庶民の弁護士 伊東良徳のサイト

たぶん週1エッセイ◆
映画「アベンジャーズ エイジ・オブ・ウルトロン」
ここがポイント
 前作と比べても戦闘シーンが中心をなし、人間ドラマとしての深み/掘り下げを感じにくい作品に思える
 兵器産業で財をなした死の商人であるトニー・スタークが平和を言う欺瞞の指摘は尻すぼみ

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 マーベルが握りしめた柳の下の2匹目のドジョウ「アベンジャーズ エイジ・オブ・ウルトロン」を見てきました。
 封切り7週目日曜日、ヒューマントラストシネマ渋谷シアター3(60席)午前11時40分の上映は8割くらいの入り。
 興行収入は世界歴代6位、全米歴代8位。公式サイトが「歴代1位の『アバター』、同2位の『タイタニック』に迫る勢い」と書いていたのには、後半の伸びがなく及びませんでしたし、前作に及ばなかったこと、同じ2015年公開作品の「ワイルド・スピード SKY MISSION 」に世界興収では追いつけず、「ジュラシック・ワールド」に世界・全米ともに追い抜かれたことで大ヒットのイメージが損なわれましたが、客観的な数字を見る限り、興行収入としては歴史的な作品となりました。

 ロキの杖の力を用いて新たな戦闘兵器開発を続ける敵組織「ヒドラ」に攻め込んだアベンジャーズは、人体実験により目に見えないほどのスピードで動く超能力を身につけたクイックシルバー(アーロン・テイラー=ジョンソン)と人の心を操る魔法を身につけたスカーレット・ウィッチ(エリザベス・オルセン)の双子に襲われ、トニー・スターク(ロバート・ダウニー・Jr)はアベンジャーズが殲滅された幻を見て愕然とする。ロキの杖と棺に入った兵器を回収したトニー・スタークは、それを用いて、アベンジャーズの仲間にも秘密裡に人工知能の開発を進めるが、未完のまま動き始めた人工知能「ウルトロン」は、トニー・スタークが与えた目的である平和の維持について、人類を滅亡させることこそが平和の実現と考え、スタークの基地を飛び出し、人類滅亡に向けて準備を進め…というお話。

 前作の「アベンジャーズ」からのストーリーのつながりは、ほとんどありません。冒頭部分で何の説明もなく登場する敵組織「ヒドラ」とその指揮下にある人体実験により超能力を身につけた双子は、前作「アベンジャーズ」ではなく、「キャプテン・アメリカ ウィンター・ソルジャー」の本編とエンドロール後に登場してそこからの続きのようです(私は「キャプテン・アメリカ ウィンター・ソルジャー」見てませんので、ネットで調べた限りでは)。関連作品全部見てる人にしかわからないストーリー展開って、不親切に過ぎると、私は思うのですが。
 前作と比べて、「情」の部分が、ハルク(マーク・ラファロ:前作に続き、本来のエドワード・ノートンではありません)とナターシャ(スカーレット・ヨハンソン)の恋愛感情と、ホーク・アイ(ジェレミー・レナー)の家族愛くらいで、だいぶ薄まっています。しかも、ナターシャのハルクへの愛の告白は、ニック・フューリー(サミュエル・L・ジャクソン)の指示による作戦的なものとされ、終盤でしらけます(あっ、これは明らかなネタバレ (^^ゞ)。
 双子がアベンジャーズに敵意を燃やした原因が、双子の両親を殺害した爆弾と退避後も自らの命を脅かした2発目の不発弾がスターク産業のものだったことにあるという設定は、兵器産業を経営して財をなした死の商人であるトニー・スタークが平和を言う欺瞞、平和の維持のためには武力が必要という「積極的平和主義」、そういったアメリカ的な「正義」への疑問を呈しているようにも見えます。しかし、その双子が、結局は、それほどきちんとした説明もなくアベンジャーズ側に付いてしまう(あっ、これもネタバレですね (^^ゞ)のでは、問題提起としても響きません。
 その結果として、戦闘シーンが中心をなし、人間ドラマとしての深み/掘り下げを感じにくい作品となっているように思えます。

 ラスト付近で、勝っても負けても、敵はなくならないという台詞があり、いかにも続編があるぞと示唆し、エンドロールの後には、敵(サノス、だそうです)が次は俺の出番だと、さらに明確に続編を宣言し、さらに一番最後には、「アベンジャーズは帰ってくる」と、とどめを刺すように続編を宣言しています。「アベンジャーズ」というタイトルとテーマなら柳の下に2匹目のドジョウがいると証明されたからには、3作目が作られるのは当然なのでしょうけど、ここまでくどく繰り返す必要があるのでしょうか。センスを疑います。
(2015.8.16記)

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