の送達をめぐって

 民事訴訟法が定める再審理由に、「法定代理権、訴訟代理権または代理人が訴訟行為をするのに必要な授権を欠いたこと。」というのがあります。裁判の当事者の代理人として裁判上の行為(答弁書とか準備書面を作成して提出するとか、口頭弁論期日に出席して主張を述べるなどすること:アドバイスをしたり、答弁書や準備書面の原稿を書くのは、当然、裁判外の行為で、裁判上の行為ではありません)を行った人が実は権限がなかったという場合です。親権者(父母)や後見人でない人が親権者や後見人と称して裁判上の行為を行ったとか、依頼を受けていない弁護士が裁判上の行為を行ったというようなことです。
 そういうことも稀にあるかもしれませんが、それとは別に、訴状や判決が当事者の手に渡らず、当事者が裁判が起こされていることを知らないまま判決が確定した場合に、一定の事情があるケースについては、この再審理由がある場合と実質的には同じであるとして、手続にまったく関与できないままに判決確定に至った当事者を救おうという試みがなされています。(当事者、実際には被告が、知らないうちに判決が確定したケース一般を救おうとしているわけではないことに注意してください)

 1つは、訴状や判決を被告の家族等の同居人が受け取り、それで法律上訴状や判決が被告に送達されたことになるけれども、その受取人がその裁判で事実上被告と利害が対立する立場にあるために訴状や判決を被告に渡さず、その結果被告が裁判手続に参加する機会がなかったという場合です。訴状や判決を受け取った同居人が、勝手に被告を連帯保証人とし、その後貸し主が借り主である同居人と連帯保証人である被告に対して裁判を起こしたというケースで、最高裁は訴状や判決受け取った者がその訴状に関して事実上利害関係の対立があるためにその訴状や判決を速やかに本人に渡すことが期待できず、現に交付されなかった場合は、その本人は訴訟手続に関与する機会を与えられたことにならず、その結果訴訟が提起されていることを知らないままに判決に至った場合には、代理人が代理権を欠く時と異なる扱いをする理由はないから再審理由があると解すべきとしました。

 もう1つのパターンとしては、原告が被告の現実の住所を知っていたか調べれば容易にわかるのによく調べないままに、住所不明として公示送達の手続を取った場合、被告は訴状も送られずまったく知らないままに裁判が終わってしまうことになり、そういう場合にこの規定で再審請求ができないかが問題になりました。
 そういう場合でも、この再審理由には当たらないという判決が多いですが、原告が被告の住所を知っているかまたは重大な過失によって調べれば容易にわかるのに調べずに公示送達による判決を得た場合には、被告はこの規定を類推適用して再審請求できると述べた判決もあります(その事案では「容易に」わかるとは言えず原告もそれなりに調査を尽くしたとして再審請求は認められませんでしたが)。
(公示送達については「裁判所の呼出を無視すると」を見てください。実はスマホサイトの「訴状が届かないとき」の方が詳しいですけど:PCでスマホサイトを見るときはブラウザの横幅を狭くして見てください)


 このように、民事裁判で、再審請求が認められる場合というのは極めて稀なケースです。控訴の話(民事裁判)まだ最高裁がある?(民事編)で説明しているように、控訴審や上告審での逆転ということもかなり難しいもので、やはり裁判はとにかくまず1審で全力を尽くして勝負すべきものです。稀に、だと思います(思いたいです)が、1審で負けたらそこで初めて弁護士に依頼すればいいとか、弁護士を変えればいいと考えているような人がいるのは、大変残念なことというか、その人にとって真に不幸なことだと思います。

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