◆たぶん週1エッセイ◆
映画「ゴールデンスランバー」
自分の最大の武器は人を信じることだという青柳の人のよさと人間味が持ち味
森田さん、たかだか借金のことで違法なことに手を出したり命を投げ出す前に、まず弁護士に相談を
無実の宅配便運転手が突然首相暗殺犯の容疑をかけられて警察官から狙撃され逃走する映画「ゴールデンスランバー」を見てきました。
封切り初日午前中、8割程度の入りでした。
2年前に自宅で強盗に襲われたアイドル(貫地谷しほり)を助けてヒーローになったことがある宅配便運転手青柳雅春(堺雅人)が、ある日大学時代の友人森田(吉岡秀隆)に呼び出され、森田から妻が作った借金を帳消しにするためにお前を首相凱旋パレードのコース裏に連れ出すよう求められたと聞かされたところで、首相はラジコンヘリ爆弾で暗殺され、森田の車も爆発炎上、青柳は警察官から発砲されて命からがら逃走する。その後、青柳が立ち回り先に次々と現れる警察から逃げ回るうちに、青柳がラジコンヘリを購入したり、ラジコンヘリの操縦練習をしたり、事件現場付近でラジコンヘリを操縦するという身に覚えのないビデオ映像がテレビニュースで流れ、青柳は指名手配される。逮捕よりもむしろ射殺を意図しているような警察の包囲網の中で、青柳の大学時代の恋人樋口(竹内結子)やサークルの後輩小野一夫(劇団ひとり)は青柳の無実を信じて青柳を助けようとする。青柳は大学時代の友人やマスコミに囲まれ追及されても息子はやってないと断言する父親(伊東四朗)らに励まされ、謎の連続殺人犯キルオ(濱田岳)や裏街道を歩む謎の入院患者(柄本明)らに助けられながら逃走を続けるが・・・というお話。
権力中枢の関わる陰謀で警察が組織ぐるみで青柳を犯人に仕立て上げるという、荒唐無稽な(と思いたい)設定や、そこまでされながら青柳が変装さえせずにさらに言えば着替えさえせずに白昼堂々逃走し続けられるとか、6年間草むらに放置されていたスクラップ同然の車がバッテリーを替えただけで無事に走る(ガソリンは入れなくてよかったんだろうか)とか、ちょっと見ていて辛いものがありますが、そこは我慢して人間関係というか人間味を見る映画なんでしょうね。
青柳は、徹底して人のいい人物と描かれています。森田にも、さらには初対面の連続殺人犯キルオにも、出されたものを素直に口に入れて薬で眠らされてしまいますし、それでも怒りもせずに自分の最大の武器は人を信じることだなんて言っています。そういう青柳だから、大学時代の知人たちも助けようとし、父親も無実と確信するんでしょうけど。
権力の組織犯罪を見てとり、犯罪者や極道が連帯感を持ち手を差しのべるという同士感覚も、あまり現実的でもないしそういう位置づけできちんと描かれてる感じでもないけど、少し快い。
学生時代に青柳と付き合っていた樋口が別れを切り出すシーン。板チョコを分けるのに2つに割って少しでも大きい方を樋口に渡した青柳に、それを指摘して(大きさなど気にせずに)もっと大雑把にやればいいと言った挙げ句、このまま一緒にいても私たち「よくできました」止まり(「たいへんよくできました」にはなれない)だと思うから別れようという樋口。それを聞いて目が点になる青柳。自分が大きい方を取ったのならまだしも・・・そういう問題じゃないか。でも、不条理ですよね。カミさんと「私たち、このまま一緒にいても、よくできました止まりだと思う」「私は、よくできましたで十分」「言い直す。私たちこのまま一緒にいても、もう少し頑張りましょう止まり」・・・と樋口ごっこをしながら帰りました。
それにしても、森田。妻がパチンコで作った借金って一体いくらなんでしょう。それで友だちを売って、さらに自分の命も犠牲にする?
仕事がら言っておきたくなりますが、たかだか借金のことで違法なことに手を出したり命を投げ出す前に、まず弁護士に相談しましょう(知ってる弁護士がいなければ、まずは地元の弁護士会にお電話を!)。高利の借金は減額できますし、減額できないか減額できても払えなければ破産すればいいんですから。どんなに破産が嫌だって思う人でも、友だちを売ったり死ぬよりいいでしょ。でも、そういうふうに目が向かない人がいるっていうのが、弁護士業界の広報がまだ足りないってことなんですね。
首相暗殺犯として指名手配され警察に追われている青柳が、逃走中知人に会う度にまず聞かれるのが、首相暗殺事件のことではなく2年前に助けたアイドルとやった(Hした)のかというのが、コメディだからでしょうけど青柳を閉口させています。まぁ一般人の関心ってそういうものかもしれませんが。
(2010.1.30記)
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