庶民の弁護士 伊東良徳のサイト

たぶん週1エッセイ◆
映画「世界でいちばん貧しい大統領」
ここがポイント
 多くの国民から選ばれる者は多くの国民と同じ生活をすべきだとしてそれを実践する姿に共感する
 近時の硬直した、犯罪者の更生はおろか敗者復活が非常に困難な日本社会の問題を改めて感じた
    
 ウルグアイの第40代大統領ホセ・ムヒカを描いたドキュメンタリー映画「世界でいちばん貧しい大統領 愛と闘争の男、ホセ・ムヒカ」を見てきました。
 公開3日目コロナ自粛延長中「不要不急の外出」自粛要請の日曜日降雪の中、ヒューマントラストシネマ有楽町シアター2(63席)12時30分の上映は3割くらいの入り。

 監督が葉巻を吹かし、ホセ・ムヒカがストロー付きのカップに入れた飲み物(茶色っぽかったですが、何でしょう。あまりおいしそうではなかったですけど)を飲んだり監督に勧めながら続けられるインタビューに、大統領就任前のホセ・ムヒカと妻ルシア・トポランスキーの写真や、大統領在任中のビデオ等を挟みながら、農業を営みつつ大統領職を務め、民衆と対話し、貧困者用の住宅や学校を作り、給料の多くを寄付し、外国と交渉したりスピーチする様子を紹介しています。

 多くの国民から選ばれる者は多くの国民と同じ生活をすべきだとして、自らトラクターで、さらにはスコップで農地を耕し、自ら乗用車を運転して通勤する姿は共感を呼びます。政治の世界で探すべきは大きな心と小さなポケットの人物だという言葉や給料の多くを貧しい人のために寄付していることと合わせ、監督がいちばん描きたかったテーマはここにあります。
 しかし、私はむしろ、この作品を見て、権力者や社会の大勢に抗う異端の少数者に対する民衆の評価の日本との違いの方に関心を持ちました。チェ・ゲバラに心酔し、軍事独裁政権に対する反政府勢力の活動家として、自らは銀行強盗などを行い、妻は文書偽造を担当し、13年間の刑務所暮らしを経て1985年に出所したホセ・ムヒカが、過去の活動について弁解することなく(銀行強盗は楽しかったと述懐していたように記憶しています)大統領に就任し、国民から愛される様子に、文化というか、価値観の違いを感じさせられたのです。近時の硬直した、犯罪者の更生はおろか敗者復活が非常に困難な日本社会は、世界標準ではないのだということを改めて考えました。
(2020.3.29記)

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