庶民の弁護士 伊東良徳のサイト

たぶん週1エッセイ◆
映画「ミラクル7号」
ここがポイント
 ハートウォーミングなコメディ
 貧乏ながら実直に生きる父親とディッキーの姿、自分を犠牲にして人知れず人助けをする宇宙犬ナナちゃんがけなげで泣ける

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 貧乏親子の元にやってきた宇宙犬ナナちゃんの巻き起こすドタバタを描いたSFコメディ香港映画「ミラクル7号」を見てきました。
 封切り2週目の日曜日で入りは半分くらいでしたけど、意外にいい映画でしたよ。

 建設現場で肉体労働をし、廃墟のようなバラックに住み、妻が病死したときの病院代や葬式代の借金を抱えて極貧の生活にあえぎながら、子どもだけはと名門小学校に通わせている父親ティー(チャウ・シンチー:監督)と、父親がゴミ捨て場で拾ってきた穴の開いた靴しか履けず学校でいじめられても頑張る息子ディッキー(シュウ・チャオ:8歳の女の子だって!)の親子が、まず、けなげで切ない。貧乏しても嘘をつかず、人のものを盗まず、喧嘩をせず、一生懸命勉強するように諭し続ける父親の姿。子どもの側からは何度も言うなよと煙たがられます(それでも最初のうちはまじめに聞き続けるディッキーの姿も、いまどきの子とは思えないほど素直でけなげ・・・)が、親の立場からは、この父親の実直さと献身的な姿勢は、日本で言えば高度経済成長期に私たちが置き忘れてきてしまったものを見るようでもあり、ノスタルジーとともにせつなさがこみ上げてしまいます(このあたりでもう私は涙ぐんでしまいました)。
 そしてその貧しい生活を、哀しく描くのでなく、笑い飛ばせるたくましさも、見ていて気持ちがいい。

 そこに父親が拾ってきたゴムボールのようなものから登場した宇宙犬ナナちゃんが、騒動を巻き起こすという設定です。最初は、ナナちゃんがまるでドラえもんのように次から次へとアイテムを出してディッキーが大活躍し、本当にのび太とドラえもんを彷彿とさせますが、これは夢の中。現実には、公式サイトで「ここぞという局面でサッパリ役に立たない前代未聞の『使えねー』キャラ」と紹介されるナナちゃんは、夢と同じことを求めるディッキーの要求にまったく対応できず、ディッキーはナナちゃんに当たり散らします。ここまでだったら、ただのドラえもんパクリ映画ですが、自分の要求が勝手だっただけと悟った後から、ディッキーとナナちゃんの交流が始まります。
 このCGのナナちゃんが、とってもキュート。おもちゃと思いこんでいる父親にもてあそばれるシーンは可哀想ですが、ディッキーが学校に連れて行って子ども達に紹介されながら和むシーンなんてそれだけでも見る価値ありですよ。

 で、このナナちゃん、実は1つだけ特殊な能力があって、それを人知れず使ってディッキーたちを助けるのですが、これがナナちゃんの体力を激しく消耗させるようです。なんか、自分を犠牲にして人知れず人助けをするナナちゃんを見ていると、「幸福の王子」を思い浮かべてしまいました(ここもコメディを見てると思えず泣けますよ)。

 登場人物も、最初から貧乏なディッキーにも優しいいい先生のユエン先生(キティ・チャン)はもちろんのこと、いじめっ子も、意地悪に見える工事現場監督も、みんないい人になって(ディッキーの担任のカオ先生(リー・ションチン)だけは例外ですが)、和んで終われる印象です。
 最後、基本的にはハッピーエンドなんですが、登場人物の恋はいずれもうまく行かないようなのが、何から何まで荒唐無稽な設定の中で不思議に現実的で、かえってウィットを感じました。
 ドタバタのコメディなんですが、とってもハートウォーミングで、笑って泣けて、嫌な感じが残らなくてスッキリして、娯楽映画としては拾いものだと思いました。

(2008.7.6記)

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