庶民の弁護士 伊東良徳のサイト

たぶん週1エッセイ◆
映画「アマルフィ 女神の報酬」

 フジテレビ開局50周年オールイタリアロケ映画「アマルフィ 女神の報酬」を見てきました。
 封切り初日午後でしたから、さすがにほぼ満席でした。

 イタリアで開かれるG8会合にテロ予告があり、要人警護のためにローマに派遣された警備担当の外交官黒田(織田裕二)が、イタリア語に不安のある在イタリア日本大使館の研修生安達(戸田恵梨香)に頼まれて邦人少女(大森絢音)の誘拐事件に通訳として付き添った際に犯人からの電話にとっさに父親だと名乗ったことから誘拐された少女の母(天海祐希)に付き添って誘拐事件に巻き込まれて犯人を追ううちに、誘拐犯の本当の目的が別にあることがわかり・・・というお話。

 映画のストーリー展開としては、頭は切れるが独断専行で横柄なために孤立しがちな黒田が、冷静に(冷徹に)対応し犯人に迫っていく姿を、「渋い!」「Cool!」と評価できるかがポイントになります。登場人物で見たら、ほとんど織田裕二がすべて。天海祐希は娘を誘拐されて取り乱し感情的になり冷静な判断ができない母親をきちんと演じていますが、それだけに大人の女としての魅力がほとんど感じられません。織田裕二に振り回され、頭に来ながら、しかし信じて付いていく戸田恵梨香と、やはり織田裕二の独断専行に怒りながら、しかし織田裕二の行動力を評価するバルトリーニ警部(ロッコ・ババレオ)くらいが、脇を固めてるってところ。やっぱり「織田裕二がすべて」に近い。
 織田裕二が気に入らない人にとっては、ローマ観光ガイド、アマルフィ海岸の美しい映像、そしてサラ・ブライトンの歌唱シーンのぜいたくさで楽しむしかないでしょう。

 ローマを舞台に犯行グループと主人公が謎解きで対決といえば、当然に「天使と悪魔」と比べてみたくなります。サンタンジェロ城(「天使と悪魔」で敵方がアジトにしていたところ)が誘拐犯の指定場所の1つにされるのは、当然にそれを意識してのことでしょうし。
 私は、主人公の謎解きと犯人との知恵比べ部分に限って言えば、この作品、映画の「天使と悪魔」と比較してもそれほど遜色ないできだと思うんです(映画の「天使と悪魔」が謎解き部分では原作の味を再現できてないという問題があるからと言えますが)。
 しかし、問題はその後。銃を構えて人質を取って立てこもったところに警官隊が突入してきたら、すぐ射殺されるでしょ。それが無事に走って逃走できるって、かなり無理。犯人グループも、ここまで周到な作戦を立てて準備してきたのが、正体はテロ組織じゃなくて、主犯のお友達グループっていうのもお粗末な感じ。主犯の動機も、これだけ緻密な犯行計画からすると、ちょっとなぁって感じですし。織田裕二がさらに犯人グループが人質を取って立てこもる現場に丸腰で単身乗り込んで、言葉だけで説得したり、ましてや主犯がためらったら犯人グループがみんなあきらめるって・・・。そのあたりの、織田裕二が出てきたら敵方は勝手に自ら斬られて倒れていくみたいな、そこのけそこのけ織田裕二が通るみたいな陳腐な展開が、作品を安っぽくしているように思えます(普通なら、織田裕二、2回は射殺されてますし、それに日本政府はかばわないで懲戒免職し、逮捕されてるはず)。

 タイトルの「アマルフィ」(イタリアの観光地、世界遺産)はいいんですが、「女神の報酬」は見終わっても、誰が「女神」で何が「報酬」なのか全然わかりませんでした。
 それは置いても、ローマの南東方約200kmのアマルフィにローマから向かう黒田の車が、海(ティレニア海)が観客席側(つまり観客席側が南西方向)の映像で右側から左側に(常識的な方向感覚では北西方向に)走り続けるのは何故?

**_****_**

 たぶん週1エッセイに戻る

トップページに戻る  サイトマップ