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たぶん週1エッセイ◆
映画「ゼラチンシルバーLOVE」

 向かいに住む女性の盗撮を依頼されたフォトグラファーが盗撮対象女性に思い入れるフェチ系サスペンス映画「ゼラチンシルバーLOVE」を見てきました。
 封切り4週目土曜日午後、3割くらいの入りでした。客層は中高年男性と20代女性が多かったように見えました。

 前半は、ひたすら永瀬正敏が訳もわからないままに時間を区切って宮沢りえの動作をビデオカメラで盗撮し続け、永瀬正敏が疑問を感じ苛立つ様子が延々と続きます。ここで、もうかなり眠気が来ました。90分しかない映画なのに、長く感じました。宮沢りえは公道に面したオフィスのようなテーブルといすしかない部屋で、ブラインドは下ろしているものの全面ガラスで素通しの部屋で、なぜ夜を過ごしているのか、他方、盗撮している側は、ただ座っているだけ、時折ゆで卵を食べたり体操するだけの宮沢りえを何のために盗撮しているのか、という疑問は刻みつけられますが、それだけで展開しない映像を見るのはけっこう苦痛でした。
 後半は、展開し始めると、あっけなくラストにたどり着き、前半で提示された謎は結局はっきりとは明かされません。

 盗撮の狙いは、たぶん予告編で示されている「あの時間に戻って120分フィルムを回してこい」という依頼者役所広司の台詞の意味の解釈にかかってきます。私は、永瀬正敏の盗撮がカメラのタイムスタンプをずらせた撮影による、アリバイ作りだと解釈したのですが。でも、それなら永瀬正敏は常にタイムスタンプをずらせて撮影していたはずで、それなら撮影の目的自体は最初から察することができたはずです。すると、何故あの女を監視するのかなんてピントはずれの質問を役所広司にするはずもないし。そうでないとすると、役所広司の言葉通り、役所広司が依頼した「仕事」をしていることの監視となるのですが、ゆで卵を食べたり部屋ででんぐり返りや体操をすることが仕事であるはずもありません。いずれにしても、役所広司の依頼の目的・永瀬正敏の盗撮の理由は、ストンと落ちません。前半でもったいぶってそこに興味を持たせておいて、それはないんじゃないでしょうか。

 監督操上和美、主演宮沢りえ、永瀬正敏、音楽井上陽水と、私たちの世代にはノスタルジックな名前が並びます。
 メンバー的にも、内容的にも、宮沢りえの映像を際だたせたいところですが、これが辛いものがありました。予告編でも強調している宮沢りえがゆで卵を食べるシーン。口元のアップを、口を動かしながら動画で見せると、唇はいいとしてそのまわり、特に上唇上側と頬のあたりの皺というか凹みに老いが感じられてとても痛々しい。カメラを引いて見せた同じシーンやそれを写真に撮ったものは、そこそこに魅力を感じさせるのですが、アップの動画は、とりわけ「サンタフェ」の頃の宮沢りえをリアルタイムで知っている世代には、かなり哀しい。これにエロスを感じられる人は一体どれくらいいるのかと、私は疑問に思いました。
 同じことをやるのなら、この映画でバーのママ役で妖艶な魅力を感じさせている天海祐希にやらせた方が、映像的にも役柄的にもはまったのではないかと思います。私の好みの問題でしょうけど。

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