庶民の弁護士 伊東良徳のサイト

たぶん週1エッセイ◆
映画「22年目の告白 私が殺人犯です」
ここがポイント
 巧い作りではあるが、私はもう少し途中での不自然さを隠して欲しかった
 この巧さといくつもの不自然さのために、予告編の印象よりも、殺人事件や遺族感情に入り込めなかった気がする
 時効が成立した殺人事件の手記を出版して登場した犯人を名乗る男をめぐるサスペンス映画「22年目の告白 私が殺人犯です」を見てきました。
 封切り2週目日曜日、新宿ピカデリースクリーン2(301席)午前11時の上映は、9割くらいの入り。

 1995年に東京で起こった5件の被害者を近親者の目の前で後ろから縄で絞殺するという残忍な手口の連続殺人事件が、殺人事件の公訴時効撤廃の当日・施行直前の2010年4月27日午前0時に時効が成立し、当時おびき出された犯人と組み合い口を切り裂かれながら肩を銃撃しつつも取り逃がし、その報復として自室に仕掛けられた罠で目の前で上司滝幸宏(平田満)を殺害された刑事牧村航(伊藤英明)は、2017年、連続殺人事件の手記を出版した曾根崎雅人と名乗る人物(藤原竜也)が記者会見をすると連絡を受けた。曾根崎は、記者会見で一躍時の人となった後、遺族の医師山縣明寛(岩松了)の病院に謝罪のパフォーマンスに訪れ、曾根崎と遭遇した牧村は曾根崎を殴ろうとして取り押さえられる。曾根崎のサイン会には若い女性たちが押し寄せ、遺族の暴力団組長橘大祐(岩城滉一)の意を受けた組員戸田丈(早乙女太一)は曾根崎を狙って発砲し、遺族の娘岸美晴(夏帆)は曾根崎を刺そうとするが、いずれも牧村に阻止される。曾根崎は、かつて戦場カメラマンで帰国直後に起こった東京連続殺人事件の取材で名を挙げたジャーナリスト仙堂俊雄(仲村トオル)がメインキャスターを務めるNEWSEYESに生出演し、仙堂から追及されるが、番組で真犯人を名乗る人物がネットにアップした5件目の牧村宅での事件直後に縛られた牧村の妹里香(石橋杏奈)を映した映像が流され、食堂でテレビを見ていた牧村は・・・というお話。

 「巧い」つくりではあります。公式サイトのキャッチフレーズが「男の告白に、刑事が、遺族が、メディアが、そして日本中が動き出す!あなたは、その衝撃に裏切られる−。」で、確かに出だしからの流れ、曾根崎の正体に関しては、しっかり乗せられ、だまされました。また、殺人罪の公訴時効廃止をめぐる法技術的なポイントの、2010年4月27日午前0時までに(15年の)公訴時効が成立した殺人事件は公訴時効、その時点で公訴時効が成立していない殺人事件は公訴時効なしという遺族にとっても警察にとってもそして犯人にとっても天と地を分ける運命の1日も巧く使われています。
 他方で、進行の過程で感じられるいくつもの不自然さ(それを具体的に書くとストレートなネタバレになってしまうのであえて書きませんが)があり、これをもう少し拭えないかと感じるか、その程度に見せることが「布石」なのだと感じるか、たぶん評価が分かれるのでしょう。私は、ミステリーとして作る以上、もう少し隠して欲しい感じがしましたが。
 この巧さといくつもの不自然さのために、見る前の予想よりも、殺人事件そのもの、遺族感情そのものに入り込めなかったという印象を持ちました。予告を見ている段階では、もっと曾根崎に憎しみを感じ、遺族の心情に涙すると予測していたのですが。

 不自然さとは別に、東京に来て15年たっても関西弁が抜けない人が、それから7年後には関西弁がきれいに抜けてるっていうのは、今ひとつ日頃の経験からの実感に合わないように思えるのですが・・・
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(2017.6.18記)

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