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 弁護士に依頼すると借金が減るわけ

ここがポイント
 利息制限法の制限利率(借入が10万円以上100万円未満で年18%)を超える借金は、利息制限法の制限利率で計算し直すことになるので、借金が減る
 現在の利率が制限利率以下でも、借り始めの利率が制限利息を超えていれば、借金が減ることになる
    
 消費者金融の金利は、多くの場合、2006年頃まで年23%〜年29.2%でした。1990年代前半だと業者によって年30%台のこともあり、もっと昔には年40%以上の時代もありました。

  利息制限法(りそくせいげんほう)

 利息制限法は、元本(借金の額)が
  10万円未満の場合            年20%
  10万円以上100万円未満の場合   年18%
  100万円以上の場合           年15%
を超える利息の約束は、上の利率を超える部分について無効であると定めています。(この「元本」が何を基準にするか詳しく知りたい人は「制限利率の基準は引き直し残元本でよかったか」を見てください)           
 弁護士が入ると、普通の弁護士は当然、利息制限法に従って、借金の初めから利息制限法の金利を適用して遡って計算し直します。これを「引き直し計算」と呼んでいます。消費者金融からの借金は、多くの場合10万円以上100万円未満ですから、その場合、年18%が適用されます。消費者金融からの借金の多くは年18%を超える借金ですから、遡って年18%で計算し直すと借金は減ります。借金の期間が長いほど減ります。
 多くの弁護士がそうしてきましたので、通常の消費者金融等は、今では、弁護士が入るとあまり抵抗せずに利息制限法に引き直した額で和解します。
 他方、利息制限法の範囲内の利率の場合は、長期間借り続けていても、利息制限法では借金は減りません。消費者金融でいえば銀行系のアットローンとかモビットは会社ができたときから年18%ですし、ジャックスも多くの場合年18%未満です。
 クレジットカードのカードローンも年18%のことが多いですが、クレジットカードでのCDキャッシング(たいてい20万円とかまでの枠で借りて翌月全額返すやつです)はたいてい年18%を超えていますので長期間20万円借りては翌月返しまた20万円借りるということを続けていた場合は、相当程度借金が減ることもあります。
 2010年6月18日に改正貸金業法が(ようやく)全面施行されて利息制限法違反の営業ができなくなりました(そのことについてはこのページの下の方に書いていますし、詳しくは「貸金業法改正の行方」を見てください)が、その数年前くらいからそれを見越して、利息制限法の金利(10万円以上100万円未満で言えば年18%)以内で貸し付ける消費者金融も増えてきました。その場合、一番最初の借入から利息制限法以内ならば、借金の元本は減りませんが、最初は利息制限法の金利を超える金利で借りて返済を続け最近になって金利が下がって今は利息制限法の金利以下という場合は利息制限法に引き直すとやはり借金の元本が減ります。
 借金の元本が減らない場合でも、弁護士が入って和解すると和解後の利息がつきません(そのことについては「和解すると利息が付かないわけ」を見てください)ので、借金の返済総額はけっこう減ることになる場合が多いですけどね。
一般的にいえばここまでですが、当然、次の疑問が出てきますね。

  消費者金融はなぜ利息制限法違反の営業を続けられたの?

 法律的には2つの理由があります。改正貸金業法が全面施行された2010年6月18日以前は、次のような事情があったのです。
 1つは、出資法(正式には「出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律」といいます)は、貸金業者が年29.2%を超える利息の約束をしたときについて刑罰を定めていました(昔はこのラインが年109.5%でした。これが順次年54.75%、年40.004%と下がり、2000年6月からは年29.2%となっていたのです)。つまり刑事上違法となる(犯罪となる)ラインは年29.2%超でした。民事上違法となるラインは利息制限法のラインで、民事上と刑事上で違法のラインが異なっていたわけです。従って、利息制限法に違反しつつ年29.2%以下という領域は民事上は違法だけど刑事上は違法でないというグレーゾーンとなっていたのです。
 もう1つは、貸金業規制法第43条の「みなし任意弁済」です。1970年代後半から1980年代前半にかけて消費者金融(サラ金)の厳しい取立で自殺者が相次ぐなどして社会問題化し、出資法の罰則金利が下げられ、貸金業規制法が制定されました。このときに、貸金業者との妥協の産物として、一定の条件を満たせば利息制限法の金利を超える支払も有効とするという「みなし任意弁済」の規定が生まれたのです。
 実際には消費者金融のほとんどは、貸金業規制法の「みなし任意弁済」の条件を満たしていませんでした。それでも消費者金融は、利息制限法を知らない素人には知らないのをいいことに、利息制限法を知っている素人には貸金業規制法の「みなし任意弁済」の規定を理由に、利息制限法違反の金利を取って営業していました。
 このグレーゾーン金利と「みなし任意弁済」の規定は、2006年12月の法改正で撤廃され、それが2010年6月18日に完全実施されたというわけです(このときの改正で、それまでの貸金業規制法は貸金業法に、法律の名前も変わりました)。
 ふつうの説明はここまでですが、「みなし任意弁済」について本当に適用されないか詳しく知りたい人は「みなし任意弁済をめぐる闘い」を見てください
 2006年1月13日、「みなし任意弁済」の適用の余地をほとんどなくす最高裁判決が出ました。実は、これによって、貸金業規制法の改正(みなし任意弁済の撤廃)がようやく動き始めたのです。詳しくは「みなし任意弁済の適用の余地はほぼなくなりました」を見てください
 利息制限法・貸金業規制法改正の際の経緯については、「利息制限法改悪はあまりにひどい」「貸金業規制法改正の行方」を見てください。

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