庶民の弁護士 伊東良徳のサイト

たぶん週1エッセイ◆
映画「ラスベガスをぶっつぶせ」
ここがポイント
 日本語タイトルはミスリーディング
 ギャンブルやアクションの映画ではなく青春映画として見るべき

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 MITの教授率いる学生チームが出てきたカードを数えてブラックジャックで荒稼ぎをもくろむ娯楽映画「ラスベガスをぶっつぶせ」を見てきました。
 封切り2日目の日曜日が映画の日(毎月1日)サービスデーと重なり、チケットを買うのも長蛇の列でした。

 MIT(たぶん説明しなくてもいいでしょうけどマサチューセッツ工科大学)の超秀才でハーバード大学医学部に合格したベン・キャンベル(ジム・スタージェス)は、母子家庭に育ち洋服屋でバイトしながら勉学に励んでいて、ハーバード大学に進学する学費が払えません。そのベンの数学能力と論理能力に目を付けたMITのミッキー教授(ケヴィン・スペイシー)が、カード・カウンティングでラスベガスで稼ぐ秘密プロジェクトにベンを誘います。最初は断ったベンも、進学のための資金獲得の誘惑と、美貌の同級生ジル・テイラー(ケイト・ボスワース)の誘惑に仲間に加わり、ラスベガスに乗り込み・・・というストーリー。
 MITの現役の教授が、かつてカード・カウンティングで荒稼ぎし、今もそのチームの黒幕っていう設定がすごい。アメリカでは弁護士も悪役の設定が多いけど、最近は工学系の教授も知的財産権で稼いでいるイメージがあって嫌われてるんでしょうね。
 この映画の大前提は、カードを数えることで残りのカードを読んでブラックジャックで勝つことですが、仮に完全にカウントしても残りのカードの出る順番はわからないから、勝つ確率が100%になる場面はかなり少ないはず。どちらにしても残りカードが少なくならないと勝てないはずですが、映画ではベンが同じテーブルで勝ち続けているのはどうしてなんでしょう?そのあたり、どうもカード・カウンティングの理屈がよく理解できないこともあり、納得できませんでした。ましてや、チームの仲間がベンに伝えるのは残りカードの数(枚数じゃなくて、A〜K)の合計だけ。これで確実に勝てる理由は、私には理解できません。

 この映画、日本語タイトルの「ラスベガスをぶっつぶせ」は、ミスリーディング。このタイトルだと「オーシャンズ13」みたいにカジノ経営者を追い落とす大勝負なり大陰謀を想定します。
 でも、ミッキー教授も繰り返し注意するように、我々はギャンブルをするのではない、これはビジネスだというのですし、勝つのも10万ドルクラス(事実としてみれば大変な額ですが、娯楽映画としては・・・)。
 結果としても、ラスベガスに大打撃を与える方には行きません。原題は「21」ですから、素直に行けば日本語タイトルは「ブラックジャック」あたりが穏当。確かに見たくなるようなあざといタイトルですが、タイトルに惹かれて行くと期待はずれになると思います。

 娯楽映画として厳しいのは、やっていることがギャンブル・勝負ではなく、当然に勝つ技術なのですから、ブラックジャックのシーンが見ていてドキドキしません。それがわかっているから、そのシーンは短いカットで切り上げていきます。
 ドキドキ部分は、ラスベガスの監視員との戦い。まぁ、監視員の側にもコンピュータ化(生体認証ソフトの高度化)でお払い箱が近いという事情があって、そのあたりもの悲しい風情ですけど。

 いくつかひねりがあって、制作者側がそのひねりに重点を置いているのが見えるので、さすがに具体的な結末には触れませんが、痛快・爽快って感じではありません。ちょっと肩をすくめて苦笑いって感じです。いろいろあったけど、考えてみたら悪くなかったなって・・・。ギャンブル・スリル・アクションの映画ではなく、青春映画として見るのが正解でしょう。

(2008.6.1記)

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