庶民の弁護士 伊東良徳のサイト

    ◆過払い金返還請求の話

 武富士の場合

ここがポイント
 残念ながら会社更生手続で債権届出しなかった人が今から過払い金を回収することは無理
 (その後意欲をなくしてこのページを更新してない)
 武富士の貸金債権は日本保証(「腎臓売れ」で有名になった日栄のなれの果て)が引き継いで取り立てしている

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  会社更生手続開始!

 2010年10月31日、東京地裁民事第8部は、武富士に対して会社更生手続開始決定を行い、武富士の更生管財人に申立代理人(つまり武富士の代理人)である小畑英一弁護士を選任しました。過払い債権者も含めた債権者の債権届出期間は2011年2月28日までと定められ、会社更生計画の提出期限は2011年7月15日とされました。
 2011年7月15日、過払い債権者に対しては過払い金の3.3%を更生計画認可から1年以内に弁済する(これは第1回の弁済で第2回の弁済があると書かれていますが、第2回の弁済があるとは限らず弁済率も書かれていません)とし、武富士は韓国の消費者金融業者の傘下で「アプロ株式会社」と名前を変えて「武富士」ブランドで貸金業の営業を続ける、つまり武富士の借り主に対してはびた一文負けずに取立を続け、今は停止している貸付も再開して貸金業者として復活して稼ぐという内容の更生管財人の更生計画案が東京地裁民事第8部に提出され、7月22日、この更生計画案が書面投票による決議に付されました。投票期間は2011年10月24日(必着)とされています。
 2011年10月31日、東京地裁はこの更生管財人が提出した更生計画を認可しました。更生管財人の発表によれば書面投票では更生債権者の85.43%、過払い債権者で見ると88.07%が同意したと発表されています。
 私としては、過払い債権者の債権を大幅カットして武富士を貸金業者として生き延びさせる更生計画が認可されてしまったことは大変残念です。
 その後、更生計画認可後にスポンサーが撤退し、代わりにJトラストがスポンサーとなるという動きが報じられ、更生計画の実施が危ぶまれていましたが、2012年1月になり、更生管財人が過払い債権者に対する支払を始めました。
 以下、順を追って説明します。

  会社更生手続開始申立と保全管理命令

 武富士は、2010年9月28日、東京地裁に会社更生手続開始申立を行いました(事件番号は東京地裁平成22年(ミ)第12号)。東京地裁民事第8部は、直ちに、保全管理命令、包括的禁止命令を出しました。保全管理人には申立代理人(つまり武富士の代理人)の小畑英一弁護士が就任しました。
 会社更生手続開始申立があると、裁判所は、通常、今回のように、まずは保全管理命令を出します。これによって例外扱いされる債務以外は武富士の支払が禁止されます。何が例外扱いされるかは裁判所が決めるのですが、今回の保全管理命令では従業員の賃金だけが例外扱いで、通常の保全管理命令で例外とされる少額の支払は例外扱いされていません。この扱いは申立側が特に要請したものと考えられ、申立側の過払い金債権者に対する敵対的な姿勢が感じられます。申立側が保全管理命令で支払の禁止を要請するのは、裁判所が禁止することで支払わなくてもいいというお墨付きをもらうためです。武富士のサイトでもさっそく、裁判所の保全管理命令が出されたので和解したものも判決が確定しているものも払えないと強調しています。武富士のサイトで公表された保全管理命令でも包括的禁止命令でも申立があったから決定したと書かれていますし、通常例外扱いする少額債務の支払をあえて例外扱いしなかったのは申立側の要請と考えられるのですけどね。また、保全管理命令が出たことで現在進行中の裁判手続はすべて中断し、過払い金返還請求訴訟については、基本的には復活せず過払い金債権者は会社更生手続開始決定後に債権届出をしてその中で権利主張することになります(9月28日までに弁論終結している裁判については、裁判所は判決の言い渡しができますが、その判決も判決とともに訴訟手続が中断しますので確定しませんし、どちらにしてもそれに基づく強制執行ができません)。
 そして、保全管理命令だけならば、すでに判決を得ている過払い金債権者が強制執行をすることは禁止されませんが、包括的禁止命令が出たので、現在行われている強制執行手続もすべて中止され、新たな強制執行はできなくなります。
 つまり、この段階で、過払い金債権者は、会社更生手続開始決定を待ち、債権届出をするしかなくなりました。

  更生管財人について:武富士の代理人を更生管財人にしていいのか

 会社更生手続開始決定がなされるとき、裁判所は同時に更生管財人を選任します。今回、東京地裁民事第8部は武富士の代理人である小畑英一弁護士を更生管財人に選任しました。しかし、それでいいのでしょうか。(小畑英一弁護士の資質を問題にしているわけではありません。あくまでも武富士の代理人である弁護士を選任することの問題です)
 私自身は、会社更生手続について詳しいわけでも経験があるわけでもありません。会社更生法事件は、適用対象が大会社ですし、関係するのもメインバンクなどの金融業者と大取引先や企業を買い取るスポンサーという具合に大会社間のせめぎ合いですから、弁護士で通常関与するのは大規模会社の代理人をするビジネスロイヤーたちです。私のような消費者側労働側の弁護士は基本的には関与することなく、私が会社更生法をめくるのはライフなどの更生会社に対する過払い金返還請求や更生会社の労働者の労働事件のときにちょっと調べた程度です。それを前提に述べますが、武富士の事件で申立代理人を更生管財人に選任することは、やはりおかしいと思います。

 「更生手続の成否は、適任者を管財人(保全管理人)に得ることができるか否かにかかっているといっても過言ではない。管財人や保全管理人の選任は、裁判所が行う決定事項の中で、最も重要なものといってよい」。これは私の言葉ではなく、東京地裁民事第8部で会社更生手続を担当している裁判官たちが書いた「会社更生の実務」(金融財政事情研究会、2005年)に書かれていることです(上巻304ページ)。武富士の会社更生手続に即していえば、自らが債権者であることを知らない潜在的過払い債権者に通知をして債権届出を促すかどうかも、武富士の経営者たちが資産隠し等の工作を行っていないかをどれくらい追及調査するかも、更生計画の中で過払い債権者の債権をどれだけカットするかも、更生計画で届け出期間中に債権届出しなかった(知らないためにできなかった)過払い金債権者を失権させて何も請求できなくするか債権届出した債権者と同様に請求できることにするかも、まずは更生管財人次第です。端的いえば、ライフのように、過払い金債権者に何も知らせずにおいて債権届出できなかった過払い金債権者が後から気付いて過払い金返還請求しても会社更生手続があったことを楯に一切の支払を拒むという不公正で血も涙もないやり方をするという選択も、更生管財人次第であり得るわけです。
 さて、東京地裁民事第8部の裁判官たちの書いた「会社更生の実務」では、次のように述べています。「東京地裁においては、申立人が推薦する者や利害関係のある者を法律家管財人に選任することは一切行っていない。」「・・・更生手続においては手続の公正性・透明性の確保が強く要請されるから、それを疑わしめるような利害関係を有する者を手続の適法性を保持する役割を持つ法律家管財人に選任することは避けるべきだからである。」(上巻305ページ)。この本は2005年の本ですが、2010年6月に出た第3刷でもこの記載はそのままです。武富士から依頼を受けて報酬をもらっている申立代理人である弁護士は、実質的には申立人が推薦する者そのものですし、利害関係のある者としかいいようがありません。
 この点、東京地裁民事第8部は、その後、いわゆるDIP型の会社更生手続という更生会社の現経営陣の参加を容認するやり方に傾いていますが、それを示した民事第8部部総括判事らが書いた論文でも、DIP型の採用の要件として、現経営陣に不正行為等の違法な経営責任の問題がないこと、主要債権者が現経営陣の経営関与に反対していないことを挙げています(「会社更生事件の最近の実情と今後の新たな展開」:金融法務事情1853号30ページ等)。武富士では、その経営に様々な問題が指摘されていますし、実質的には主要な債権者は過払い金債権者ですがその意向も聞いていない上にその保護に反する可能性が高いわけですから、現経営陣を関与させる要件は満たしていないと思われます。
 そうすると、東京地裁民事第8部の裁判官たちが指摘しているように、法律家管財人の役割の性質からして申立代理人を更生管財人に選任することは避けるべきですし、武富士の事件の性質から見ても現経営陣の関与や、その代理人たる弁護士の更生管財人就任はおかしいというべきです。

  債権届出について

 債権届出の期間は、2011年2月28日までとされ、現実には2011年2月28日までに武富士のコールセンターに連絡をした者については、武富士側で債権届出書を準備するのが遅れたのは武富士の事情によるとして実際の債権届出書提出が遅れても受理するという扱いがなされました。過払い債権者の届出要件の緩和は、そこまでで、どちらにしても2011年7月22日の更生計画案決議付議以降の債権届出は認められず、今後の債権届出はできない扱いとなっています。
 東京地裁では、ライフの会社更生事件で過払い金債権者についても債権届出期間中に債権届出をしなかったものはすべて失権させる(その後は過払い金返還請求が一切認められない)扱いをして、ライフがその後もそれを楯に一切の過払い金返還請求を拒否する血も涙もないやり方をしていることで批判されて思い直したためと見られますが、その後の消費者金融の会社更生事件、民事再生事件では、債権届出期間中に債権届出しなかった場合でも、過払い金債権者は、債権届出した場合と同条件で支払を受けられるという扱いをしていました。しかし、それは法律上そのような扱いが定められているのではなく、例外的な措置ですから、今回もそのような扱いがなされる保証はまったくありませんでした。そして、今回の武富士のケースと同様に小畑英一弁護士が申立代理人でありながら更生管財人となったロプロ(旧日栄)の会社更生手続では、ライフと同様に債権届出がなされなかった過払い債権者は失権し、その後過払い金返還請求はできない扱いとなっています。その前例を見れば、武富士の会社更生手続でも債権届出期間中に債権届出しないと過払い債権者も失権させられる可能性が高いと、以前から述べてきましたが、実際、過払い債権者の債権届出に対する配慮は、提出期限内に連絡を取った者について届出遅れを認めるという限度にとどまりました。更生計画案でも、未届け債権者に対する弁済は入っていません。

  更生計画等について

 更生計画案については、以前から、「武富士の代理人が更生管財人となったことから、武富士の資産隠し等が厳しく追及されて発覚するような事態はほぼ考えられませんし、武富士の債権者は人数だけでなく金額で見ても過払い金債権者が圧倒的多数となる可能性が高いので、大口債権者(普通はメインバンク等の金融機関)が譲ってくれて過払い金債権者への弁済率が高めになるということもまず期待できません。よほど気前のいいスポンサーが出てきて大盤振る舞いしてくれれば別ですが、武富士の業務の内容と長期の貸付停止の経緯からしてスポンサーから見たメリットは少なく、そういうスポンサーが出てくるとも思えません。おそらくただひたすら過払い金債権者が犠牲になる会社更生計画が作成されると予想されます。参考までに、同じく申立代理人が管財人になったロプロのケースでは過払い金債権者への弁済率は3%にとどまりました。」と書いていましたが、ほぼその通りになりました。
 更生管財人が提出した更生計画案では、過払い債権者に対する弁済は、「第1回」が弁済率3.3%で更生計画認可から1年以内に支払うとされ、これと別に法人税の還付請求・証券会社への損害賠償請求・元役員に対する損害賠償請求によって回収するお金を原資に第2回の弁済を行うとされています。第2回の弁済についてはその時期も弁済率も一切書かれていません。そもそも本当に回収できるのかどうかもわからないものですから、第2回の弁済があるかどうかもわかりませんし、元役員に対する損害賠償請求など、武富士から依頼を受けた現在の更生管財人が真剣にやるはずもありませんから、この第2回の弁済は更生計画案への同意を誘うための釣り餌にすぎないと考えておくべきでしょう。他方、武富士は、貸金業を行う「アプロ株式会社」と債権者への弁済を行って消滅する「TFK株式会社」に分割され、「アプロ株式会社」は韓国の消費者金融APROフィナンシャルグループの傘下企業として「武富士」ブランドを用いて消費者金融としての営業を続け、武富士の借り主に対する取立回収を続けるとともに、今は停止している貸付も再開して稼いでいくことになります。会社名をすぐに「株式会社武富士」に戻すことも法律上支障はありません。つまり、過払い金債権者に対しては、最大96.7%の債権カット(一応「第2回」弁済があると書かれているので「最大」と書いておきますが、実質的には96.7%のカットになるでしょう)を強いておきながら、武富士の貸金はびた一文負けずに取り立て、消費者金融としてそのまま生き延びて行くというものです。
 更生管財人の更生計画案が「第2回」弁済の原資という請求は、破産手続に移行した場合は破産管財人が行うことになりますから、その点では同じですし、むしろ武富士の元役員らに対する請求は現在の更生管財人より真剣に行うでしょうから、破産手続に移行した場合に、本当に配当率がこの更生計画案より低くなるかどうかはわかりません。
 武富士の会社更生手続では、法律上は可能だけれどもこれまでほとんどなされなかった、更生管財人以外の者による更生計画案の提出が2件ありました。1件は海外の社債権者によるもので事業の全部を廃止して精算するという内容で、配当率8.9%と算定していたようです。もう1件は過払い債権者265名の申立によって東京地裁から代理委員に選任されていた内藤満弁護士が提出したもので、武富士創業者の長男が最近国から支払を受けた税金の還付金約2000億円を取り立てて過払い債権者への弁済に充てることにより弁済率16.3%に達するというものと報じられています。東京地裁第8民事部はこのいずれについても決議に付さないことにしています。

  更生計画案の決議

 武富士の更生管財人の更生計画案は、書面による決議に付され、関係人集会は行われないことになりました。関係人集会が行われないということは、議決が分かれたときの続行集会や提出者(更生管財人)による更生計画案の変更という可能性はなくなったということを意味しています。
 議決は、具体的には議決の手続前に裁判所が決める組み分けに応じて行いますが、東京地裁の通常の運用通り、担保権者組と債権者組の2組に分けて行われます。更生計画が認可されるためにはすべての組で可決されることが必要です。過払い金債権者には関係がない担保権者組の話は置いて、債権者組での議決方法は、債権金額による多数決です。
 武富士の場合、債権者の中で過払い金債権者が占める割合は、更生計画案の記載から算定すると91.7%にも及びます。過払い債権者の(債権額で)54.6%が不同意なら、他の債権者が全部同意しても、更生計画案は否決されることになります。
 そのため、更生管財人は、過払い債権者に送る書類の中で否決されると配当率が低くなる、支払いも遅れると、一種の脅しをかけて、同意投票するよう誘導し、さらには個別に電話をかけて多数派工作をしてきたわけです。実際、ロプロのケースでも今回と同じ更生管財人から、更生計画が否決されると破産手続に移行し、その場合の配当率は2.02%という宣伝がなされた結果、債権者組で94.03%が更生計画に賛成しています。

  更生計画の認可

 2011年10月31日、東京地裁民事第8部は武富士の更生管財人から提出された更生計画を認可してしまいました。武富士の更生管財人の発表によれば、更生債権者の同意率(債権額基準)は85.43%、過払い債権者で見ると88.07%だそうです。
 大変残念なことですが、これにより武富士の過払い債権者は大幅な債権カットを受け、武富士は貸金業者として身売りした上ですが生き残って貸金業を続けることが決まりました。
 過払い債権者への支払は、更生計画に従い、認可から1年以内、つまり2012年10月末までに3.3%が支払われるということになります(当然のことですが、更生計画案に同意したか不同意にしたかは支払には影響せず、更生計画案に不同意意見を送った過払い債権者にも同じ条件で支払われます)。更生管財人は2011年12月中旬頃から支払を始めるとしています。

 更生計画認可後に、スポンサーが撤退し、代わりに小畑更生管財人が以前更生管財人を務めた「ロプロ」(旧日栄)の会社更生事件でスポンサーとなったJトラストがスポンサーとなるという怪しげな動きが報じられ、更生計画の実施が危ぶまれていました。
 しかし、2012年1月19日、私が担当した過払い債権者では、期限を守って更生計画案に不同意の意見を送った8人については、全員更生計画通りの「第1回」の弁済がありました。期限(2011年10月24日)までに更生計画案への意見をご連絡いただけなかったために11月1日に振込先を送った過払い債権者2人についてはまだ支払がありませんが。まわりの状況を見ていると、更生計画案への同意・不同意とは特に関係なく支払を進めているようです。

  これまでの武富士

 武富士は以前から債務整理等の交渉は本社管理部に一元化していました(東京近辺の場合)。取引履歴の開示はわりとスムーズで、利息制限法に引き直しても支払が残るときは早く和解したいと言ってくることが多かったのですが、過払いのケースについては以前から対応が遅い傾向にあります。で、基本的に裁判を起こしますが、どちらにしてもやはり対応は遅いと思います。
 弁護士への対応は、過払いとなるととにかく遅いという点を除けば、態度とかは悪くないのですが、一般の人への対応については、返済義務のない家族等への取立とかの問題が指摘されています。

  <業務停止処分>

 武富士は、調停手続中も借り主に電話をかけて取立をし続けたという理由で2003年8月2日から16日まで担当店舗の業務停止処分、支払義務のない者への取立を記録に残さず隠したとの理由で2004年12月20日から24日まで担当店舗の業務停止処分を受けました。
 この行政処分を受けた後も、また、支払義務のない親族への取立を行いそれを隠すために記録を残さなかったこと(前の行政処分と同じですね。まったく懲りてない)と、強硬な取立(中にいる人が「ドアを蹴られた」と認識するほど強くドアを叩き、玄関前で「貸した金返せよ」という文言の入った携帯電話の音楽を流した)を理由に、2008年5月16日、関東財務局から業務改善命令を受けました。

  武富士の取引履歴開示

 武富士に取引履歴開示請求をすると、管理部から写真のような書式で開示されます。
 このケースは1981年6月22日からの開示で、やはり途中からの開示です。
 武富士もコンピュータにいつからの記録が入っているかはばらつきがあります。
 かつて2000年に1977年からの取引の人について裁判を起こしたときは下の写真のように、1982年8月からの分がコンピュータの履歴として出てきました。


 コンピュータの履歴がない部分も紙の記録は残っています。このケースについても、下のような紙の台帳が裁判で出てきました。
 この台帳の取引履歴、金利を計算してみると日歩28銭(年利102.2%)。時代を感じさせますが、かつては消費者金融のトップ企業がこんな金利を取っていたのですね。サラ金地獄と言われたのも頷けます。
 もちろん、こんな金利を利息制限法に引き直すとあっという間に過払いになりますから、こんな時期からずっと切れ目なく借金をしては返し続けていたら数百万円の過払いになります。

  武富士の裁判対応

 武富士は、2009年までは、訴訟を起こしてもほとんどの場合はただ引き延ばしのための内容のない答弁書を出して、第1回口頭弁論期日は欠席して答弁書を擬制陳述させていました。第2回口頭弁論期日の前後になってようやく担当者から電話で和解してくれと言って来ることが多く、場合によってはその頃もなお連絡がなく、第2回口頭弁論には何も出して来ず誰も出て来ないことが多いので裁判所が弁論を終結してその連絡が行くと慌てて連絡してくるということもありました。
 争点が特にない事例だと、その段階で過払い金に法定利息(年5%)を乗せた金額あたりで和解していましたが、和解契約書の返送事務がとんでもなく滞っていました。例えば、第2回口頭弁論期日の直前に電話で和解の話し合いができて支払期日が1ヵ月後となったとします。普通そうなるとその段階で裁判所に電話して、口頭で合意ができたので口頭弁論期日を延期して欲しいと伝え、多くの場合は裁判所も期日を開いても無駄なので延期してくれます(稀に期日は予定通り開くから出て来いと言われることもありますが)。その場合、支払期日に1週間か10日くらい余裕を見て期日指定してもらって、予定通り入金があったところで訴えの取り下げをするのが普通です。しかし、武富士の場合、当時、入金は約束通りの時期にあったのですが、和解契約書がそれまでに返ってきませんでした。普通の貸金業者は和解契約書は事前に郵送してきてその後に入金があるのですが、武富士だけ現実には逆になっていました。現実的には入金があればいいのですが、理屈の上では和解契約書がないと後から「あの入金は間違いだった。返して欲しい」と言われたらまずいので、弁護士としては和解契約書が戻ってくるまで安心できません。支払期日が過ぎて、入金はあるのにその後さらに2週間経っても和解契約書が返って来ずに口頭弁論期日を再度延期してもらったこともあります。
 2009年後半にはそれがさらに悪化しました。2009年7月17日に第2回口頭弁論があった事件で、その日に電話してきて和解の合意をしたら、支払期日は約2ヶ月後の9月11日。以前は1ヶ月後でしたが、今はこれより早くならないと言われました。これまでの武富士の状況から、また和解契約書が遅れると予測して、裁判所に安全のために第3回口頭弁論期日は支払期日の約1ヶ月後の10月9日に指定してもらいました。これなら和解契約書が3週間遅れても大丈夫という線です。ところが今回はその第3回口頭弁論期日にさえ和解契約書も取り下げ同意書も間に合いませんでした。仕方なく、本来は取り消されるはずだった期日に裁判所に行って事情を説明して第4回口頭弁論期日を指定してもらいました。こうなると、和解なんかしないで判決をもらった方が早くなります。
 2009年10月20日、その次に起こした裁判の第2回口頭弁論期日の前日になって、また武富士の担当者から和解の申し入れがあったので、前の回の体たらくを指摘して、そういう状態では和解できないと言ったら、今度は申し入れてきた支払期日が来年4月。2009年7月に2か月後と言われたときでも、支払が遅くなったねと言った記憶がありますが、武富士レベルの大消費者金融で6か月後って。もう和解する余地ないですね。それで第2回口頭弁論期日で弁論終結してもらったら、その後武富士から弁論再開申請。何かと思ったら、出てきた書面は、今どき裁判所で通る可能性ゼロの武富士は悪意でない、悪意の立証責任は過払い請求者側にあるから立証してみろということと、その事案では完済後再借入までの空白期間が最大でも3か月なのに利息制限法引き直し計算が分断されるという内容。バカバカしいなと思いつつ、悪意推定が覆される特段の事情の立証責任は貸金業者側だし、最大3か月の空白期間で分断されるわけないでしょという書面を出しておいたら、再会弁論期日に武富士は欠席。裁判所も、最近武富士は戦法を変えたようで、再開申請が相次いでいますと苦笑い。結局直ちに弁論終結で、武富士が弁論再開申請で稼いだ日数は2週間だけ。それで、判決期日の前日の12月8日に電話してきて、12月25日には支払いますから計算書を送ってくれって。それで、計算書を出したら、1円の食い違い(端数処理の関係)まで4の5の文句を言ってきた(だったら最初から自分で計算して払えばいいのに)けど、予定通り2009年12月25日には支払ってきました。やっぱり和解するより判決の方がよっぽど早い。

 2010年に入ったあたりから、武富士でも「支配人」と称する末端のほとんど事情がわかっていない従業員が法廷に出てくるようになりました。それで、取引履歴で完済したところがあると、そこで基本契約書を作り直したかとかカードを回収したかとかさえ関係なく、空白期間がどんなに短くても取引の分断を主張したり、2009年7月10日とか14日の最高裁判決を口実に武富士は悪意の受益者ではないとか主張して引き延ばしを図るようになりました。2010年の春頃から、ホストコンピュータ内の取引履歴のデータをATM利用明細書の用紙にプリントアウトしてこれがATM利用明細書の発行控えであるかのような主張(はっきりそういう嘘を法廷で述べた「支配人」もいました。もちろん、その場で嘘言うのやめなさいとたしなめましたが、言ってる本人はよくわかっていないようでした。あきれました)をして、まったく無駄に大量の書証を出し、期日を空転させて紙と時間を浪費し続けるようになりました。武富士の主張が裁判で通ることは(完済後再借入までの期間が実際に相当程度ある場合に取引が分断されることがあるのを除けば)、まずありませんが、無意味な主張でも時間稼ぎをされて判決までの時間がかかるようになり、その間に武富士の支払がさらに悪くなっていくのが、唯一の悩みの種でした。

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