◆たぶん週1エッセイ◆
映画「武士道シックスティーン」
いかにも予定調和的なスポーツ青春ものの展開で、ひねりもほとんどない
でも、北乃きいのはじけるような笑顔と、最初は硬直し拗ね気味の成海璃子の終盤の会心の笑顔ですべて許せる気がする
成海璃子主演の剣道青春映画「武士道シックスティーン」を見てきました。
封切り2週目日曜午前は6〜7割の入り。観客は若者が多数派ではありますが、なぜかおじさん一人客がけっこう目につきました。
剣道の中学全国チャンピオン磯山香織(成海璃子)は、ある試合で東松学園甲本の垂れをつけた選手に敗北を喫してしまう。中学で同学年に負けたのは初めての香織は、甲本と戦うために東松学園高等部に入学する。しかし、両親の離婚で西荻に姓が変わっていた早苗(北乃きい)は、ほとんど実績のない無名選手で、逃げるのは巧いが勝ちにこだわらない楽しむために剣道をやっている選手だった。こんな選手に負けたとはと憤る香織は、早苗を追いかけ回し、お前はもっと強いはずだと叱咤激励し、父の道場で稽古をつけ続ける。インターハイ県予選で1年生ながら香織は先鋒、早苗は補欠となり、準決勝まで勝ち進むが、試合の合間に早苗と口論になった香織は弾みで階段から落ちて左手を負傷してしまう。香織は、怪我を隠して準決勝は右手一本で乗り切るが、試合後倒れ、代わりに出場した早苗が香織の助言もあり勝ってインターハイ出場を決める。しかし、予選終了後、香織は部に来なくなり、道場での稽古もやめてしまう。本戦を前に、香織に代わって先鋒に選ばれた早苗は、香織に「私が勝ったら部に復活する」という条件の果たし状を突きつけるが・・・というお話。
いかにも予定調和的なスポーツ青春ものの展開で、ひねりもほとんどありませんが、北乃きいのはじけるような笑顔と、最初は硬直し拗ね気味の成海璃子の終盤の会心の笑顔で、おじさんはすべて許してしまいます。あまり難しいことは考えずにそういう見方をする映画かなと思います。
ここのところ主演作は、「罪とか罰とか」「山形スクリーム」とサムイ系のコメディが続いていた(そういう映画もしっかり見ている私って・・・)成海璃子が、ようやく青春ドラマの王道を歩めたというだけでもちょっとホッとしてしまいました。
それはさておき、強くなることしか眼中になく休み時間中も「五輪書」を読み筋トレに励み続ける香織と絶対に東松学園をインターハイで優勝させろと香織をしごき続ける父(小木茂光)の「巨人の星」っぽい父子に、香織をケーキバイキングやプリクラに誘うお気楽少女の早苗と画期的な発明をしながらノウハウを全部しゃべってしまい裁判でも大負けして借金まみれになって家出・離婚し隠れてレストランでバイトしながらオタクっぽいおもちゃの発明を続けるお気楽な父(板尾創路)コンビを対比させたところが巧い。
果たし合いに遅れて走って現れた香織に対して、おじさんとしては、早苗に「待ちかねたぞ、武蔵!」とか言わせるかと思うところですが、寝ていた早苗がのんびりと起きあがり「やっぱり武蔵だね」って。このあたりのずらし方が、持ち味なんでしょう。
わかりやすい映画ですが、県大会後香織が練習に来なくなる理由は、見ていてちょっとわかりませんでした。香織の兄を県大会決勝で破って全国チャンピオンになった岡先輩(賀来賢人)に声を掛けられ、早苗ちゃん、いい剣道をするね、個人的に知ってるんだけどということを言われた後剣道の練習をしなくなるわけですけど、香織は岡先輩に好意を持っていたという設定なんでしょうか。他にはそれを示唆するシーンはなかったと思いますが(だいたい岡先輩、早苗の姉の恋人だし。香織が好意を持ってるなら、それを知って・・・というシーンがあるはず)。
早苗の家庭、父親が借金まみれになって行方不明中って設定なのに、姉も学生みたいだし、早苗も中高一貫っていうことからして私立高校みたいだし、どうやって暮らしてるんでしょう。
(2010.5.2記)
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