庶民の弁護士 伊東良徳のサイト

たぶん週1エッセイ◆
映画「バットマンvsスーパーマン ジャスティスの誕生」
ここがポイント
 スーパーヒーローをかき集めればぼろ儲けというさもしい根性の作品が蔓延するのは嘆かわしい
 スーパーマンの正義を疑うとき、バットマンに自らの苦い経験を反芻させる程度の深みは付けて欲しい

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 DCコミックのヒーローかき集め映画「バットマンvsスーパーマン ジャスティスの誕生」を見てきました。
 封切り2週目日曜日、新宿ピカデリースクリーン1(580席)午前11時45分の上映は8割くらいの入り。

 スーパーマンが登場した「マン・オブ・スティール」でクリプトン星の反乱軍ゾッド将軍(マイケル・シャノン)がスーパーマン(ヘンリー・カビル)を追って地球に現れスーパーマンがこれと闘った戦闘で、ブルース・ウェイン(ベン・アフレック)が経営するウェイン・エンタープライズの従業員を始め多数の人が犠牲になった。砂漠のアジトで「デイリー・プラネット」の記者ロイス・レイン(エイミー・アダムス)がゲリラの首領のインタビュー中、武装兵士がグループを射殺し始めグループのメンバーがレインに銃を突きつけるとスーパーマンが現れてレインを救い、兵士に家族を射殺された遺族はスーパーマンを恨んだ。市議会は公聴会の開催を決定しスーパーマンを召喚し、スーパーマンは公聴会に出席したが、公聴会が始まるや、議場が爆破された。ブルース・ウェインは、スーパーマンの追放を決意し、準備を始めるが…というお話。

 ライバル会社のマーベルが、ディズニーに買収されたこともあってか、それぞれの作品の世界観の違いとかブランド価値とかも無視して知名度の高いスーパーヒーローをかき集めた映画を作ればぼろ儲けというさもしい心根で作った映画が、大当たりし、性懲りもなく作った続編もまた大当たりし、近々公開の「シビル・ウォー」の予告編ではこれまで孤高を保っていたスパイダーマンもついに合流という事態を見せつけられて、DCコミックも我慢できなくなり同列の作品の制作に手を染めた、という趣の作品。DCコミックの看板のスーパーマンとバットマンの他、ワンダーウーマン(ガル・ギャドット)が登場、それ以外にもDCコミックのキャラクターが何人か登場しているそうです。私には見ていてよくわかりませんでしたが。
 今回、ブルース・ウェイン=バットマンがクリスチャン・ベールではない事情は今ひとつよくわかりませんが、おかげでなかなかピンとこない状態が続きました。「アベンジャーズ」の制作の際、「超人ハルク」のエドワード・ノートンが出演を拒否したような話なら痛快ですが…
 シリアスで陰鬱な雰囲気の両作品をつなげるのなら、ダークナイトシリーズで自らの信念では正義を貫き悪と闘い続けているのに民衆から恨みを買い汚名を着せられてきたブルース・ウェイン=バットマンが、正義の味方の超人スーパーマンに対して持つ嫉妬心/僻みと、スーパーマンが正義の味方なのかと問われる事態への自らのスタンスをめぐる複雑な思いを描いて欲しかったと思います。この展開なら、当然にそういうことに考えが及ぶはずですし、ごく普通に脚本を書いても、ブルース・ウェインの執事アルフレッド(ジェレミー・アイアンズ)に「ウェイン様も同じように言われてきましたからね」くらいのことを言わせるものだと思うのですが。

 全体が荒唐無稽な話なので、こういうことを言っても無意味とは思いますが、ストーリーのキーポイントになるところで、遙か彼方の砂漠で銃を突きつけられようが、ビルから突き落とされようが、水中でもがいていようが、恋人のロイス・レインの危機と所在は確実に察知して救出できるスーパーマンが、レックス・ルーサーから母親を人質に取ったと言われてその居場所を察知できないというのは、そうしないと見せ場が作れないのですが、不思議でした。

 悪役/陰で糸引く人物レックス・ルーサー(ジェシー・アイゼンバーグ)が、金持ちのボンボンのチャラ男なのが興ざめ。アクションものは、悪役がどっしりしていないと締まらないと思います。スター・ウォーズエピソード7のレンもそうでしたが、そういうのが流行っているのでしょうか。「どっしり」でなくても「ダークナイト」ではジョーカー(ヒース・レジャー)というキレた悪役のおかげで作品がスリリングになりレベルアップしていたのを思い起こすにつけ、キャスティングを考えて欲しかったという思いが募ります。
 ラストは、ひたすら続編を作るぞの大合唱。さらに仲間を集めるとも言っていますから、続編はさらに「アベンジャーズ」っぽくなるんでしょうね。
 こういう映画が公開初週末(日米同時公開)全米歴代7位のオープニング興収を記録(同種の「アベンジャーズ」が歴代3位、「アベンジャーズ2」が歴代4位だそうですが)してしまうのですから、当然続編が作られるのでしょうけれど、「マン・オブ・スティール」も「ダークナイト」シリーズもシリアスで重厚な世界観の作品だったはずなのに、もう少し上品にやれないものですかね。日本ではオープニング興収が同週公開の「暗殺教室 卒業編」に加えて4週目の「ドラえもん 新・のび太の日本誕生」にも及ばず3位にとどまったのはせめてもの慰めというところでしょうか。
(2016.4.3記)

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