◆たぶん週1エッセイ◆
映画「きっと、うまくいく」
正義と悪の2項対立というよりも悪ガキ(いたずらっ子)対大人の構図の方に近い、学園青春もの映画
見やすい展開と、ランチョーの素性と行方のミステリー的興味で、あまり長さを感じさせない
インド国内で歴代興行収入1位の記録を打ち立てた2009年のインド映画「きっと、うまくいく」を見てきました。
封切り3週目日曜日、シネ・リーブル池袋シアター2(130席)午後0時15分の上映はほぼ満席。
動物写真家となって活躍中のファーラン(R.マーダビン)は旅行に出るため飛行機に乗ったところで、超エリート大学ICEで同期だったサイレンサーから呼び戻され、大学時代の友人ラージュー(シャルマン・ジョーシー)を呼びつけて、ICEに向かった。サイレンサーは、ファーランとラージューの友人だったランチョー(アーミル・カーン)にいたずらをされて恥をかいた夜、10年後の9月5日にここで再会しどちらが偉くなっているかを賭けようと宣言し、そのために2人を呼び寄せたのだが、肝心のランチョーは現れる様子がない。大学卒業後行方不明となったランチョーに会えると思って駆けつけた2人は怒り、サイレンサーの情報を元にサイレンサーの車でランチョーを探しに出た。学生時代、ランチョーは、ファーラン、ラージューと寮で同部屋だったが、規律を押しつける連中や学長と対立し、優れた思考力で難題を解決しながらも学長に疎まれて迫害され、2人もそれに巻き込まれながらランチョーの正義感とユーモアと行動力に惹かれ、友情を深めていったのだった。しかし、サイレンサーの情報で尋ねたランチョーの邸宅にいたのは、彼らの知るランチョーとは別人で…というお話。
インド映画にしては歌と踊り(乱舞)の場面が少なく、悪役の学長が不正などはせず厳しいけれども比較的フェアな姿勢をとっていて正義と悪の2項対立というよりも悪ガキ(いたずらっ子)対大人の構図の方に近い、学園青春もの映画です。
超学歴社会となったインドの教育問題をテーマとして、超エリート大学の教育を学問ではなく点の取り方を教えていると批判し、なりたいものになる(やりたい仕事をする)べきと繰り返すランチョーと、大学側や周囲の学生の親たちの対立の形で問題提起をしています。
そういう堅めのテーマを選びながら、映画としては悪ガキっぽいランチョーの行動とそれに振り回される周囲の様子がコミカルに描かれ、ランチョー、ファーラン、ラージューの友情、ランチョーと学長の娘(カリーナ・カプール)の恋も絡んで、青春グラフィティ&ハートウォーミングコメディになっています。歴代興行収入記録を支えた観客の大半はその線で映画を楽しんだ人たちだと思います。
途中、"Interval " (幕間、休憩)の字幕が出ながらそのままノータイムで後半に入り、2時間50分通しの上映でしたが、見やすい展開と、ランチョーの素性と卒業後の行方をめぐるミステリー的興味で、あまり長さを感じさせませんでした。
原題は " 3idiots "(3人の愚か者、3バカ)。日本語タイトルは、ランチョーが自分や人を落ち着かせるために度々唱える " All is well " ("Aal Izz Well " とも…)から。この日本語タイトルは、悪くないかも。
(2013.6.2記)
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