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 訴訟費用の取り立て(民事裁判)

もくじ:index
 訴訟費用の範囲と計算 GO
 訴訟費用の取り立ての手続:訴訟費用額確定処分 GO
 計算の具体例(原告1人、被告1人のとき) GO
 原告や被告が複数のとき GO
 まとめ GO

Tweet  はてなブックマークに追加 訴訟費用の取り立て(民事裁判) 庶民の弁護士 伊東良徳

 民事裁判の判決では、通常、請求に応じた内容の命令とともに、訴訟費用をどちらがどれだけ負担すべきかについて決定します。原告側の全部勝訴ならば通常「訴訟費用は被告の負担とする」とされますし、原告側の全部敗訴なら通常「訴訟費用は原告の負担とする」となります。一部勝訴の場合は、通常、請求額に対してどれだけの請求が認容されたかに応じて、原告、被告に負担を配分します。原告の請求の約4分の3が認められれば、通常は「訴訟費用はこれを4分し、その3を被告の負担とし、その余を原告の負担とする」(「訴訟費用はこれを4分し、その1を原告の負担とし、その余を被告の負担とする」でも同じ)というような形になります。
 実は、たいていの場合、弁護士は訴訟費用の取り立てまではやりません。判決文には、ほぼすべての判決に訴訟費用の負担が書かれていますから、一般の方は、訴訟費用は必ず取り立てられるものと思いがちです。でも、弁護士のふつうの感覚では、判決文に記載はあるけどそこまではね、と思い、特に取り立てずにいることが多いのです。私も、ふつうの事件では、依頼者にそう説明していました。
 しかし、2012年4月、三陽商会(バーバリーブランドのライセンス展開で知られるアパレル会社)から、2万数千円の訴訟費用額確定処分申立を受けました。この事件は、三陽商会が部下もいない従業員を管理職だとして残業代を支払っていなかったものについて残業代請求をして、名ばかり管理職であることが認められたものですが、残業時間の認定について三陽商会が控訴し控訴審で残業時間の認定が減らされたもので、三陽商会がその控訴費用について原告側に支払請求してきたというわけです。一部上場企業が一個人に対して2万数千円の取り立てのために訴訟費用額確定処分申立までしてくるとは、私は予想していませんでした。
 それに、消費者金融相手の過払い請求では、和解せずに判決に至った場合、訴訟費用額確定処分申立までしなくても、判決により支払うべき額の計算書に訴訟費用額の計算書もつけて請求すると、支払ってくることもわりとありました。そういうこともあって、訴訟費用額確定処分申立まですることもないと思っていました。しかし、これも、消費者金融が次第に資金難を口にするようになり、訴訟費用を支払って欲しいなら確定処分をしろといわれることが増えてきました。
 そういうことから、立て続けに、訴訟費用額確定処分の相手方側と申立人側となりましたので、その経験から具体的な手続を説明します。

  訴訟費用の範囲と計算

 判決の主文で費用負担が定められる訴訟費用には、弁護士費用は含まれません。
 訴訟費用に含まれるのは、多くの場合は、申立手数料(訴状や控訴状等に貼った印紙)、予納郵券のうち使用された部分(被告や被控訴人等への送達費用)、当事者・代理人の出廷のための旅費・日当・宿泊費、書類作成提出費用です。
 証人尋問が行われた場合の証人の旅費・日当・宿泊費(実際には、同行証人といって申請した側が連れてくる証人の場合、旅費・日当等の請求を放棄することが多く、その場合は訴訟費用に含まれないことになります)、鑑定が行われた場合の鑑定料等も含まれます。

 訴訟費用の計算ですが、印紙、郵券は実額ですからすぐわかりますね。旅費・日当や書類作成提出費用は、どう計算すればいいでしょう。これについては、規則で計算方法が決まっています。

 当事者・代理人の出廷旅費は、住所・事務所と裁判所が同じ簡易裁判所管轄内の場合は、1回300円と決められています(ただし、両者の距離が500メートル以内の場合は0円)。当事者・代理人の出廷日当は、住所・事務所と裁判所が同じ簡易裁判所管轄内の場合は、1回3950円と決められています。当事者・代理人が2人以上出廷した場合は、金額が一番安くなる人の1人分だけが認められます。
 裁判所と住所・事務所が離れている場合の出廷旅費はどうなるでしょう。民事訴訟費用等に関する法律では、裁判が行われた裁判所と住所・事務所所在地を管轄する簡易裁判所の直線距離に応じて最高裁規則(民事訴訟費用等に関する規則)で定める額とされていますが、この金額が現実の交通費よりかなり低く決められています。そういう場合に備えて、民事訴訟費用等に関する法律では通常の経路及び方法で裁判所に行ってその際に支払った実額が最高裁規則で定める額を上回る場合、「領収書、乗車券、航空機の搭乗券の控え等の文書が提出されたときは、現に支払つた交通費の額」とされています。この文書はどの程度のものを出す必要があるでしょうか。
 東京から離れたところに住所がある人のアイフルに対する過払い金請求の事件を受けて、アイフルは住所地以外で裁判を起こすと現実には時間稼ぎのためですがうるさく移送申立をしてくるので、しかたなく京都地裁で裁判をやりました。その事件の判決が出て、訴訟費用額確定処分の申立をして、新幹線の切符は事前にコピーして領収書も取っておいたのですが、京都駅から裁判所最寄りの地下鉄丸太町駅までの地下鉄はどうしたらいいですかと京都地裁に恐る恐る聞いたところ、毎回地下鉄に乗って裁判所まで行きましたという陳述書を出せばいいですと言われホッとしました。結果としても、領収書の原本と新幹線切符のコピーと陳述書で旅費は満額認めてもらえました(京都駅から裁判所までは京都市営バスの方が安いとか言われたらどうしようとも思いましたが)。
 他方、エイワに対する過払い金請求の事件を保土ヶ谷簡裁(エイワの本店所在地の横浜市西区を管轄)でやって訴訟費用額確定処分の申立をした際、京都地裁でやった例に従い、神田駅からJRで横浜駅まで550円、横浜駅から相鉄バスで交通裁判所まで216円の陳述書を出したところ、保土ヶ谷簡裁では領収書が出ない限り最高裁規則に従い片道390円しか認めないということでした。JRはいざとなれば切符を買い有人改札を通って「無効」スタンプをもらって切符を持ち帰るという手段がありますが、切符もない相鉄バスで「領収書」をもらう手段があるでしょうか。

 書類作成提出費用は、提出した訴状や答弁書、準備書面が5通以内なら1500円、6通以上20通以内ならそれに1000円追加(以後15通区切りで1000円ずつ追加)となります。また提出した証拠書類が16通以上65通以内ならまた1000円追加(以後50通区切りで1000円ずつ追加)となります。

 控訴や上告があった場合は、訴訟費用は1審、控訴審、上告審で別々に計算します。1審と控訴審で負担割合が別々になることもありますので別々に計算した上でそれぞれの負担割合に沿って処理することになります。

 なお、訴訟費用額確定処分を申し立てると、その決定の相手方への送達のために郵券を納めます。この郵券額も訴訟費用に入れることができます。

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  訴訟費用の取り立ての手続(訴訟費用額確定処分)

 判決で訴訟費用の負担が決まっても、判決文で訴訟費用について強制執行ができるわけではありません。訴訟費用について現実に取り立てるためには、法律上は、訴訟費用額確定処分が必要です。
 訴訟費用額の確定処分は、判決が確定した後に1審の裁判所の書記官が行います。控訴や上告があった事件の場合、控訴審なり上告審で判決が確定した後、事件記録が1審裁判所に戻ってから1審裁判所に申し立てるということになります。
 訴訟費用額確定処分申立は、申立書と訴訟費用額の計算書(必要に応じてそれを裏付ける書類も)を1審の裁判所の民事受付に提出します。申立書の副本(申立書と同じものをつくって印鑑を押します。訴訟費用額の計算書もつけます)は、民事受付に持っていくのではなく、相手方に直接送ります(FAX送信でOK)。
 受付で民事雑事件として事件番号が振られ(事件番号の記号は「モ」になります)、担当書記官に送られます。東京地裁では、労働事件では元の事件の担当部の書記官が担当しましたが、少なくとも過払い金請求の事件では元の事件の担当部ではなく「民事部分室」の書記官が担当します(専門部の事件でもなく過払い金の事件でもない一般事件がどちらに行くかは、まだやってないので私はわかりません)。
 申立があると、書記官は相手方に対して相当の期限を定めて、意見書の提出を求めます(ただし、相手方が訴訟費用を全部負担すべき場合で訴訟費用の額が記録上明らかなときは意見書の提出を求めないことがあります)。相手方は、通常は、相手方に生じた訴訟費用を主張して計算書とともに提出します。もちろん、申立書の計算等に誤りがあるときはそれを指摘します。
 相手方の意見書が出た後(あるいは相手方が意見書を提出せずに定められた期間を経過した後)書記官は、訴訟費用の支払いを命じます。双方が一部ずつ訴訟費用を負担すべき場合で、相手方にも訴訟費用が生じている場合は、両者を相殺して差額のみの支払いが命じられます。この書記官の作成する文書は「訴訟費用額確定処分」と記載され、この文書によって強制執行をすることができます。

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  具体例(原告1人・被告1人のとき)

 判決主文で「訴訟費用はこれを4分し、その3を被告の負担とし、その余を原告の負担とする」とされている事案で、原告に生じた訴訟費用が申立手数料(印紙)1万8000円、郵券費消額(送達費用)2210円、出廷旅費・日当1万7000円、書類作成提出費用1500円の合計3万8710円、被告に生じた費用が出廷旅費・日当1万2750円、書類作成提出費用1500円の合計1万4250円という場合で計算してみましょう。
 原告に生じた費用で被告が負担すべき額は、3万8710円×3/4=2万9033円(端数は4捨5入)で、通常は、この額を申立書で請求します。被告に生じた費用で原告が負担すべき額は1万4250円×1/4=3563円で、通常は、相手方の意見書でこれが主張されます。その結果、相手方に対して両者の差額、2万9033円−3563円=2万5470円の支払が命じられることになります。

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  原告や被告が複数のとき

 さて、原告や被告が複数のときは、どうなるでしょう。特定の人だけにかかったことが明らかな費用はその人についてカウントし、共通のものは複数の人で案分した上で計算することになります。
 案分の仕方としては、申立手数料(印紙)は訴訟物の価額に応じて案分し、それ以外は頭割りにします。
 訴訟物の価額というのは、おおざっぱに言えば請求額ですが、例えば利息・遅延損害金は訴訟物の価額に含まれませんので、現実の裁判では請求額と違う場合が多くなります。

 原告Aは200万円、原告Bは150万円、原告Cは100万円がそれぞれ訴訟物の価額として(その結果訴訟物の価額合計450万円でこれに対応する申立手数料は2万8000円→「裁判所に納める費用(民事裁判)」を見てください)、原告Cについて第2回口頭弁論までで裁判外の和解ができて訴えを取り下げ、原告Aと原告Bについては和解ができずに第5回口頭弁論まで行い訴状と準備書面は合計で4通という状態で結審して判決の言い渡しがあり、送達費用の合計は2200円、被告は口頭弁論4回に出廷して答弁書と準備書面の合計は4通という事案で、「訴訟費用は原告Bに生じた費用の3分の1と被告に生じた費用の7分の1を同原告の負担とし原告Aに生じた費用並びに原告B及び被告にそれぞれ生じたその余の費用を被告の負担とする」という判決が出た場合について計算してみましょう。
 原告側に生じた費用は申立手数料は、原告Aが2万8000円×200万/450万=1万2444円、原告Bが2万8000円×150万/450万=9333円、原告Cが2万8000円×100万/450万=6222円。送達費用は頭割りで各原告につき733円、書類作成提出費用も頭割りで各原告につき500円、出廷旅費・日当は、最初の2回分は原告3名で頭割りして4250円×2÷3で各原告につき2833円、第3回から第5回の3回の口頭弁論分は原告Aと原告Bで頭割りでそれぞれ4250円×3÷2で原告Aと原告Bについて6375円となります。これをそれぞれ合計して、原告Aは2万2885円、原告Bは1万9774円となります。原告Cの分は裁判外で和解していますし判決で訴訟費用の負担が命じられていませんから請求できないことになります。
 原告側としては、判決の訴訟費用分担に従って、原告Aの分全額の2万2885円と原告Bの分の3分の2の1万3183円を請求して訴訟費用額確定処分の申立をすることになります。
 これに対して、被告側に生じた費用は、口頭弁論4回分の出廷旅費・日当が1万7000円と書類作成提出費用が1500円の合計1万8500円で、被告は判決の訴訟費用分担に従ってこの7分の1の2643円を原告Bが負担すべき額として意見書で主張することになります。
 その結果、被告に対して、原告Aに対して全額の2万2885円、原告Bに対して差額の1万0540円の支払いが命じられることになります。

 被告が複数の場合も、基本的に考え方は同じです。申立手数料の負担は各被告に対する訴訟物の価額で案分しますし、書類作成提出費用や全被告共通の期日の出廷旅費・日当は被告の人数で頭割りし、特定の被告に関係ない、あるいは特定の被告のみについての期日分は関係する被告のみで頭割りします。送達費用については、各被告にかかった費用が(裁判所は)個別計算できますので、頭割りにせずに各被告ごとに計算します。

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  まとめ

 上で具体例を挙げて説明したように、全部勝訴でないときや原告・被告が複数のときは、少しややこしい計算になりますが、計算や手続自体はそうめんどうなものではありません。
 ただ、実際にそれをやるかどうかは、ポリシーの問題でしょうね。争って判決に至る消費者金融には、特に同情すべき点もないので、訴訟費用も全部取り立てればいいかと思いますが、個人相手にそこまでやるかについては、私はどうかなという思いが強いです。

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