庶民の弁護士 伊東良徳のサイト

たぶん週1エッセイ◆
映画「デッドマン・ダウン」
 組織に妻子を殺され復讐する男を描いたアクション・サスペンス映画「デッドマン・ダウン」を見てきました。
 封切り3週目土曜日、新宿ミラノ2(588席)午後2時30分の上映は1割くらいの入り。

 ギャング組織が経営する不動産屋に雇われた殺し屋兼用心棒のヴィクター(コリン・ファレル)は、実は2年前にアルフォンス(テレンス・ハワード)が手がけた地上げの際に別室で寝ていた幼い娘が流れ弾で死に、裁判を起こそうとていたところアルフォンスが雇ったアルバニア人たちに妻を殺され、自分も殺されかけたが危うく助かり、その復讐のために名前を変えて組織に潜入していたのだった。ヴィクターは、妻のおじから武器の提供を受けながらアルフォンスの部下を順次殺害し、死体に妻子とともに写った写真の破片をおいて、アルフォンスを追い詰めていった。アルフォンスのマンションの向かいのマンションに住むベアトリス(ノオミ・ラパス)は交通事故で顔の左半分に目につく傷を受け、近隣の子どもたちからは怪物と罵声を浴びせられ物を投げつけられ、復職もできずにいたが、飲酒運転の加害者は3週間で釈放され、恨みに思っていた。バルコニーからヴィクターが組織の人間を殺害するところを目撃したベアトリスは、ヴィクターを誘い、警察に通報しないことと引換に、交通事故の加害者を殺害することを要求した。一方、組織の新入りでできたばかりの子どもの名付け親をヴィクターに頼み子どもと妻を励みにしているダーシー(ドミニク・クーパー)は、手柄を立てようとして謎の連続殺人者を追い、ハンガリー人の墓にたどりつくが…というお話。

 組織に対する連続殺人を巡るミステリー部分は、公式サイトの紹介等では一応伏せられているのですが、映画の序盤で、ヴィクターがアルフォンスの組織にアルフォンスを殺害するために潜入してもう1年4か月になることが、妻のおじとの会話であっさりと明らかにされてしまうので、犯人が誰かではなく、ヴィクターが計画通りに復讐を実現できるのかが基本的な興味になります。ですから、そこのところはあっさり書きました(↑)。
 ヴィクターが、生前の妻と娘のビデオを繰り返し見ているシーン、幼い娘が靴紐を自分で結べるようになったとか、1人で寝られるようになったとかたどたどしく語る映像が胸をえぐります。やっぱり娘を殺されると憤怒で理性が吹き飛ぶでしょうね。
 殺し屋となっているヴィクターが、アルフォンスの部下やアルフォンスに雇われたアルバニア人に対しては情け容赦なく殺すのに対して、アルフォンスの部下でもその幼子を抱く姿を見ているダーシーや、ベアトリスから頼まれた交通事故の加害者については、躊躇する姿に、ヴィクターの人間性が感じられ、救われる思いもします。

 ベアトリス側では、引きこもり復讐心に燃えていたベアトリスが、次第にヴィクターに惹かれ外出や職場復帰に意欲を見せていくところも、救われる気がします。
 それにしてもベアトリスに怪物(Monster)と罵声を浴びせ、頭に何か投げつけていく子どもたち、中学生くらいに見えましたが、なんて残酷なのだろうと思う。日本でもホームレスを襲撃する中学生・高校生の事件が時々報じられますが、殺伐としたいやな世の中だなぁと思う。
 そうした中で、何度もくじけそうになりながら、ベアトリスが立ち直っていくところは、もう少しベアトリス自身の強さを表現できるともっとよかったと思いますが、この作品を見ていて一番ホッとするところかもしれません。

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