庶民の弁護士 伊東良徳のサイト

  ◆債務整理の話

 ヤミ金融には返す必要はない

ここがポイント
 ヤミ金融(超高金利の高利貸し)に対しては元本も含めて返さなくてよいというのが最高裁判例
 ただし、ヤミ金融が実際に借りた額と違う公正証書や借用証書を作って請求してくることがあり、その時は簡単ではない

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  ヤミ金融(違法高利貸し)に返さなくてよいわけ

 貸金業法(第42条)は、年109.5%を超える金利を約束した契約は無効と定めています。10日で3割とかのヤミ金はもちろんのこと、月1割でも年109.5%を超えます。ですから違法高利貸しの大半はこの規定で契約が無効となります。さらに、年20%を超えて年109.5%までの間についても、出資法違反の犯罪なのですから、当然に公序良俗に反する契約として民法(第90条)によって無効となると考えられます。
 さて、無効というだけなら、契約がなかったことになるわけですから、契約前の状態に戻すのが原則です。そうすると、利息は払わなくてもいいけれどもヤミ金融から受け取ったお金は返せということになりそうですね。まあ、実際、2003年の貸金業規制法改正での国会での議論では「元本も返さなくてよいとするとモラルハザードが・・・」などと議論していましたので、国会議員の方々はそうお考えなのかも知れません。
 しかし、民法は、不法の原因のために給付をした者は給付した物の返還を請求できないと定めています(第708条)。ヤミ金融は、犯罪に当たるような高金利の契約をして、利息の名の下に暴利を得、また脅して払わせることを狙って元本を渡しているのですから、これは、当然、不法の原因のための給付です。だからヤミ金融は渡したお金の返還請求はできません。
 ただし、こういうことを聞いて、最初から返さないつもりで借りた場合は、借りた方も詐欺になりますから注意してください。
 さらに、ヤミ金融に対して、返したお金を返還請求する場合、返還請求できるのはヤミ金融に支払ったお金と借りた元本の差額だけでしょうか、それともヤミ金融に支払ったお金全部(つまり形としては借りた元本分は得する)でしょうか。
 この問題は、長らく争われてきましたが、2008年6月10日、最高裁第3小法廷で、ヤミ金被害者がヤミ金に対して損害賠償請求する場合(この事件の事案では正確にはヤミ金融の上部団体に損害賠償請求したのですが)、ヤミ金融側は賠償すべき損害額から渡した元本分を差し引けないという判決が出ました。不法の原因による給付は取り戻せないという民法の趣旨と、ヤミ金融がお金を貸す(元本を渡す)のは法律に違反して暴利をむさぼるための手段に過ぎないということが、その理由です。
 実際には、ヤミ金融はしばらく営業したら事務所をたたんで移転してしまい行方不明になってしまいますし、個人名義の財産は隠していますから、現実には裁判をして取り戻すことは難しい場合が多いですが、取り戻せるケースではヤミ金融に支払った全額を取り戻せるということが、理論上確立したことになります。

  ヤミ金融に法的手続をとられたら

 さて、ヤミ金融の中には、法的手続をとってくるヤミ金融もいます。
 もちろん、出資法違反の契約をしたとばれれば、元本だけ請求しても裁判所で通じませんので、ヤミ金融だってそんなバカな主張はしません。
 借りるときに印鑑証明書を要求された場合は、内容もわからずに実印を押さされた紙の中に公正証書(こうせいしょうしょ)を作ることを委任する白紙委任状が入っていることがままあります。公正証書というのは公証人(こうしょうにん)が作成する文書で、これを作ると裁判をしないでいきなり強制執行ができることになっています。公証人は裁判官か検察官が引退後に就任しています。そういう人が作るのだから信頼してそういう強力な力を認められているのですが、これが実際には安易に作られているのです。貸金業者の従業員は公証人のお得意様で、公正証書にもたいてい「面識がある」と書かれています。
 ヤミ金融は、当然公正証書に違法な金利を書くわけには行きません。そこでどうするかというと、貸した金額を勝手に増やした公正証書を作るのです。ヤミ金融は貸すときに借り主に借用証書を渡すことはありませんから、借り主側は受取額と全く違う額の公正証書を作られても、真実の立証は簡単ではないということになります。
 公正証書を作られた場合は、お勤めの人の場合は給料の差押えをやってくるということが多いです。
 こうなると、法的な対抗策としては公正証書による強制執行を争う「請求異議の訴え(せいきゅういぎのうったえ)」という民事裁判を起こして、執行停止の申立をするということになります。執行停止にはヤミ金からの差押えの額(公正証書に書かれた借金の額)の3割〜5割程度の保証金を積むことを要求されます。でたらめな額の公正証書を作ってもどこかでほころびが出るものですから弁護士が付いてきちんと対応すれば最終的には勝てると思いますが、弁護士にとっては労力の多い手続です。
 印鑑証明書を簡単に渡すのはやめましょう!
 公正証書ではなく、白紙の借用証書に勝手に金額を書き込んで裁判を起こしてくる場合もあります。こちらは、差押えがないので緊急の対処は要らず、ゆっくり裁判に臨めばいいです。
 民事裁判の話で説明したように、裁判を起こされて放っておくと相手の主張がいかに嘘であろうと相手の主張を認めたものとみなされて、相手の主張通りの判決が出てしまいます。強制執行を放置しておけば、給料からどんどんお金を取られてしまいます。
 あきらめないで弁護士にすぐ相談しましょう。 

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