庶民の弁護士 伊東良徳のサイト

    ◆過払い金返還請求の話
  アエル(旧日立信販)の場合

ここがポイント
 民事再生手続で債権届出をしていない場合でも、今からでも過払い金返還請求は可能
 しかし、支払われるのは過払い金の6.812%だけ
 アエルから債権譲渡を受けたという怪しげな業者の請求に注意

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   民事再生手続申立以前の状況

 アエルは、かつては「日立信販株式会社」という会社でした。2001年7月に「アエル株式会社」に名称を変更しました。アエルの場合は、レイクと違って、会社組織に変更はなく、ただ名前が変わっただけです。
 アエルは2003年9月に東京地裁に会社更生法の適用を申請し、2004年6月に更生計画が認可され、その更生計画の履行をしていましたが、2007年8月17日付で更生手続を終結しました(8月20日付で登記)。何か難しい話に思えますが、世間的な表現をすると、負債を抱えて事実上倒産状態になり、裁判所の手続で債権者に債権額を減らした上で返済条件も長期分割にしてもらい、その返済をし終わって、つい最近普通の会社の状態に戻ったということです。
 この会社更生手続で、東京地裁は、過払い金返還請求権について、一般の債権カットされる債権の扱いをせずに、債権届出をしなくても全額返還請求できる取扱をしました。このおかげで、アエルに対する過払い金返還請求は、会社更生手続後も何の問題もありませんでした。会社更生手続中にも以下のように違反行為をして業務停止を受けたりするなど、悪質ぶりはそのままでしたが、過払い金の取り戻しは容易だったわけです。

<業務停止処分>
 過払い金の関係ではありませんが、アエルは返済義務のない家族に対して脅かしたり家族に支払わせる契約をしながらその経過を帳簿に書かずに隠していたことを理由に、2006年8月21日から23日まで全店舗で、違法行為のあった店舗はさらに長期間の業務停止処分を受けています。これは、会社更生手続中の違反行為です。裁判所の監督下で更正管財人の指導の下でも行いは改まらなかったのですね。

  今度は民事再生手続!

 その後アエルは、次第に交渉や訴訟での引き延ばしを図り、和解案でも半年後とか非常識な提案を繰り返すようになって、私たちの間で先行きが危ぶまれていました。
民事再生手続の申立
 そしてついに2008年3月24日、アエルが東京地裁に今度は民事再生手続を申し立てました。自らは貸金業を続けながら過払い金は大幅カットして生きのびようという見苦しい手口です。もっとも、今後アエル自身は過去に貸し付けたものを形の上では他の貸金業者に譲渡して、自らは回収業者の役割を果たしてその回収手数料で食いつなぐようですが。
民事再生手続の進行
 2008年3月27日に東京地裁が民事再生手続開始決定を行い(事件番号東京地裁平成20年(再)第77号)、当初の決定によるスケジュールでは、債権届出期間は2008年6月30日までとされました。その債権届出に対する調査期間が2008年9月12日まで、再生計画案の提出が2008年9月24日までとされていました。
 しかし、アエルからの再生計画案提出期限の延長申請がなされ、提出期限が2008年12月12日まで延期されました。
 その後、アエルから、2008年12月12日、再生計画案が提出され、2009年1月20日付で修正がなされました(過払い債権者関係については特段の修正はないようです)。
 東京地裁破産・再生部(民事第20部)は、この再生計画案を書面投票及び債権者集会での決議にかけることにして、書面投票は2009年3月10日までに郵送で投票し、債権者集会は2009年3月18日午後1時30分からと指定されました。

書面投票と債権者集会
 再生計画案の議決は、再生債権総額(金額)の過半数の賛成と、投票した債権者数(頭数)の過半数の賛成が、必要です。
 アエル側は、債権届出をした債権者への議決票等を送付した郵便の中に「ご連絡」として、再生計画案が否決されたら破産手続に移行し、その場合は配当は0%になるという文章を入れて債権者に圧力をかけ、さらには個別に電話をかけて賛成票集めに奔走していました。
 3月18日の債権者集会は、裁判所・監督委員の自己紹介と、アエルの代理人弁護士の追加説明(潜在的過払い債権者への支払を見込んだために配当率が5%となってしまったなどと、この期に及んでもなお過払い債権者に責任をなすりつけようという見苦しい発言がなされ、驚きました)の後、すぐ投票に入り、出席者の議決票を集め、20分あまりかけて黙々と集計がなされ、その結果が発表されました。裁判所の発表は、投票者総数(書面投票+集会での投票)18980名、うち賛成が15249名、賛成者の再生債権額は再生債権総額の77.66%にあたるということだけでした。再生計画案に書かれている債権者数(17480名)よりも多くの者が投票しているのですから、少なくとも集会時点での再生債権者数と再生債権総額は、可決の前提として当然発表すべきだったと思いますし、反対債権者の数と債権額も発表して欲しかったと思いますが。
 裁判長(佐村部長)は、即座に再生計画の認可をその場で決定しました。
 債権者集会はそれだけで終了。30分ほどで終わり、ほとんどの時間は誰も発言しない集計時間でした。会社の民事再生手続の債権者集会には初めて出席しましたが、あっけないものだと思いました。

再生計画の内容
 裁判所に認可された再生計画の内容では、過払い債権者については、期限内に届出をしなかった場合にも、期限内に届出したのと同様に扱うことが述べられています。これは、昨今の消費者金融の破綻の場合の過払い債権者の救済と同じです(当時は、例外は、実質的には「ライフ」だけでした。今でも会社更生手続(2000年6月30日)以前の過払い金は全面否認して裁判で徹底的に争うライフの悪辣ぶりが際だちますね。もっとも、その後、ロプロ、武富士と期限内に届出しなかった過払い債権者を切り捨てる手続が続いています)。
 しかし、肝心の支払率は、なんと5%。3年後と過払い金の消滅時効による確定後に見直して追加配当をする余地がありますが、それは現在見込んでいる潜在的な過払い債権者(これから請求してくる過払い債権者)の請求額が予想より少なければ、過大に見込んだことになる分を分配するというだけですので大きな期待は持てません。
 支払は、再生計画認可の確定後3か月以内に一括払いとされています。

支払の状況
 再生計画認可は2009年4月21日に確定したそうです。
 アエルは、2009年5月18日付で、届出期間中に債権届出した債権者に対して、支払い方法の指定を求める文書を発送しました。その文書では振込送金の場合は、2009年7月13日に振込、アエルの本店にいって受領する場合は2009年7月21日(午前10時〜午後3時)に支払うとされていました。
 2009年7月13日、届出期間中に債権届出した債権者と、届出期間後に債権届出した債権者の一部に対し、アエルから約束通り支払いがありました。
 債権届出が遅かった人については、この後順次支払われました。
 2009年10月20日、アエルから、私が2009年5月から7月に過払い金請求した過払い債権者分について、支払い方法の指定を求める2009年10月15日付の文書が送られてきました。返送から3か月以内に払うが、支払は2か月に1回だと書かれています。それですぐに送金先口座等を書き込んで返信したものについて、2009年11月16日に支払がありました。2009年3月に依頼を受けて取引履歴開示請求をしてアエルからの開示があってすぐ過払い金請求したケースで、支払が2009年11月。8か月がかりですね(それも過払い金のたった5%だし)。
 その後は、債権届出が減ったせいか、作業に慣れてきたのかスピードアップしているようです。たとえば私が2010年2月9日に受任して取引履歴開示請求を発送したケースでは、2月16日付の文書で取引履歴開示してきました。それで2月18日債権届出書を発送すると、4月7日付の弁済口座指定書を送ってきましたので即日返送すると、5月17日に入金してきました。このケースだと取引履歴開示請求から支払いまで約3か月。スピードだけなら今時の普通の消費者金融より早く回収できるといえるかもしれません。なんにせよ、回収できる金額が過払い金の5%だけなのが悲しいですが(次で説明するように、2012年8月の弁済率見直しで6.812%になりましたが)。

「3年後の見直し」
 2012年8月6日付で、アエルから、再生計画に記載されていた3年後の見直しで、弁済率を1.812%上積みするという連絡が来ました(その後8月13日付で多数の過払い債権者宛に送られて来ました)。
 要するに再生計画を作るときに予想したよりも過払い金請求をする過払い金債権者が少なかったので、弁済原資が余ったということです。請求できることに気がつかない過払い債権者が多数いるということで、借主側の弁護士としては悔しい限りですが。
 これまでに再生計画の5%の弁済を受けた過払い債権者には、原則として、放っておいても前に指定した口座に1.812%分(前回の弁済額の3分の1強、36.24%相当)の送金が、2012年10月18日までをめどになされるということです。
 送られてきた「再生計画変更及び追加弁済の実施についてのご案内」という文書には、2012年4月18日に再生計画が変更され、1.812%分の追加弁済を行うことと過払い債権が全て時効消滅した時点で再度弁済率を見直し、その際には再生計画で予定していた弁済原資の他に財産があればそれも弁済に充てることとなり、この再生計画はその日に認可されたということ、2012年4月23日に再生手続の終結決定があったことも書かれています。再生計画が終結したといっても、アエルが企業として立ち直ったという意味ではありません。アエルは(過払いでない)貸金債権を他の貸金業者に譲渡して、今では事業は行っておらず、ただ過払い債権者を含む債権者への支払のために存続しているだけです。他の資産があれば弁済に回すというのは、もう事業がないので事業の元手にする必要がないということでもあり、収入がない以上資産が増えることはおよそ期待できません。再度の見直しがなされるという未届けの過払い債権が全て時効消滅した時点というのは民事再生手続開始決定から10年を経過した時点(2018年3月27日)以降になります。その頃までアエルが残っているということは、私には考えにくい。今後新たな過払い金請求が多数あるとは考えにくいので、理論上は2018年に再計算すれば追加の弁済があってしかるべきですが、終結決定で裁判所の監視も外れたことでもあり、きっとうやむやのうちにアエルは消息不明になると予測できます。
 2012年10月9日、私が担当している過払い債権者全員について、債権届出の時期に関係なく、追加弁済の振込がありました。
 追加弁済のご案内には下記の住所が記載され、追加弁済の問い合わせ専用ダイヤルが03-5776-8186だと書かれていました(この番号は現在は使われていません)。

現在のアエルの連絡先
 〒105-0003 東京都港区西新橋1−5−10 TJ内幸町ビル4階
 電話 03-6865-1135
(この電話番号は2016年3月30日現在生きています)

 以前と同じ番地でビルの名前が変わっているので、見に行ってみたら、ビルの正面に「TJ内幸町ビル 旧トウセン西新橋ビル」と書き込まれていました(2012年8月8日撮影)。


これから過払い請求する人は・・・
 法律の規定上は、民事再生手続で債権届出しなかった債権者は請求できなくなるところですが、アエルの再生計画は、クレディアの場合と同様、過払い債権者については、期限内に債権届出をせずに後になって届出した場合でも(これから届出した場合でも)、期限内に債権届出した場合と同じ条件で支払がなされる扱いとなりましたので、法律上の期間は関係なく今後も請求は可能です(最終取引から10年経過して過払い金返還請求権が時効消滅しない限りは)。今後請求する場合も債権確定から3か月以内に再生計画と同じ条件で(つまり債権額の原則6.812%だけ)支払われることになります。


2008年3月26日以後の支払いとJ.P.モルガンへの譲渡債権
 アエルに対する過払い金は、民事再生手続によって原則として過払い金の5%しか返還されない扱いとなりましたが、例外がいくつかあります。
 一番わかりやすい例外は、アエルに民事再生手続開始決定があった2008年3月27日以降にアエルに支払った過払い金(つまり2008年3月26日時点ですでに過払いとなっていた人が、その後も支払いを続けた場合)です。これは、再生手続で債権カット対象になりませんから、アエルに請求すれば全額に受領の日から年5%の過払い利息も付けて戻ってきます。
 アエルは、破綻前からいくつかの貸金業者に債権譲渡をしていました。多くの場合は、債権譲渡後は貸金を譲り受けた貸金業者に支払うようになり、貸し借りの関係が破綻前にその貸金業者に移る形になっています(債権譲渡前の過払い金も移るかについては、ハードルがありますし、熾烈な戦いになりますが)。しかし、J.P.モルガンに債権譲渡したものは、債権譲渡後も返済の窓口はアエルのままでした。その場合は、借主のところにはアエルとJ.P.モルガンの連名で債権譲渡の通知が送られていますが、その後も返済はアエルにしてくれと書かれています。アエルはその受け取った返済金をJ.P.モルガンに渡していたわけです。これはアエルの民事再生手続申立の2年くらい前にそのような手続が行われています。アエルの民事再生手続申立後、J.P.モルガンは返済窓口をネットカード株式会社に変更して借主にその通知をし、その後債権をさらにエヌシーキャピタルという(ネットカードの関連会社の)貸金業者に譲渡しています。このケースでは、少なくともアエルからJ.P.モルガンへの債権譲渡通知後の過払い金(譲渡時点ですでに過払いであれば、譲渡後に支払った金額+過払い法定利息)はJ.P.モルガンに対して過払い金返還請求できるはずです。J.P.モルガンに請求すると、何故かエヌシーキャピタルが、うちが処理すると言って出てきますが。この場合に、アエルからJ.P.モルガンへの債権譲渡前からの過払い金まであわせてエヌシーキャピタルに請求できるかについては、いろいろハードルがあるように感じます(それに果敢にチャレンジしている弁護士もいますが)。

怪しげな業者からの請求
 アエルは、破綻前、破綻後を通じて、様々な貸金業者に債権譲渡をしています。そのために、10年以上前の借用証書のコピー付きで、「日立信販」から債権譲渡を受けたと称する怪しげな業者からの請求がなされるという事態が相当数起こっています。アエルに10年以上前から借りていたら、大抵は過払いか時効のはずですし、送られてくる書類には弁護士が見れば、債権譲渡通知の偽造とわかるような書類が横行しています。おそらくはアエルの債権譲渡先からさらに二束三文かあるいは不適正なルートで入手した顧客情報と借用証書のコピーで、そういうことに気がつかない(本当は過払いか時効で支払う義務のない)人々を騙して返済を受けようとする連中が跋扈しているのです。アエルに連絡しても、その顧客の債権はアエルから直接にはどこに譲渡したというところまでしか回答せず、「この譲渡通知明らかに偽造でしょ」といってやっても歯切れの悪い対応しかしません。こういった点でもアエル自身の無責任ぶりに驚きます。
 アエル絡みでは、そういう怪しげな業者からの請求も横行していますので注意する必要があります。

いっそ破産すればよかったのに:愚痴です
 アエルの民事再生手続は、過払い債権者について民事再生手続期間中に債権届出しなくても請求できることを認めた点は評価すべきですが、わずか5%(弁済率見直し後でも6.812%)という配当で過払い請求を免れるという大変残念な結果となりました。
 5%(弁済率見直し後でも6.812%)などという過払い債権者をバカにしたような配当率なら、いっそのこと破産させて、悪質な貸金業者に対してあまりに低い配当案では破産させられるという見せしめとした方がよかったと思います。このような前例を残すと、悪辣な貸金業者が過払い請求逃れのために民事再生や会社更生の申立を次々としてくることが予想されます。現に悪辣な取立で名をはせたSFCG(旧商工ファンド)が民事再生手続申立をしましたし(SFCGは、その後、債権の二重譲渡が発覚して破産に移行しましたが)、ロプロ(旧日栄)、武富士と会社更生手続の上で5%をさえ遙かに下回る弁済で更生計画が認可されるというひどい事例が続いています。

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