◆たぶん週1エッセイ◆
映画「愛にイナズマ」
不器用な家族の人間ドラマだが、なぜか安倍政権批判のテイストが…
癌・余命宣告を受けたら、自分ならそれを誰に知らせるか、考えさせられた
自主映画の監督が家族の物語を撮ろうと長年疑問に思ってきた家族の秘密に迫る映画「愛にイナズマ」を見てきました。
公開3週目日曜日、新宿ピカデリーシアター7(127席)午後1時5分の上映は9割くらいの入り。
自主映画を撮り続けてきた映画監督折村花子(松岡茉優)は、20年前に出奔した母を題材とした「消えた女」という企画で制作費を得て企画を進めるが、プロデューサー原(MEGUMI)にあてがわれた助監督荒川(三浦貴大)から脚本や撮影方法でダメ出しを繰り返されて対立し、監督を降ろされてしまう。酔っ払いに路上で意見して殴られそうになっている学生をかばって殴られた愚直で不器用な青年舘正夫(窪田正孝)をバーで再度見て意気投合した花子は、夢をあきらめるのかと正夫に挑発され、正夫を連れて長らく連絡しなかった父(佐藤浩市)を訪れて、母の出奔の真相を告白するように迫るが…というお話。
基本的には、それぞれに不器用な生き方をしてきた人たちが、真実をおろそかにしたくないと不器用に迫る花子にほだされる人間ドラマです。
しかし、その中で多額の金をつぎ込んで配布したが誰も使わないアベノマスクをみんなからもらってつけているという青年を登場させ(その台詞でアベノマスク配布に一体いくら金がかかったかを延々と説明させ)、「あったことをなかったことにする」ことが許せないと花子に繰り返し言わせるこの演出は、やはり安倍政権批判を意図しているのだろうと感じました。
花子の父の側から、癌・余命宣告を受けたとき、自分ならそれを誰に知らせるだろうかと考えさせられました。
胃癌であと1年の命と知った花子の父は、友人(益岡徹)の勧めで花子に繰り返し電話をし、電話に出ないならメールでもという友人に対し、大事なことは直接言わないと、と言ってそのまま。時折連絡していた次男(若葉竜也)はいつ知ったかは明らかにされませんが知っていて、長男(池松壮亮)には花子が押しかけてくるまで電話をしていません。さまざまな経緯と感情はあるでしょうけど、同じく連絡が途絶えている子どもの間で差をつけるか。また独り立ちしている子に心配させ巻き込むような連絡をするか。でも、やはり死ぬ前には会いたいよね、とか。(2023.11.12記)
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