◆たぶん週1エッセイ◆
映画「252 生存者あり」
災害に巻き込まれて救助を待つ被災者とハイパーレスキュー隊をめぐる人間ドラマ「252 生存者あり」を見てきました。
異常な高潮が東京湾岸を襲い、地下鉄新橋駅構内にいた人々は水流に押し流され、瓦礫で出入口は埋もれ、生き残った5人が今は使われていない旧新橋駅の構内にたどり着いて、ハイパーレスキューの「生存者あり」の信号「252」を打ち鳴らしながら救助を待つというストーリー。
地下生き残り組が、元ハイパーレスキューで救助作業中の事故で兄である篠原隊長を救い同僚を救いきれず見捨てたことになることを苦にレスキューをやめた篠原祐司(伊藤英明)とその7歳の娘で聾唖者のしおりちゃん(大森絢音)、ひねくれた性格の研修医重村誠(山田孝之)、韓国人のホステスキム・スミン(MINJI)とお笑い芸人・・・いや、気のいい関西の中小企業社長藤井圭介(木村祐一)。はぐれた娘を無事に見つけるだけでも、映画だからねって感じですが、元レスキュー隊員と医者がいるというのもいかにもですね。それはさておき、この若い研修医が、前半、身勝手でことあるごとに文句ばかり言って喚き散らし、いかにもすごい悪い性格。画面見てて怒鳴り返したくなります。祐司がそれに怒鳴り返さずに、静かに頼みながら落ち着けていき、最後には信頼を勝ち取っていくところがまたドラマですね。しおりちゃんのけなげさ、かわいさは心温まりますが、重村の身勝手ぶりと祐司の抑制的な落ち着きもなかなかの熱演だと思います。
救助側では、隊員の安全と被災者をなんとか助けたいという思いの葛藤が繰り返し描かれます。災害現場で、どこまで飛び込み、どこで撤退するか、そしてその判断は正しかったのかという問いかけが、若い現場の隊員、現場の隊長、本部の間での思いのズレを見せながら繰り返されています。篠原隊長(内野聖陽)自身が、過去には部下を助けきれず殉職させてしまったことへの後悔を持ち、現在は家族を助けてと迫る祐司の妻、自分自身弟を助けたいという思いと本部の指示で待機せざるを得ない立場に挟まれて苦悩しています。この篠原隊長の苦悩の表情がいい。
人間ドラマとしては、災害で引き裂かれた家族の生還と再会、地下生き残り組の反目から団結への流れ、レスキューの熱意と苦悩など、見せ場いっぱいで、考えさせられもしますし、胸が熱くなりました。
祐司がレスキューをやめてホッとした、何で他人のために命を張ってと思っていたが、自分の家族が被災者になって初めてわかった、救助される側にはレスキューだけが頼りなのよって泣き叫んで、危険だから待機を命じられている隊長に見殺しにするのかと迫る祐司の妻。単純に被災者の妻ならいいけど、レスキューの実情を知っていて、しかも自分の夫がレスキューにいるときは危険を冒して欲しくないと思ってたと言いながら、それを言うかなぁ。そこまで言ったら、重村の父親に「人殺しっ」て石投げた遺族と同列に見えちゃいますが。
災害の設定は、「震度5強」の地震で小笠原近海の地割れが進みマグマでメタンハイドレートが加熱されて噴出し海水温が上がって異常な上昇気流が生じて、巨大な雹が降り、異常な高潮を生じ、超大型台風が発生するということになっています。ちょっと首を捻りましたが、まぁそれはいいとして、気象庁の人間が地震の規模を表すのに「震度5強」の地震なんて言いますかね。震源がどこで、どこの震度が「5強」なのかによって、どれくらいの地震なのかも変わってきますし、普通気象庁関係者なら地震の規模はマグニチュードで言うと思うんですが。
避難していた部屋が倒壊して瓦礫に埋もれてもしおりちゃんが擦り傷一つないのは、ドラマとしてはいいですが(しおりちゃんが負傷した映像なんて見たくないですもんね)、地盤が崩落して生き埋めになってほとんど無傷で自力で出てこれるとか、崩落直後にレスキュー隊員が地盤が崩落した現場を足元も確かめる様子もなく全然無警戒に走り回るのはちょっとね。
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