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   ◆労働審判の話庶民の弁護士 伊東良徳のサイト モバイル新館

  労働審判から通常訴訟に移行すると

ここがポイント
 労働審判手続での「審判」に対して異議を申し立てると自動的に通常の訴訟に移行する
 東京地裁では、労働審判後の訴訟は主張の整理が速く進むのがふつう
 東京地裁では、労働審判の結果と判決が大幅に違うことは稀

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 労働審判は、裁判のような厳格なルールによらずにある種融通無碍な「審尋」手続で心証を取って判断するということなので、審判を受けた当事者に不満があり、異議申立がなされると、異議の理由があるかないかにかかわらず無条件で審判は効力を失い、通常訴訟に自動的に移行します。
 このため、制度発足前は、大部分が異議申立を受けて通常訴訟に移行し、しかも通常訴訟の時間がかかって、労働審判をやるだけ解決までの時間が延びるのではないかという危惧が持たれていたのです。
 しかし、実際には、異議申立自体少なく(というより多くが調停成立となり、審判自体が少なく)、異議申立後の通常訴訟も迅速な進行がなされ、最初から訴訟提起した場合とほとんど変わらない時期に判決等が出ているようです。

  異議の後第1回口頭弁論まで

 実際には、労働審判に異議が出て通常訴訟に移行すると、労働審判を申し立てた側(原告側:どちらが異議を申し立てたかには関係なく、労働審判を申し立てた方が原告になります)はもう一度労働審判申立書を出し(相手方に正式に送達するため)、それと別に「訴状に代わる準備書面」を出すように裁判所から求められます。
 「訴状に代わる準備書面」では原告側の請求を裁判用に書き直し(労働審判では請求する内容の限定がゆるいので裁判では請求できない内容もあり得ますから。それでも弁護士が代理人で申し立てた場合、普通は最初から裁判で請求できる書き方をしているものですが)、事実経過について労働審判の申立の内容に労働審判の過程での主張も加えて整理して書きます。この1本で原告の主張と労働審判の経緯がわかるようにすることになります。その上で、改めて証拠書類も出し直します。このとき、証拠は変更したり番号を変えてもいいと裁判所は言いますが、労働審判申立書に証拠番号を付けて引用していますから、番号を変えると労働審判申立書と合わなくなるので、現実には労働審判で提出したものはそのままの番号で出し直し、追加して提出するものはその次の番号から番号を付けて出すことになります。
 相手方は、労働審判の答弁書をもう一度出す必要はなく、訴状に代わる準備書面に対する答弁書を提出することになります。これも普通は労働審判での答弁書に労働審判の過程で出された主張を追加して整理したものになります。
 そういう形で第1回の口頭弁論には双方の主張が出そろってしまいますので、あとは若干の補充と証人申請が出て、和解の話し合いか証人尋問へと流れていくことになるわけです。

  異議申立は得策か?

 労働審判が出されて異議申立により通常訴訟に移行した案件でどのような判決が出されているかについては、まだ統計的なものは現れていません。しかし、東京の弁護士会の労働審判協議会の席上委員の経験で語られる話や、東京地裁の労働部の裁判官を弁護士会に招いて講演してもらった際の話からは、通常訴訟の判決で、労働審判より異議申立側に有利な結果が出る例は、ないわけではないようですが、あまり聞きません。労働審判よりも異議申立側にさらに不利な結果の判決が出たというケースも報告されています。
 裁判所も、労働審判の結論は重く受けとめているようですので、労働審判で調停では解決できず審判に至った場合、異議を申し立てても多くの場合は単なる時間稼ぎ以上の意味はないというのが、今のところの実情のようです。

  【労働事件の話をお読みいただく上での注意】

 私の労働事件の経験は、大半が東京地裁労働部でのものですので、労働事件の話は特に断っている部分以外も東京地裁労働部での取扱を説明しているものです。他の裁判所では扱いが異なることもありますので、各地の裁判所のことは地元の裁判所や弁護士に問い合わせるなどしてください。また、裁判所の判断や具体的な審理の進め方は、事件によって変わってきますので、東京地裁労働部の場合でも、いつも同じとは限りません。

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