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  過払い金返還請求と和解

 民事裁判や交渉で和解をするかどうかは、最終的には、依頼者本人の判断です。過払い金返還請求の場合でも、そのことは同じです。

 私は、まず依頼を受ける段階で、和解水準について依頼者の意向を確認しています。基本的には、判決になった場合に取れると予想される金額からどこまで減額してよいかを確認します。依頼の時点ではっきりした意向を持っている場合は、基本的にその方針で進めます。1円たりとも負けないという意向であれば、相手方がその通り払うという和解案を出さない限り、判決を取りに行きます。私は、依頼者が1円たりとも負けないという意向なら、それで全然かまわないと思っています。判決を取る手間を惜しむことはありませんし、和解は強要するものではありません。ただ、私としては、判決ではなく和解で取れといわれるのなら、過払い利息(「悪意の受益者」の年5%の法定利息)をつけた判決予測額の1万円未満の端数くらいのカット権限は欲しいなと思っています。全然負けないといったら、やはり和解にはなりにくいですから。依頼時点では、決められないという場合は、その後の時点で意向を確認します。
 現在では、私は、過払い金返還請求の事件は、交渉で全額回収できるごく一部のケース(和解に素直に応じる一部の信販会社で取引履歴が全部開示されている場合)以外は、交渉せずに訴訟提起しています。消費者金融相手に交渉しても、過払い利息をカットした額の8割とか、およそ相手にするレベルでない話しかしてきませんので時間の無駄です(もっとも、依頼者がそのレベルでいいというのなら話は別ですが、そういう依頼者は、別の速さが売りの事務所に行くのだと思います。私のところには、そういう依頼者はほとんど来ません)。多くの消費者金融では、訴訟提起前の担当者にはその程度の権限しか与えられていないようです(そういう話を何度も聞かされました)。
 訴訟提起後は、消費者金融側から和解案が出されると、その水準が、依頼者の意向の範囲であれば和解し、依頼者の意向がはっきりしていて依頼者の許容範囲外なら単純に拒否し、依頼者の意向がはっきりしていないとか微妙な場合は依頼者に確認します。その場合、私は常に、この事案で判決まで行けば取れる見込みの額はこれだけ、相手方の和解案はこれだけということを明示します。裁判上の微妙な論点がある場合はその論点についてのこちらの強みと弱み、裁判官がこちらの主張を認めたらいくら、認めなかったらいくらという説明ももちろんつけた上で、どうするか聞きます。それなしでは依頼者が判断できるはずもありませんし、その説明をしないのでは弁護士がついている意味がないと、私は思います。

 和解を検討する上で、一番悩ましいのは、その消費者金融が倒産する恐れがあるとか、判決を取っても任意に支払わずしかも強制執行をする財産も見つからないという場合です。
 過払い金返還請求訴訟で、和解しないで判決を取ればどういう判決になるかは、かなりの確度で予想できますが、消費者金融がいつ倒産するかしないかはわかりません。SFコーポレーションは消費者側の弁護士が破産申立したときには「資産はある。過払い金は全額払える。」といって破産裁判所もそれを信じて破産申立を棄却したのにその後突然自己破産の申立をしましたし、武富士も、危ない危ないとはいっていましたが直前まで和解金の支払の遅れもなく新たな和解についてのためらいもなく突然会社更生手続申立に至りました。そのリスクを重視して金額が少なくても早期に和解するかどうかは依頼者自身に判断してもらうしかありません。和解しても支払前に倒産すればその減額した額を基準にさらに大幅カットされるわけですし、貸金業者はどこでも過払い金減額のためにうちも危ないと口にするのが昨今の常套手段ですから、私自身は、倒産する倒産するという業者に対しても気にせず判決を取る方がいいと思っていますが、和解なら回収できたはずだが和解を蹴って判決を待ったためにその前に倒産されて回収できなかったというケースもありますから、その問題は依頼者に判断してもらうことにしています。

 過払い金返還請求の場合、通常の裁判と違って、多くの場合は裁判を起こす前から判決結果が予想でき、そうでなくても裁判中の相手方の主張や裁判官の態度からたいていは判決の結果が予想できます。そういう事情もあって、過払い金返還請求の場合は、予想される判決額との比較で和解水準を検討することが容易にできます。
 そういうことから、私は、過払い金返還請求については、予め依頼者の和解についての意向を判決予想額からどこまで減額してよいかという形で確認し、途中で依頼者から倒産する恐れがあるから大幅減額してすぐに和解して欲しいなどといわれない限りは、それにそって、多くの事案では判決予想額の1万円未満の端数カットあたりで和解しています。

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