◆たぶん週1エッセイ◆
映画「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q」
前作に比べて狭い世界の中でのSFアクションアニメに純化した感じ
本来もっと魅力的に描ける女性キャラが、あまり活かせていないという印象
少年少女パイロットが操縦するヒト型兵器「エヴァンゲリオン」が戦うバトルアニメの映画化新シリーズ第3部「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q」を見てきました。
封切り7日目金曜日祝日、新宿ミラノ1(1064席)午前10時30分の上映は3〜4割の入り。毎度のことだけど、前評判が高い映画でも新宿ミラノではたいていガラガラかそれほどでなくても余裕で見れる。ヱヴァンゲリヲンも、同じ新宿のバルト9は深夜分以外は予約で完売なのに、この違いは何?って思う。宣伝が下手なのか、歌舞伎町のイメージが悪いということなのか・・・まぁ混んでる映画館が苦手な私には助かりますが。
さて、この「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q」。公式サイトは、ストーリーはおろかキャスト・キャラクター紹介さえなし。不親切というレベルさえ超えた情報排除です。そして、主要な映画紹介サイトは、足並みをそろえて「諸事情によりストーリーを記載しておりません。」としています。「諸事情」は、書いている側の何を書いてもネタバレになるからという自主判断なのか自主規制なのかどこからかの圧力なのか。
こういう姿勢を見ると、徹底的に書いてやろうかという気にもなりますが、なにぶん、TVアニメシリーズも見ておらず、「新劇場版:序」も見ていない私が、映画自体の中でも解説の少ないこの作品をどこまで理解できたか自体疑問で、ネット社会にあふれるほどいるこの作品のファンの検証に耐えられるとは思えませんので、いつも通りのレベルでやりたいと思います。以下、ネタバレですので、まっさらで見たい方はご注意ください。
前作で綾波レイを助けるために碇シンジがとった行動が引き金となって第3インパクトと呼ばれる桁外れのエネルギー放出が起こり地上は荒廃した。その14年後、国連の特殊機関NERVに反旗を翻した葛城ミサトが艦長を務める新造戦艦AAAヴンダーのなかでシンジは目を覚ます。シンジに冷たい態度をとり、エヴァ初号機はこの船の動力となっている、あなたは何もしないでと言い渡すミサトに、事情がわからずに戸惑うシンジは、綾波レイの外見を持つアンドロイドの誘いでAAAヴンダーを去りNERVに向かう。そこで、父碇ゲンドウは、時が来れば渚カヲルとともに新たなエヴァ13号機に乗るようシンジに告げる。綾波レイと信じて話しかけてもレイの記憶がないアンドロイドに失望しつつカヲルと親しくなったシンジは、真相を知りたいとカヲルに詰め寄り、カヲルから第3インパクトの事実を告げられて失意に暮れるが・・・というお話。
最初に、同時上映の「巨神兵東京に現わる」が数分間あり、ウルトラマンを見て育った世代としては、特撮と東京の町のミニチュアセットにノスタルジーを感じます。同時に、当時はリアリティを感じた特撮が、細部を一所懸命作っていることはわかるのだけど、いかにもおもちゃっぽく感じてしまいます。CGで目が肥えたせいかもしれませんし、CGでも人間の表情とか細かくやればやるほどかえって違和感を感じるのと同じことかもしれません。巨神兵が荒らし回るだけの、私の感覚ではただただ不条理な映像を、受け入れるように誘う挿入文がエヴァンゲリオンの世界観への導入となっているのかなという気もしました。
前作では外部の人間社会との交流もあったのですが、今回は、NERVと反乱軍(ヴィレといっていたようですが、公式サイトにもなんの情報もありませんので綴りさえわかりません)以外の人間は出て来ず(滅亡したのでしょうか、そういう方向に見えますが明言はされなかったと思います)、狭い世界の中でのSFアクションアニメに純化した感じになっています。
反乱軍サイドは、葛城ミサト、式波・アスカ・ラングレー、真希波・マリ・イラストリアスら女性陣が主導していますが、ミサトもアスカも歯を食いしばるシーンというかそういうイメージのシーンが多く、りりしさよりも痛々しさを感じてしまいます。マリだけが余裕があり妙に明るい感じですが、アスカの援護役で説明を担当しているだけで人物像が見えにくい印象です。本来もっと魅力的に描ける女性キャラが、あまり活かせていないという印象を持ちました。
NERVサイドは、むしろ悪役になり、そういう仕分けがなされたことで、次回の最終作でどういう形にせよストーリーとしての決着はつけやすくなっているのでしょうけど、納得感のある結末・展開は難しくなるように思えます。
前作で明るくなったというか可愛い女の側面を持たせようとした綾波レイが、今回は消滅したといわれ、綾波レイとは何者かが明らかにされます。この展開は、綾波レイのキャラを引き上げようと思ったがうまく行かず今どきは受けないキャラとして切り捨てようということでしょうか。アスカがいうとおりの「ガキシンジ」が次回成長を見せるかとともに綾波レイが復活するかも注目というところでしょうか。
ちなみに、磯野家のようにみんな海に関わる名前を持つエヴァンゲリオン「一族」(血縁があるわけじゃないけど:碇、綾波、式波、真希波、渚)ですが、なぜ綾波レイだけが「綾波」と氏で呼ばれるんでしょうか。どうでもいい「謎」ですが。
終わりに予告編がついていて、次回の最終作予定のタイトルは、「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:A」ではなく、「シン・エヴァンゲリオン劇場版:||」だそうです。
(2012.11.23記)
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