庶民の弁護士 伊東良徳のサイト

たぶん週1エッセイ◆
映画「フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ」
ここがポイント
 グレイの嗜好の訳とアナと出会っての変化が見せ場に思えるが、どちらも中途半端
 多数あるセックスシーンも、ナインハーフなどで見たようなものだし黒々としたぼかしもあり興ざめ

 (後日黒ぼかしを外したR18+バージョンが一部映画館で上映されることになったそうですが)

Tweet 

 奥手の女子学生と一方的な支配関係しか受け入れられない27才の大企業CEOの歪な関係を描いた「官能」映画「フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ」を見てきました。
 封切り3日目日曜日、新宿ピカデリースクリーン2(301席)午前11時40分の上映は4割くらいの入り。
 同時公開のアメリカでは公開初週末(2015年2月13〜15日)8167万ドルの「2月公開作では歴代1位のオープニング興収を記録」、2週目も1位(3週目で4位転落)だそうですが、日本では公開初週末(2015年2月14〜15日)8090万円の平凡な興収で5位スタート、2週目には早トップ10から転落(11位)です。内容から言って、アメリカで大ヒットしたことの方が不思議とも言えますが、文化の違いとか、ひょっとして黒々としたぼかしの汚い印象も響いてるのかも。

 奥手の大学生アナ・スティール(ダコタ・ジョンソン)は、ルームメイトの代わりにシアトルの大企業の27才のCEOクリスチャン・グレイ(ジェイミー・ドーナン)のインタビューに訪れた。グレイはアナに興味を示し、アナのバイト先のDIY店を訪れて結束バンドとロープとテープを買い入れる。アナの立ち寄り先に現れ、他の男との関係を問い質してみたり、その一方で自分のことはあきらめろなどというグレイに翻弄されるアナは、ルームメイトと訪れたクラブで酔ってグレイに電話をするが、酔いつぶれてグレイの部屋で目覚め、グレイから「契約」を持ちかけられる。グレイは、自分は恋愛はできない、自分の支配にただ従属する相手とのセックスしかできないといって、従属者が支配者に従うべき事項を多数定めた契約書を差し出すが…というお話。

 従属者は、従属によって判断する責任から解放されて自由になれるという、身勝手な支配者が言いたがる古くからの詭弁が語られ、「O嬢の物語」の現代版・契約バージョンかと思いました。従属者が「イエロー」「レッド」の意思表示ができるという点でソフト化され、グレイが過去には自分が従属者だったと語り、自分もそれで解放されたという点で捻られていますが。もっとも、最後の点は、それで自分が解放されたのならなぜ自分は今従属者ではなく支配者になろうとするのかという説明がなく、また日常業務で人を支配し続けているCEOが私生活でも支配関係のみを求めるというのはむしろあまり説得力を感じませんが。
 グレイは、「恋愛ができない」ことを自分の過去により説明しようとしますが、4才までの母親による虐待にせよ、15才から6年間の年上の女性への従属にせよ、その後27才にして大企業のCEOに上り詰めた現在の私生活においてなお個人的にサディスティックな支配隷属関係しか結べないということを納得させるようには思えません。この作品は、グレイのその嗜好の来歴の解明とアナとの関係による変化が見せ場になるだろうと思うのですが、前者は今ひとつしっくりこない感じが残り、後者に至ってはいかにも中途半端なラストで、えっ、これで終わりかと驚きます。
 ラストシーンは、序盤との対比を見せたいという映像的な狙いだけはわかりますが、これで納得感を持つ観客はかなり少数派ではないかと思います。

 セックスシーンは多々ありますが、目隠しをして氷(アイス・キューブ)を咥えて性感帯を刺激するシーンとか、「ナインハーフ」を思い起こさせ、「ナインハーフ」の方がセンセーショナルだったよねとか、ナインハーフでスターダムにのし上がったあのミッキー・ロークの最近の姿を思い起こして、あぁこの男優(ジェイミー・ドーナン)も将来はああいうふうに老いぼれるのかなどと思ってしまったりしてしまいました。
 R15+指定にとどめるためかも知れませんが、黒々としたぼかしがものすごく目に付く作品です。全身を前方から撮したカットでのアンダーヘアはもう事実上解禁されたかと思っていたのですが、そういうレベルのものも黒々としたもやもやで修正しています。特にアンダーヘアが見たいとも思わないのですが、はっきり言って画像としては汚い印象で、すごく興ざめします。そういう文句を言っていたら、きっと私と同じ感想を抱いた人が多く、苦情が殺到したのでしょう。2月25日から、無修正のR18+バージョンが一部映画館で上映されることになったそうです。今さらもう一度見ようとは思いませんが。

 それに、現在の大学4年生と27才のCEOの会話で、年上の女性に従属していたという話が出た時に「ミセス・ロビンソン」がいたわけね(1967年の映画「卒業」で主役のベンジャミン=ダスティン・ホフマンを誘惑する不倫相手にしてベンの幼なじみのエレーンの母が「ミセス・ロビンソン」です。知らない方のために念のため)という会話が成立するんでしょうか。

 タイトルの " Fifty Shades of Grey "。字幕では「50の顔」って訳してましたが、そうなんでしょうか。ランプシェードとかのシェードで、半透明状の覆い隠すもの、カーテンのようなニュアンス、それが50あるのは、タマネギのように剥いても剥いても最後の実態が見えないという意味かと私は思っていたのですが。
(2015.2.15記、2015.2.22更新、2015.3.3更新)

**_**区切り線**_**

 たぶん週1エッセイに戻るたぶん週1エッセイへ

トップページに戻るトップページへ  サイトマップサイトマップへ