庶民の弁護士 伊東良徳のサイト

たぶん週1エッセイ◆
映画「恋するピアニスト フジコ・ヘミング」
ここがポイント
 脚が痺れ歩行器なしで歩けなくても一流の演奏ができる姿には勇気づけられる
 節くれ立ったしわの多い手から時に力強い時に繊細な音が紡ぎ出される映像は感慨深い
  
 67歳でCDデビューしてブレイクした遅咲きのピアニストフジコ・ヘミングのドキュメンタリー「恋するピアニスト フジコ・ヘミング」を見てきました。
 公開3週目日曜日、新宿ピカデリーシアター7(127席)午前10時25分の上映は9割くらいの入り。

 サンタモニカ、東京(下北沢)、パリなどの自宅やコンサート等の会場での語りと字幕で、スウェーデン人画家の父と日本人ピアニストの母の間に1931年に生まれ、10歳で天才少女と言われ、13歳時に岡山に疎開し疎開先でもピアノ演奏を続け、青山学院(高校)、東京芸大卒業後、留学しバーンスタインに見出されてデビューする直前に聴力を失ってチャンスを逸した過去、1999年に67歳でCDデビューし、その後世界各国でコンサートを続け、チケットは完売が続きという活躍ぶりを紹介し、コロナ前から2023年までを、語りとコンサートの映像で綴る体裁です。

 67歳でCDデビューして、その後プロとして世界で活躍しているというフジコ・ヘミングの人生は、高齢者に希望を与えます(まぁ、10歳の時から天才と評価されていたので、年をとってからでも新たなチャレンジができるというイメージにはつながらないのですが)。
 そして80代後半から90代で、脚が痺れ親指の感覚がなく歩行器なしでは歩けないというのに、一流のプロとして現役でピアノが弾ける、まさに映像として、節くれ立ったしわの目立つ手から、時に力強い、時に繊細な音が紡ぎ出されるのは、感慨深い。
 自分自身がフジコ・ヘミングがCDデビューした年齢に近づき、また映画撮影時の年齢に近い母をもつ身には、すごく心に刺さります。
 そういうところで、力をもらえるというか、じわっとした感動を受ける作品です。

 全部本人が弾いているから自信を持ってみせるのでしょうけど弾いているところを映す映像が多い。で、クラシック苦手の私でも気づいたのですが、「黒鍵のエチュード」(ショパン)って、全部黒鍵というわけではなくて、左手の方は白鍵も弾くのですね。

 「恋」の話は、岡山(中学生)時代の秘めた思いと、学生時のプレーボーイとの件の他には、今も恋してるという一言くらい。タイトルはちょっとそぐわない印象です。

 コロナ前から撮りためておいて、今年(2024年)10月公開というのは、本人との間で死(2024年4月に亡くなられたそうです)後に公開するという約束だったのでしょうか。
(2024.11.3記)

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